Vol.214 04年10月9日 週刊あんばい一本勝負 No.210


女子高生、京都修学旅行に密着取材

 1年かけて追いかけようと思っているO農業高校O分校の関西修学旅行に密着取材してきました。今時の高校生の修学旅行は奈良で仏像、京都で神社、間に自由行動が一日入り、最後は大阪のユニバーサルジャパンで一日遊んで飛行機で帰るという3泊4日のパターンが多いそうです。お小遣いの平均は7万円、ほとんどの子がユニバーサルへ行くのが一番の楽しみですが、今回は「京都一日自由行動」を取材してきました。前日夕方に京都入りし引率の先生と打ち合わせをして、翌朝早くから「清水寺・ファッションビル・市内ウォーキンググループ」の女性徒だけ5名の班に密着することに決め、ほぼ一日その娘らと行動をともにしました。彼女らにとれば旅館から地図を片手に清水寺まで歩くのすら大冒険で、ナントカ到着した時は大喜びでした。清水寺は高校生でごった返していましたが、これにはわけがあって境内にある「地主神社」というのが「縁結びの神様」なのです。そのため高校生は競って清水寺に行きたがるのです。清水からはバスで駅前に移動、駅裏にある若者専用のファッションビルでほとんど5時間!(昼食もこの中のピザ屋)いずっぱり。キャアキャアいいながら洋服を買っていました。帰りはバスで旅館まで戻り、しゃぶしゃぶの夕食を取り、夕食後はまた自由行動で外出できます。小生はファッションビルでヘロヘロになり、夜は遠慮させてもらい新幹線で東京に帰ってきました。
 就眠前には枕投げやおしゃべりで誰も朝方まで寝ないのだそうです。「タバコとか吸ったりしないの?」と聞くと、ほとんどいないといいます。なぜかわかりますか。ひとりでも規則を破るものがいると、その日一番の楽しみである夕食後の自由行動が中止になり、宿に閉じ込められるので、だれもそこまではやらないのだそうです。良し悪しは別にしてすごい話ですね。
(あ)

朝早く旅館前を出発する、わがグループ

ひとり東京をフラフラする

 高校生の修学旅行に刺激されたわけではありませんが、今回の東京出張ではいつもとちがって積極的にいろんなものを見たり、味わったりしました。六本木にある比内地鳥の焼き鳥屋「I」は、比内地鳥を全国区にした「きっかけのお店」で初めて入りました。メニューにいっさい値段がかかれておらず、ボトルキープの欄に「ヘネシー」と「ドンペリ」(2万1千円)とあったのにはのけぞってしまいました。
 再生なった銀座の青山ブックセンターにも初めて入りました。こんな商売なのに本屋の良し悪しについてほとんど何もわからないのですが、ぐるりと店内を一回りして、ここがなぜ伝説の書店なのか、まったく意味がわからずスゴスゴと帰って来ました。久しぶりに上野の国立西洋美術館で「マティス展」を観てきました。晩年自由に絵筆がもてなくなってから創作した切り絵が特に好みだ。20年以上神楽坂の芸者さんを撮りつづけている写真展「ヤマモトヨウコ展」は事務所のすぐそばのギャラリーでみた。山本さんはスチューワーデスから写真家に転進、神楽坂芸者にほれ込んで神楽坂に引っ越してきたという人である。昔からの知り合いだが、残念ながら会場には不在だった。
(あ)

懐かしい顔

 今年3月に秋田大学を卒業するまでの3年間、無明舎でアルバイトをしていた山岡洋貴君が遊びに来ました。彼は秋田大学鉱山資源学部在学中、秋田県に本部があるカヌークラブ「エルク・ジャパン」のメンバーとして練習に励んでいました。このクラブは男女とも日本チャンピオンを擁する最強のカヌークラブで、ここで山岡君は「ワイルドウォーター」という急流荒波のコースを下る競技の選手として練習していました。毎年国体やジャパンカップに参加し、それなりの成績を収めていましたが、職業として高校教師の道を選び北海道に渡りました。初任地は釧路工業高校に決まり3月末、新天地に向けて引っ越して行きました。高校ではボート部の顧問になり、カヌーのほうは学校の近くにある釧路川で毎日個人練習しているようです。その甲斐があり北海道でも「ワイルドウォーター」の国体選手に選ばれ、埼玉国体では成人の部18位という成績だったそうです。
 今年のカヌー大会が全て終わり、学校の秋休みを利用してこのたび秋田に遊びに来たもので、彼に言わせると秋田は第2の故郷で「里帰り」のようなものだそうです。社会人になったせいか顔もちょっと引き締まり、たくましさも増したようです。会社には8月に赤ちゃんを産んだ元社員の嶋田さんと一緒に来ました。嶋田さんも元カヌー選手で、山岡君と雨の日も雪の日も練習場所の角館に通った仲間です。山岡君は「いつか北海道で全国に通用する高校生のカヌークラブを作るのが夢です」とニコニコしながら話していました。
(鐙)

赤ちゃんを挟んだ山岡君と嶋田さん

今週の花

 今週の花はリンドウ、風船唐綿、デンファレ、ポンポンダリア。
 風船唐綿は「フウセントウワタ」と読みます。ガガイモ科の植物で、これは花の後の実の状態です。表面のトゲは柔らかいので触っても痛くありません。これが割れて、中の綿帽子が風に乗って種を遠くへ運んでくれるそうです。綿帽子といってもタンポポよりしっかりした綿毛なので、これを集めてクッションなどの詰め物にすることもできるとのこと。中身が気になったので一つだけ開いて確認してみましたが、まだ成熟していなかったらしく肝心の綿を確認することはできませんでした。残念。
(富)

No.210

郷愁(サウダーデ)(光文社)
内海隆一郎

 50歳をこえた男たちの物語という惹句にひかれて読みはじめたが、どうにも短編の終わり方がいずれも「過剰」のような気がして、最後まで感情移入できなかった。それでもなんとなく著者のテーマ選びの視点に共感するところがあり、文庫で出ている『鰻のたたき』『鰻の寝床』を読んでみたら、これが抜群に面白い。寿し、天ぷら、ソバ、赤提灯におでん、いろんな飲み屋が舞台になり、そこで泣かせる人情話が展開する。これがめっぽうリアルで、池波正太郎よりも読み応えのある料理小説にもなっている。市井の人の哀歓を描かせるとピカイチと定評のある作家とは聞いていたが、これほど手馴れていると安心して読める。「うまい料理に人情あり」という、この人特有のスタイルがどの短編にも崩れることなく貫かれているのも見事というしかない。『風の渡る町』という短編連作集は岩手のとある町を舞台にして、いつものように主人公が話ごとに変わりながら読み終わると町とそこに暮らす人々の情景が鮮やかに描き出される。連作短編集(オムニバス)という形がこの人の持ち味のようだ。特に障害者が出てくる人情話はうまい。ヘンな同情心を起こさせず、偏見も思いいれも排した物語進行が、この作家の方向性を示すいいモチーフになっているような気がする。何も読む本がないと感じたときは、この人の文庫本を読めばいい。そんな気にさせてくれる、藤沢周平の現代版のような作家である。

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