Vol.186 04年3月27日 週刊あんばい一本勝負 No.182


HP連載が続々単行本になります

 これから夏までにかけてHPのトピックスや「んだんだ劇場」に連載してもらった原稿が続々本になります。トップバッターはすでに2月に出版された安倍知著『入門 東大宇宙線研究所』で、これは大学生協や首都圏大型書店で売れ行き良好です。2弾目は5月上旬の刊行予定で南陀楼綾繁こと河上進さんの『ナンダロウアヤシゲな日々』(仮題)がでます。これも読者層は首都圏中心「古書・ミニコミ、本大好き人間」向きになります。

書店に並ぶ「入門 東大宇宙線研究所」
 ほぼ時を同じくして3弾目は、河北新報学芸部デスクだった佐藤陽二氏(現在スポーツ部デスク)の新聞記者の書けなかった事件(話題)と舞台裏で綴る『仙台発――学芸部デスクのニュース百色眼鏡』、そしてこれは不確定要素がまだ多くありますが、島田真紀子著『小雪のウルウルISO日記』が続きます。不確定というのは本人が現在出産準備中で、体調とも相談しながら編集作業をしなければならず不慮の事故も想定したためです(連載は終わっているのですが書き直しや追記、作図や文章、内容チェックなど膨大な編集作業に耐えられるかが問題です)。5弾目は藤原優太郎・佐藤隆共著『秘境・和賀山隗』です。この本は6月頃の刊行を予定しています。HP連載はとっくに終了しているのですが、どのような形で単行本にするかが決まらずノビノビになっていたのですが、今年は和賀山隗をめぐる動きが活発になることもあり内容を整備して「緊急出版」します。
 以上、この数ヶ月で一挙にHP連載が5本も本になるというお知らせでした(予定通りに刊行できない恐れもあるので話半分できいてくださると助かります)。
(あ)

なにッ、「インスタントきりたんぽ」?!

 「秋田」の名前を冠した新製品が出ても大半は「こんなもん誰が買うんだよっ」と突っ込みを入れたくなるような「おもいつき商品」ばかりなのですが、この「熱湯を注ぐだけで出来る きりたんぽ」には驚きました。「きりたんぽ」をカップラーメン仕立てにするという発想がなかったからです。いや、ありそうで(発想が)なかった商品といっていいかもしれません。これまでの凡庸な食品加工業者であれば、「きりたんぽ饂飩」とか「きりたんぽラーメン」といったオタメゴカシがせいぜいでしたが、これは、きりたんぽ鍋そのものをインスタントにしてしまったというところが妙に優れモノです。味の方ほうは「舞茸」の醤油味が濃すぎて閉口しますが、スープもたんぽもなかなかです。熱湯3分ではきりたんぽの生命線で鍋特有の「アツアツ感」がない、という欠点をクリアーすれば、ほぼ及第点でしょう(鍋に移して再加熱するといい)。ちなみに製造元は比内地鳥の産地「比内町」の「樹海の杜本舗」(рO186−45−5001)。商品デザインもいいし値段600円もまあまあ。これが売れれば「行列の出来るラーメン屋」のような直接鍋で加熱する「フリーズドドライきりたんぽ鍋」もでてくるでしょうね。
(あ)
これが噂のカップきりたんぽ

真夜中にドッキリ

 先週のことです。夜中の2時頃のどが渇いて水を飲みに起き、何気なくテレビのスイッチを押して画面を見た瞬間、目が点になりました。あまりにも懐かしい映画がNHKのBS2で放映されていたのです。ブラジル映画の「アントニオ・ダス・モルテス」。「黒い神と白い悪魔」をつくったグラウベル・ローシャという監督の1969年の作品です。なぜ懐かしいかと言うと、この映画を私が高校生のとき自主上映したことがあったからです。当時、私は秋田大学の学生や高校生、社会人など10数名が集まってつくった「秋田シネフィル」という自主上映グループに属していました。このグループは動員力というか、チケットの販売力があり、2000席ある県民会館を午前、午後の2回上映とも満員、という今では信じられないようなことを平気でやっていました。上映利益も少なくなく、貯金もけっこうあったため、グループの代表が「鐙君、一度君の好きな映画を上映してみれば。赤字になっても気にしなくていいよ」ということになり、私がこの「アントニオ・・・」を選んだわけです。2ヶ月ほど前に東京で封切られたばかりの映画でしたが、あまりに不入りのため1週間で上映中止になっていた映画でした。高校を休んで配給元のATGをたずねると、「本当にこの映画をやるの」とずいぶん驚かれ、また喜ばれたものです。
 映画はブラジル最貧困地帯である北東部の荒野を舞台に、大地主とカンガセイロという土俗宗教に憑かれて武装蜂起した農民たちとの戦いで、地主に雇われた殺し屋アントニオがカンガセイロの「女神」に諭され、一転、地主と戦う側になる、というような内容です。ジャズや前衛的なサンバの音楽をバックに、強烈な色彩が画面から飛び出し、まるでブラジル版西部劇のようでした。カンヌ映画祭で監督賞を受賞し、ゴダールや寺山修司が絶賛した作品は、今見ても古さを感じさせず、新作のように輝いていました。赤字覚悟の上映会でしたが、ちゃんと利益が出たことを思い出しながら、最後までテレビを見続けました。
(鐙)

粟津潔さんがデザインしたポスター
は強烈な黄色が印象的でした。

No.182

獄窓記(ポプラ社)
山本譲司

 事件(秘書給与)は、その後の辻元清美や田中真紀子の疑惑騒動が大きかったため、彼はかすんでしまった印象しかなかった。それでも読もうと思ったのは、周辺の何人かの人たちが「おもしろかった」といっていたからである。読んで感心したのは著者のまじめさ。でもこのまじめさが実は大きな危険を孕んだ事件の本質を解くカギだったのでは、というのが正直な読後感。人の嫌がる障害者介護の仕事を進んで引き受け、家族や恩人への愛や感謝を常に忘れず、真正面から人生を見据え、真摯に反省する日々…そうした彼の姿にうそ偽りはなく、すがすがしさを感じるのだが、こうした彼の正義感や素直さは、海千山千の政治の世界では最も潰されやすい弱点でもある。こうした素直な性癖の結果として、彼は学生時代から政治家を目指したのだろうから、原因と結果はコインの裏表かもしれない。私の周辺にも著者と似たタイプの、やはり政治家を目指す人間がいる。この人と著者はそっくりである。ヤクザになる人にタイプがあるとすれば、政治家になりたいと思う人種にも確実にパターンがある。著者はその典型的なパターンの持ち主である。たぶん違った形で将来再立候補と言う事件があるかもしれない。

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