Vol.188 04年4月10日 週刊あんばい一本勝負 No.184


懐かしさいっぱい『仙台の記憶』

 昨年末刊行した写真集『仙台の記憶』が、仙台で評判になっています。ビルが建ち並ぶ今の仙台からは想像もつかない、昭和30年代の木造2階建ての町並みが懐かしさを誘っているようです。この古い写真を集めた写真集に対する反響の高さは仙台だけの現象ではなく、全国共通のものです。20年ほど前、秋田県内の古い写真を集めて出版した『思い出のアルバム』シリーズでも同様で、たちまち本は売り切れたものでした。やはり失われた古い町並みの写真は、独特の郷愁を誘うものです。
 2月にこの本に掲載した写真を集めた写真展が仙台で開かれましたが、それをきっかけに仙台放送が15分番組を制作し、先週の金曜日に放映しました。番組のタイトルは「古き良き仙台」。堤焼きの窯場で焼き物を焼いていた人に話を聞いたり、お菓子屋のおばあちゃんに昔の店の写真を見ながら思い出を語ってもらったりと、写真とともに仙台の思い出が次々とテレビ画面に登場しました。肝心の『仙台の記憶』の写真集もきちんとテレビに映り、いい宣伝になりました。
(鐙)

テレビ画面いっぱいに写された『仙台の記憶』

遠方からのお客さん

 オーストラリアのキャンベラに住む池田まき子さんが来舎。池田さんは秋田の地元紙さきがけ新報から義足のキリンの物語を出版した作家で、キリンの本以外にも先住民族アポリジニや動物に関する多くの著作を持っています。生まれは鹿角ですが今は実家が秋田市にあるそうです。今回の来日は小舎から本を出すための取材執筆のため。テーマは今度男鹿半島にオープンする水族館「ガオ」で、水族館で働く人たちや魚たちの舞台裏を追ってみたいそうです。

池田さんの著書
 海外に住んでいながら秋田をテーマにした話題や事件の本を書けるというのはインターネットの存在が大きいのですが、毎日地元紙の記事に丁寧に目を通して、これはと思えば即メールで連絡をとるそうです。そういえば高校時代の同窓生で東京に住むSさんも無類の「インターネット秋田情報通」で、よくもこんなことまで、という秋田ネタをよく教えてもらいます。定点観測カメラで数時間単位に変わる道路積雪情報サイトというのまであるそうで、「県南部も雪が消えましたね」などと突然言われると、「エッ、まだ消えてないでしょ」などと地元派のほうが頓珍漢な受け答えをしてしまうことになる。地元から遠く離れていても情報は身近にある。こうしたインターネットの存在が書き手や取材、情報流通の従来のあり方をどんどん変えていきますね。
(あ)

今週の花

 今週の花は、麦、ピンクのカーネーション、千日紅(センニチコウ)、白いデンファレ、ラッパ水仙。千日紅はヒユ科。千日草とも呼ばれます。似た名前の植物は他に、ミソハギ科の百日紅(サルスベリ)。キク科の百日草(ジニア),キョウチクトウ科の日々草(ニチニチソウ)があります。どの花の場合も、毎日次々に花を咲かせたり、花持ちがいいなど、長期間花を楽しめることが名前の由来のようです。
(富)

No.184

結婚の条件(朝日新聞社)
小倉千加子

 実は同じように話題になっている酒井順子の『負け犬の遠吠え』(講談社)も同時に読んだ。酒井は洒脱なエッセイストなので「どんなに美人で仕事ができても30代以上、未婚、子なしは女の負け犬」と自分自身を茶化しながらぐいぐいと論旨を進めていく。一方の小倉は、退職したようだが大学の先生らしく、豊富なデータでバシバシと明快な論理で現代社会の中の若い女性たちを分析していく。若い女性たちの未婚率はなぜ高いのか、ということを知りたくて読んだ本だが、どちらかというと小倉の本が論理的で納得が行く。未婚率が高いのは、都市化、教育歴の高さ、雇用機会の規模などが原因である。その証拠に未婚率が50パーセントを越えているのは東京、大阪、京都、福岡などで、その他の県はすべて50パーセント未満だそうだ。少子化とはつまるところ「結婚の条件」の問題で、ここに触れなければ政府の少子化対策などというのは絵に描いたもちに過ぎない、と小倉はいう。本書でも小倉得意の芸能人が要所に登場するが、うるさくない程度に抑えられている。以前、松田聖子やアイドルに関しての記述や本は、なんとなく「物書きのあざとさ」を透けて見えて評価できなかったが、この本を読んで見直した。さすがである。

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