Vol.183 04年3月6日 週刊あんばい一本勝負 No.179


冬いまだ去りがたく…

 「雪国にも春の兆しが…」などと書いたとたん、ご覧のような銀世界です。今年の冬は例年にない暖冬と騒ぎ立てられましたが、3月に入って氷点下の日々で、先週はよく飽きないものだと思うほど雪が降り続けました。ここ数日は毎日玄関の雪かき復活です。もう何十年も春と冬将軍の気紛れには慣れているつもりでしたが、雪国に生まれた人間は春に対して過剰な期待感があり、ちょっとでも雪がとけると「ついに春が!」とやってしまいます。

一面雪景色に逆戻り
 ぶっ飛んだ春先の記憶では、ゴールデンウィークの後にものすごい吹雪で春が一挙に銀世界に変わったこともありました。それに比べればどうってことのない、いわば春と冬のイニシアティブ争いなのでしょう。しかし、目の前にこれだけはっきりと季節感を自然の摂理のままに現前させてくれる光景があるというのはありがたいものですね。この季節定点観測ポイント(田んぼ)もいつまでここにあることを許されるのか、ちょっぴり不安になる今日この頃です。
(あ)

山岡クンももう卒業です

 事務所2階で一人黙々と写真ネガの分類整理作業をしているのはアルバイトの山岡洋貴クンです。彼はこの3月で秋田大学工業資源学部を卒業、北海道の高校教師に就職が決まりました。大学1年のときからウチでアルバイトをはじめ3年間根気よく仕事を続けてくれました。舎員の彼への信頼は厚いものがあります。

黙々と仕事をする山岡クン
 山岡クンは横浜生まれ、高校時代は「カヌーポロ」クラブに所属、秋田でも「エルク」という日本最強の競技カヌークラブに所属したバリバリの国体選手です。勉強もよくしていたようで「試験が近いのでアルバイトできません」とよく言われたものです。舎の飲み会では若さで何人分もの料理を平らげてくれるので、わが年寄り軍団は山岡クンの食いっぷりを楽しむためにだけ焼肉屋(一番行きたくない居酒屋)で宴会を開いたりしたものです。就職氷河期といいますが山岡クンにいわせると「ちゃんと勉強している人の就職はいくらでもある」そうです。要するに遊んだ連中を企業はすぐに見抜くようになったので大学名や卒業証書だけでは就職が難しくなっていると言うことのようです。
 北海道でいい教師になることを舎員一同祈っています。
(あ)

北前船が人気です

 最近雑誌や新聞で北前船を特集した記事をよく目にします。1月には『サライ』が「北前船の港町を旅する」、2月には『自遊人』が「北前船を辿る旅」と題して、それぞれ16頁と21頁とたっぷりと頁をとった特集でした。また秋田の魁新報は北前船をモチーフにした企画を1月から6回連載しました。最初は見開き2頁、2回目からはそれぞれ1 頁という大きな紙面展開ですので、これらの特集は時間もそれなりにかけて取材したのでしょう。無明舎で出版した『北前船』に掲載したものと同じような写真が多いことがちょっと気になりましたが、それだけ無明舎の写真がいいんだろうと喜ぶことにしました。
 先日大阪からこんな電話がありました。「居酒屋チェーンの企画をする会社ですが、北前船をモチーフにした展開を考えています。壁面のパネル制作などのため写真をお借りできますか?」というものでした。そのほか日本海側の各地で北前船をテーマにしたシンポジウムや、テレビ番組制作も盛んに行われていますし、北前船の寄港地をめぐる旅をしている人も多いようです。無明舎にも著者の加藤さんなどへの講演依頼も少なくありません。どうも北前船は人気があるようです。無明舎で『北前船』三部作を出版したことが、人気上昇の一端を担っているようで、とてもうれしく思っています。さびれる一方の港町が多いなか、昔の隆盛を偲ぶことで少しでも港っこたちに元気が出てくれれば何よりです。
(鐙)

北前船を特集した雑誌

岩城町で「北前船」の講演をする著者の加藤貞仁さん

今週の花

 今週の花は、白いカラー、赤いガーベラ、薄桃色のワックスフラワー、そしてユーカリ。ユーカリといえばコアラを連想しますが、彼らが食べる葉っぱは数百種類あるユーカリのうち、ごく限られた種類だけ。コアラの食事シーンくらいしか見る機会がないので、ユーカリの葉は細長いものだと思い込んでました。しかし花材として用いられるユーカリは葉っぱが丸いので「え!これがユーカリ?」と驚きます。ユーカリの中には、若い頃は葉が丸く大人になると葉が細長くなるものがあり、生け花などに使うユーカリはこうした種類の若枝が多いのがその理由のようです。
 ユーカリが生活に欠かせないのはコアラだけではありません。オーストラリアの先住民アボリジニの人たちは、雨季の家の建材、薪、切り傷の手当など様々なことに用いています。また、ユーカリの葉を蒸留してできた精油は「ユーカリ油」と呼ばれ、殺菌作用や坑ウィルス作用が強いので風邪やインフルエンザの予防に最適です。花粉症による鼻づまりにも効果があるようですが、身近に花粉症の人がいないので、その真偽は不明です。
(富)

No.179

永遠の出口(集英社)
森絵都

 最近読む小説は短編仕立てで各小説が独立していながら連作になっている長編というものが、なぜか多い。特に30代の若い作家たちの作品にこの手のものが多いような気がする。いや単に私があまり多く若手小説家の作品を読んでいないことによる偏見かもしれない。寝る前の寝床読書はノンフィクションや読みきりエッセイが定番だったが、最近はもっぱらこの手の短編連作小説本が圧倒的になった。毎日1本ずつ読み進むうちに長編小説がいつのまにか読了できてしまうからお得感もある。書店で本を買う時もこの連作短編であるか否かはけっこう重要なポイントだったりする。本書は、小学校3年から始まり高校を卒業するまでの「紀子」という少女の9つの物語である。少年小説は何冊も読んだが少女小説というのは私には新鮮だった。誕生会の出来事、教師との対決、初恋、不良、万引き、父の浮気、初アルバイト、デート、卒業…をテーマにした物語はどれ一つとしてはずれのない濃密でユーモラスでコケテッシュな魅力に満ちた空間を形作っている。すごい作家だなあと略歴を見ると児童文学を書いている女性のようである。世の中には才能豊かな人がたくさんいるんだね。

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