Vol.217 04年10月30日 週刊あんばい一本勝負 No.213


太平山とオッカー沼

 快晴の休日に、久しぶりに昔の散歩コースである医学部の裏山散策をしてきた。犬を飼っていた15年ぐらい前までは毎日のように歩いていたコースだが、太平山がきれいに見えることと森の奥に農業用の溜池があり、これがちょっとヨーロッパのどこかの「森と湖」のようにも見え、人もいないので心安らぐ「秘密の場所」だった。途中に2箇所大きな道路ができ興ざめして行かなくなったのだが、現在もあいかわらずひと気はなくその美しい景観を保っていた。これはたぶん溜池に魚がすんでいないので釣り人がこないせいだと思うのだが、すぐそばに車の騒音が聞こえるから、カモシカやクマがひょっこり顔を現すというわけにはもういかないだろう。その昔、犬との散歩中にこの「オッカー沼」でクマとあったことがあるし、あまりに静かでいつ動物が出て来てもおかしくない雰囲気をもった森と沼だった。沼の名前は小生と息子が勝手に付けた名前で、当時は二人ともよくカミさんに叱られていたので「怖い」と「お母さん」の言葉を混ぜて作ったことばである。歩いてみると歩数にして往復8千歩ぐらい、これは皇居1周と同じだから距離は5キロ前後といったところか。夜に毎日歩いている経法大コースが1万1千歩ぐらいだから、今のほうが歩いている計算だ。近所に家が建って2階の部屋から太平山が見えなくなって久しいのだが、ここに来るといつでも太平山の雄姿を見ることができる。また来てみよう。
(あ)
太平山とオッカー沼

来客いろいろ

 忙しくなってきた証拠なのか、事務所に来客があいついで、珍しく毎日誰かとのアポが入っている。その多くは銀行員や税理士の先生、印刷所や広告関係者や新聞記者といった日常的に付き合いのある人たちだが、先週は久しぶりに米沢のライター伊藤さんが来舎。伊藤さんは無明舎が忙しくなるとホテルに泊まりこんで(今回は3泊4日)作業をしてくれる小舎にとって最重要助っ人で、黙々とものすごい仕事量をこなしてくれる「阪神のバース」のような人である。お酒が大好きな伊藤さんのために毎日小生と鐙が交互に居酒屋に付き合うのも日課で、それが私たちの楽しみでもある。そのほか先週は函館から将来出版をやりたいという2人の方が相談に見えたし、島田が6キロになったという赤ちゃんをおぶってISOの打ち合わせ、編集手伝い志望の若い女性との面談もあったり、多士済々の来客が続いた。今年いっぱいはこんなスケジュールが続くのが予想されるが、デスクワークよりは人に会っているほうが楽しいのは確か。
(あ)

作業をする伊藤さん

函館から見えた2人

複雑な比内鶏の世界

 以前も比内鶏の本を出すため取材をしていることを書きましたが、これはなかなか簡単には全貌が見えない複雑で面白い世界です。まず天然記念物の比内鶏と食肉用の比内地鶏があるわけですが、この比内鶏にも天然記念物とそうでない鶏がいます。天然記念物になるにはいくつもの条件があり、これをクリアしないとただの純粋な比内鶏になってしまいます。また「秋田県声良鶏・比内鶏・金八鶏保存会」という団体があって、ここの会員が飼っている比内鶏でないと天然記念物にはならないのです。比内地鶏にもオスの比内鶏と何の鶏を掛け合わせたかによって肉質に違いが出ます。さらに飼育期間、最近人気が高い比内地鶏の親子丼のための採卵用比内地鶏、スープ用などの鶏もあります。そられにどのような鶏を使うか会社によって違い、それぞれ思惑や工夫があってこの話を聞くのがすごく面白いのです。これに卵を孵化させて鄙を育てる秋田県農業公社や業者、また育成の研究をしている秋田県畜産試験場の専門家たち、天然記念物として保存に関わる秋田県教育委員会文化財保護室などさまざまな人たちが比内鶏と比内地鶏の周辺にいます。これらの取材をほぼ終え、ライターの林さんはいよいよ書き始めるようです。はたしてこの複雑怪奇な世界をどのように料理して原稿に仕上げてくれるのか本当に楽しみです。
 先日、保存会事務局がある大館の山田記念館に行って、選考会を見学してきました。終わってから会員が持参した比内鶏を使ってつくったきりたんぽを御馳走になってきましたが、これはおいしかった。さらに別の会員がお土産に比内鶏をもたせてくれました。もちろん食べたのもお土産も天然記念物でない比内鶏です。天然記念物の比内鶏を食べるのは法律違反ですからね。 。
(鐙)

山田記念館で飼っている天然記念物の比内鶏

今週の花

 今週の花は全部で8種類。どれも珍しい花ではないので、花壇などでも目にすることができます。金魚草とも呼ばれるスナップドラゴン、トルコキキョウ、スプレーカーネーション、スプレーバラ、ひまわり、アルストロメリア、赤い実がかわいらしいヒペリカム、薄桃色の小さな花がロウ細工のようなワックスフラワー。ワックスフラワーはフトモモ科ですが、「フトモモ」という植物を見たことがないのでとても気になります。熱帯アジア原産の木で、中国名の「プータオ(蒲桃)」が沖縄のことばで「フートー」となり、それが「フトモモ」になったという説があります。また英名では果実の香りが良いことから「ローズアップル」と呼ばれています。でも味はイマイチらしいです。
(富)

No.213

かくかく私価時価(BNN)
小田嶋隆

 「無資本主義商品論」とサブタイトルにある。「噂の真相」に5年にわたって連載された時事的コラムを集成したものだが、この人の著作はやみつきになる。毒も盛り方やつくり方が、身体を張っている緊張感に満ちているからからだとおもう。なかなか文筆業ではいえないこと(致命傷になる)をガンガン連発する居直りも小気味良い。文庫で出ている『パソコンは猿仕事』も面白いし、『日本問題外論』(朝日新聞社)も読み始めるとやめられない。そんな著書の中でも飛び切り面白そうなのが、洋泉社から出ている『罵詈罵詈―11人の説教強盗へ』だろう。林真理子や田原総一郎、ビートたけしといった有名人をなで斬り(メッタ斬り)している本だが、これが初版で品切れになっていて手に入らないのだ。しょうがなくネットの「日本の古本屋」で探すと定価1325円の本が「3000円」になっている。一般的にはあまし売れなかったが、好きな人たちには垂涎、禁断の果実で、どんなことをしてもてに入れたい書物なのだろう。私も3000円という価格に丸1日悩んだが、……買ってしまった。膨大な資料を読みこなして書いている文章なので、他の著作のような臨場感が薄いのが欠点だが、まちがっても朝日新聞とか講談社では出せない本である。ということはこの本が文庫化される可能性も限りなくゼロに近いということか。

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