Vol.209 04年9月4日 | ![]() |
照井さんを紹介します。 | |
朝日新聞の秋田県版に「食文化あきた考」という安倍の連載がスタートしたのですが、そのカットを描いてくれている照井勉さんを紹介します。照井さんは昭和24年、二ツ井町生まれの看板屋さん(社長)。昔からの安倍の友人ですが、マラソンやカヌー、演劇や郷土芸能、地域の消防団活動までとにかく積極的で社交的な明るいトーサンですが、酒を飲むとオオトラに変身するのが困り者。絵は素人といっていいのですが、早くから安倍はその繊細と豪放さの入り混じるタッチに注目していて、無明舎の本(主に艶笑話関係)の挿絵や新聞連載のカットを依頼、才能を高く評価しています。今回は趣向をかえて銅版画で勝負するそうで、楽しみです。住居が二ツ井町なので細かな打ち合わせなどが頻繁に出来ない恨みがありますが、組んで仕事をするのは今回が初めてではないのでナントカなるでしょう。長丁場の連載が終わったあとに、彼のカットを集めた個展を無明舎プロデュースで全県各地の開催も考えています。
(あ) | |
照井さんと今回のカット用スケッチ
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倉田さんの茶碗と金子さんの絵本 | |
美術ネタが続いてしまいますが、手元に置いて毎日のように眺めている茶碗があります。今年の秋田市の倉田鉄也個展で買い求めた茶碗です。けっこう高価だったのですが、毎年、学生時代からの友人である倉田さんの作品を無理しても1点だけ買い求め20年近くになり、今年はこの茶碗が目にとまりました。何に使うのかも知らずに形とたたずまいだけで求めたのですが、触ってざらざらした感触と温かみのあるフォルムを眺めているだけで飽きません。もう一つは仕事ですが、「男鹿のなまはげ」の絵本を作っています。その絵を描いてもらったのが秋田市飯島に住む画家の金子義償さん。この人とも長い付き合いです。事務所のカベに掛けられた絵のほとんどは金子さんの作品ですから、作風はわかっているのですが、絵本は作家の意外な側面が出るのでワクワクドキドキしながら仕上がりを待ちました。予想にたがわず1枚1枚が見事な出来栄えです。以前にも「小野小町」の絵本を手がけてもらったのですが、今回はまったく違った画風で、この作家の日々進歩する感性と技術に驚くばかりです。この絵本の原画展もいつかやりたいと思っています。
(あ) | |
茶碗と絵本の原画
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残っていた温泉 | |
ここのところ男鹿半島の話題が多くて恐縮ですが、今週は男鹿半島の先端にある「金ヶ崎温泉」の話です。先週、シーカヤックで戸賀湾から加茂青砂までのんびりと海上散歩をしました。途中、以前「桜島荘」と呼んでいた「ホテルきららか」の手前3キロほどの海岸に、金ヶ崎温泉の跡があります。周囲を数十メートルの高さの崖で囲まれているため、陸から近づくにはロープにつかまって降りるしかない、大変な場所で、前から一度行ってみたかったので、海から近づいてみたわけです。ここには昔から温泉が湧いていて、以前は休憩や宿泊のための湯小屋があったそうです。いつ頃まであったのかよく分かりませんが、昭和50年代までは壊れかけた建物が残っていたようです。温泉は露天風呂で海からしか行けないため、利用するのは戸賀か加茂青砂の漁師やその家族が主でしたが、たまには風流な旅人や温泉好きの人が漁船に乗せてもらい、訪れることもあったようです。秋田の版画家・勝平得之も昭和20年代に遊びに来て、金ヶ崎温泉の版画を一枚残しています。「ホテルきららか」ではこの近くをボーリングして得たお湯をパイプで引き利用しています。 | |
その日、シーカヤックで温泉跡に近づいて驚きました。波で壊れた浴槽の上にタープという日よけをかけて、1人のおばさんがプラスチック製の大きな容器をごしごし洗っているではありませんか。向こうも突然海から人が現われたのでかなり驚いたようです。海には旦那さんもいて、いろいろ話を聞きました。おばさんは戸賀の生まれで、今は男鹿市船越に住んでいること。お父さんが漁師でよくこの温泉に来ていたが、自分は入ったことがないこと。でも懐かしさを感じてときどき遊びに来て、温泉を掃除していることなどです。大きな容器を洗っていたのは、温泉が熱くて入れないため、海岸に落ちていたこの容器にお湯をためて入るためだそうです。なんと優雅な遊びをしているのかと思いため息が出てしまいした。私はここで弁当を食べ、容器洗いに専念するおばさんに「がんばってね」と声をかけて加茂青砂に向いました。 (鐙)
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お湯は今も湧いていて、温度が50度くらいあります。よくこの大荷物を持
って崖から降りて来たものです。 |
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