Vol.229 05年1月22日 週刊あんばい一本勝負 No.225


毎日が雪、雪、雪……

 とにかく毎日雪が降り続いています。「今年は暖冬」などと恐ろしい予言をした天気予報士を恨みたくなりますが、事務所前を日に3回も雪寄せするのは重労働です。本来なら朝1回の雪かきで十分なのですが、雪が降りつづけると除雪車が出動します。この除雪車がクセモノで、こやつは掻いた路上の雪を軒先に積み置いて去っていくのです。ですから除雪車がきた、ということはすなわち「玄関の雪寄せをしなさい」という意味なのです。小舎は自慢ではありませんが高齢者集団なので、キンキンと冷え切った野外での除雪作業はかなり危険を伴います。過剰なほどあたたかい事務所内と激しい温度差があるため、外に出るためにはそれなりの心身の準備が必要なのです。雪寄せ作業はやっているうち身体があたたまり、外の冷気が逆に気持ちよくなっていくのですが、不用意に外にどびだし作業をすることは戒めています。事務所からわずか10メートルしか離れていない在庫をストックしているプレハブに行くのは大変です。ここも毎日用のあるところなので、雪かきしなければなりません。新刊ができて大量の本を運び込まなければならないときは、まずは雪かきをして道路を確保するところからはじめなければならないのです。もう雪はけっこう、誰かもらってくれませんか、雪を。
(あ)
事務所横と倉庫までの道

78歳の現役ノンフィクション・ライター

 今月末、江戸時代の米沢藩士・雲井龍雄の庄内藩探索紀行の謎を追う歴史ドキュメント『雲井龍雄庄内藩探索紀行』という本ができあがります。著者の高島真さんは昭和2年(1927)生まれの現役のノンフィクション・ライターで、昨年末はやはり小舎から『シベリア出兵従軍記』という本を上梓しています。その数年前にも「東京パック」という昭和初期の風刺漫画の編集長である下田憲一郎の生涯を追う『追跡「東京パック」』という労作を無明舎から出しています。高島さんは山形市在住で、78歳ですが(お電話で話すかぎり)若々しくエネルギッシュなかたで、とてもそんな年齢には思えません(実はまだ一度も直接あっていないのです)。書くものにも現代性があり、文体もまったく古めかしさを感じさせません。ですからいつも50代の人と仕事をしているような感覚をもっていました。さらに驚くのは小舎から出した上記3冊の主人公すべてが、高島さんご本人の親族関係者である、ということです。
 古い順から言えば幕末の「雲井龍雄」は奥さんの親戚筋にあたり、明治の「シベリア出兵」の従軍記者は父親であり、大正昭和に生きた「下田」は縁戚に当たる人物なのです。このリアリティを生かし、取材に時間をかけ、新聞記事のような抑制された文体で丁寧に時代と人物が活写されています。今年の前半はこの高島さんの3冊の本をセットにして山形を中心に宣伝していこうと思っています。
(あ)

これが2冊の本とカバー見本

今週の花

 今週の花は黄色と白のフリージア、スプレーバラ(リデア)、クリーム色のスプレーカーネーション、ゴッドセフィアナ。
 フリージアはアヤメ科の植物で、原産地は南アフリカ。フリーズさんというイギリスの植物学者にちなんで名付けられました。日本へは明治時代に紹介されたそう。野性のものは黄色と白だけで、ピンク、赤、紫などの色や八重咲きのものは品種改良されたものです。フリージアの特徴の一つでもある甘い香りを嗅ぐと、春が近付いてきていることを教えてくれているようで幸せな気分になります。
(富)

No.225

自殺されちゃった僕(飛鳥新社)
吉永嘉明

 最愛の妻と友人の漫画家(ねこぢる)、仕事の師である編集者・青山正明の3人に自殺された男(編集者・ライター)の手記である。編集者やライターといってもトランス系というのかドラッグや鬼畜系の人で、2人の若い女性の自殺者は「はやく死んでしまいたい」と願っている。ほとんど覗き見するような気分で読み出しはじめたのだが、読み進めながら鬼気迫る描写や、張り詰め今にも切れてしまいそうな著者の臨場感ある筆使いにホラー小説を読んでいるような怖さを感じた。これほど壮絶な世界が、自分のすぐ横に存在していることがなかなか信じられなかった考えもしなかった、といってもいいかもしれない。30代の有能な人たちが何の罪悪感も未練もなしにあっさり自死を選び、あの神戸の殺人事件の少年と通底する世界(活字コミュニティー)が大きな部数で存在している現実。この本を読んでいるとサカキバラナントカは決して特殊な人物ではない、というのがよくわかる。何万人のサカキバラが私たちの周りには存在している。オウム真理教を「異常な世界」のひとことで括ってしまうことではなにも解決しない、社会がまっすぐに見ようとしない「もうひとつの世界」が確実に存在する。著者はそうしたこと(自分もそちら側の人間であること)をふまえ、なおかつ残された側の視点に立って、自殺は間違っている、と悲痛な叫びをあげる。

このページの初めに戻る↑


backnumber
●vol.225 12月25日号  ●vol.226 1月1日号  ●vol.227 1月8日号  ●vol.228 1月15日号 
上記以前の号はアドレス欄のURLの数字部分を直接ご変更下さい。

Topへ