Vol.180 04年2月14日 | 週刊あんばい一本勝負 No.176 |
「戦国武鑑」刊行中止へ |
体調が快方に向かい、机に座るのが苦痛だった時期をようやく脱却したというのに、その最初の仕事が、半年あまり編集に力をそそいできた「戦国武鑑全3巻」の刊行中止の決断と、気の遠くなるような事後処理の数々でした。刊行中止の理由は、内容に関して著作権法上の疑惑が増大したことです。著者と何度か話し合ってきましたが、双方が合意できる修正にはものすごい時間が必要なことがわかり、あえて「延期」ではなく「中止」という判断にいたったものです。最初に原稿が持ち込まれた時点で気がつかなかったのか、というお叱りもあるでしょうが、何度が原稿を推敲していく過程(いろんな原典や参考資料と照合)で参考文献の類似点があまりに多いことに気つき、そこにはちょっとやそっとの書き換えでは埋まらない溝であることを知り、愕然としました。元を正せば版元・編集者の不見識が「まちがい」の発端であることは自明ですので、深刻に反省をしています。その一方で「本が出てからトラブルに巻き込まれずに助かった!」という安堵感があるのも事実です。このまま臭いものに蓋をして刊行を強行しても、結局しっぺ返しは何十倍もの大きさで襲ってくるのは目に見えています。ですから、この時点での決断に後悔はありません。これからはじまる事後処理(取次・書店・読者・広告代理店・販促会社・印刷所…)のハードルの高さを考えると呆然自失ですが、まあ何とかなるでしょう。長くやっているとこういうこともあるもんです。 (あ)
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南からの熱風 | |
個人的な事情もあるのでしょうが、今年の冬はとにかくさむ一いっ!事務所から外に出る気がなかなか起きません。そんなときに沖縄から届いたのが「沖縄県産本ニュース」。隔月刊の沖縄県内出版社連合ミニコミで、その時々の各社の新刊を紹介しているだけなのですが、読んでいると不思議に汗が出てくるような熱風が紙面から吹き出してきます。
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同じ本を作っている人間だからなのかもしれませんが、地域の中で1冊の本が生まれるまでのドラマや制作者たちの情熱が、タイトルや装丁、紹介文の隙間からむんむんと立ちのぼっているのを感じることができるのです。九州でも福岡の版元が集まって「はかた版元新聞」という隔月間の新刊紹介ミニコミを出しています。これも届くのが楽しみな通信ですが、どちらも南という共通点があります。実はいまの地方出版の現状は、九州と沖縄でその元気度の7割を担っている、といっても過言ではないのです。残りの3割を四国や本州、北海道のいくつかの版元がヨタヨタと埋めている、といったあんばいなのです。元気がいいところには熱気があります。 (七) |
これがそのミニコミ |
富士の麓で街道交流会議 | |
富士山の麓にある静岡県富士川町で「全国街道交流会議」という催しがあったので参加して来ました。この催しは昨年、山口県萩市や東京で開かれたのに続いての開催で、今年の10月には山形県上山市でも開かれる予定となっています。無明舎も街道に関する本の出版が多く仕事上の参考にならないかという思いと、各地の人々がどのように街道と取り組んでいるのか、この交流会議はどのような内容で開かれているのか、ということに興味を持って足を運んでみたものです。富士川町は東海道五十三次のうち、15番目の宿場となる「吉原宿」と16番目の「蒲原宿」の中間となる間宿だった町で、富士山の西側を流れ駿河湾にそそぐ富士川の西岸にあります。 全国各地から街道に興味を持つ人々や、街道を使って町おこしに取り組んでいる団体、街道と関わりのある行政の人たちなどが500人ほど集まり、2日間にわたって全体会議や4つの分科会に別れ、「東海道400年 そして明日は」とか「街道から学び、街道を活かす」などのテーマで活発な意見交換を行いました。また、別会場となる道の駅・富士川楽座では街道名物市や街道パネル展が開かれていました。 2日目の午後からは現地見学会ということで、町内にある東海道の史跡を回る「歴史の道コース」と、「現代の道コース」として第2東名高速道路などの現場見学班とに分かれましたが、私は「歴史の道コース」に参加しました。駿河湾で獲れた桜エビやアナゴ、コウナゴなどで作った「チラシ寿司弁当」を食べた後、参加者を5つの班に分けて出発です。普段は非公開となっている「古渓荘」という明治時代の建物や旧本陣・常盤家、清源院、富士川の渡船場跡などを見学しました。とても暖かく雲ひとつない青空の下をゆっくりと歩きながら、また途中にある茶屋で甘酒や採りたてのミカンをいただきながらの散策は、雪の秋田から来た私には、これが同じ日本かという思いをさせられたひと時でした。 (鐙) | |
会場の外から見た富士川と富士山 |
旧本陣・常盤家と見学者たち |
今週の花 | |
今週の花はストロベリーキャンドル、オオニソガラムのダビウム、アリウムのコワニー、桜。ストロベリーキャンドルはヒユ科のストロベリーフィールド(センニチコウ)に名前も外見も似てますが、葉っぱを見ればクローバーの仲間なのが一目瞭然。匂いもマメ科植物独特のものです。真っ赤な花とカーブしながら伸びる茎、大きな三つ葉がとてもカワイイ。オオニソガラムはイエス・キリストが生まれた時、空の星が飛び散ってできたという伝説があるので、英名では「ベツレヘムの星」と呼ぶそうです。よく見かけるのは白いオオオニソガラムですが、このダビウムという種類はオレンジの花が咲きます。そして、オオニソガラムに花の形が似ているアリウムは、実はネギやニンニクの仲間。そう言われると、茎からは微妙にネギっぽい匂いがします。
(富)
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