Vol.187 04年4月3日 週刊あんばい一本勝負 No.183


菅江真澄のホームページを作りました

 国土交通省の秋田河川国道事務所から依頼されて、菅江真澄のホームページ(HP)をつくりました。同事務所のHPの中に「菅江真澄の足跡と秋田・再発見」というページを新たにつくったものです。江戸時代の紀行家である真澄は秋田県を中心に、青森、岩手、北海道の南部などを旅し、膨大な量の日記や地誌、図絵などを残しました。中でも秋田とはよほど水が合ったのか、人生の後半をほとんど秋田領内ですごし、今の田沢湖町で亡くなりました。今でいえば民俗学者のような存在だった真澄は好奇心の塊のような人で、村々の様子や自然の風景、祭り、生活用具や農具などの絵や記録を描きましたが、その貴重な江戸時代の記録をもとに、現在の秋田の魅力を再発見してみようというのがこのHPの目的です。
 ただ真澄の図絵を並べても意味がないし、本とは違う工夫が必要なので、秋田県内に22カ所ある「道の駅」をベースに、真澄の足跡や観光名所を紹介したり、真澄が残した絵図と現在の道路や川をくらべたりしてみました。また、小学生たちにも興味を持ってもらえるよう、総合的な学習のためのコーナーやクイズも入れました。皆さんも是非このHPをのぞいて見てください。 アドレスは http://www.thr.mlit.go.jp/akita/index.html です。
(鐙)

これが「菅江真澄の足跡と秋田・再発見」のトップページです

川辺久太郎さんのこと

 半年振りくらいに近所に住む川辺久太郎(84歳)が事務所を訪ねてくれました。川辺さんは無明舎のファンを自認している方で、小舎の刊行物をほとんど買っています。ここ数年は体調を崩して外に出歩く機会が少なくなったそうですが、70代の頃は毎週のように事務所に寄っては、昔の面白いふるさと(広面地区)の話を聞かせてくれました。川辺さんは無類の読書家で、広面の地主さんでもあります。最近、目の前にあった書店が店を閉め、しょうがなく歩くとけっこうな距離にある大型チェーン書店まで足を伸ばしているそうですが、立っているのが辛く、すぐに帰って来るそうです。前の書店では川辺さんが来るとすぐに専用の椅子を出してくれたそうですから、書店というのは地域社会とこんなほほえましい絆をもっていたんだなあ、とちょっぴりしんみりしてしまいました。この日も川辺さんは3冊の新刊を全部買ってくれました。

川辺さんです
 「もう、活字を読むのも辛くなったけど、本はいくら買っても孫子の財産になるんだから安いもんだ」というのが口癖です。新刊が出るたびに事務所に来てもらうのは忍びないので、「届けましょうか?」と喉先まで出掛かりましたが、やはり川辺さんには這ってでも自分の足で事務所にきてもらうほうがうれしいので、その言葉は飲み込みました。
(あ)

今週の花

 今週の花は、鉄砲ユリ、白いチース、赤いカーネーション、グリーンスプレーマム。スプレーマムは枝分かれした小菊のこと。供花の定番で秋の味覚でもあるこの花を知らない人はいないんじゃないでしょうか。菊は大雑把に「和菊」と「洋菊」に分けられます。秋になると開催される菊花展や菊人形などに出て来るのは和菊。菊の道のプロが手間と時間をかけて作り上げた鑑賞菊のことです。これに対して、ガーデニングで気軽に楽しめるのが洋ギク。欧米で品種改良されたものです。手軽なだけでなく、花色も白や黄以外に赤、オレンジ、ピンク、緑などがあり豊富です。緑のスプレーマムには「ヨーコ オノ」「シャムロック」「ディスカバリー」などといった品種名のものがあるようです。センスのいいネーミングなので、どんな菊なのかとても興味があります。
(富)

No.183

下山事件(新潮社)
森達也

 昭和24年におきた、いまだに謎の多い(自殺として処理され、真犯人がつかまっていない)事件の残り少ない関係者を訪ねて、轢死事件の闇を解明していくルポである。が、事件そのものの解明もさることながら、筆者をはじめとする取材者たちの舞台裏を描写するくだりが圧倒的に面白い。オウムの本でも彼の書くものはそうだが対象よりも、テーマに取り組む自分自身とそれを取り囲むメディア(テレビや新聞、出版社)とのやりとりを物語進行の旗振り役に使い、それがみごとに成功している。本書も、事件を取材する側の「舞台裏」の攻防が、ともすれば色あせた事件よりもずっと面白かったりする。この本では「週刊朝日」の編集記者、TBSの関係者、ルポライター斎藤茂男、元NHKディレクター女性などが狂言回しのように実名で登場する。事件の生き残りたちとのガチンコ勝負も手に汗握るほど迫真に満ちているが、著者の真骨丁はやはり舞台裏のディテールだ。こうして狂言回しの手を借りながら、半世紀もたった事件に読者の目をひきつけ、過去の物語に現代性をもたせ、じりじりと真相に近づいていく……。読み終わってすぐに『ベトナムから来たもう一人のラストエンペラー』(角川書店)も読み始めた。

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