Vol.23 2月3日号 週刊あんばい一本勝負 No.20


「棚の会」の新年会

 「棚の会」の新年会が東京の市ヶ谷アルカディアであり、久しぶりに出版界のいろんな人たちとお会いできた。今回は川上賢一の術後回復祝いとニューヨーク紀伊国屋の市橋店長の帰国祝い(一時帰国です)も兼ねていて、100人以上の出版人が出席し盛況だった。「ニューヨークべんり帳」の吉田君も来ていたし、先頃20周年を迎えた「ニコリ」の鍛冶さんとも久しぶりに会った。珍しい人物は初期の頃、アクセスにいた長峰女史の顔が見えたこと。彼女はその後、劇書房の立ち上げや演劇畑のほうに行ってしまったので何十年ぶりの再会である。が、なんと言っても珍し度ナンバーワンは小倉金栄堂の柴田良一さんが来ていたことだろう。残念ながら店はなくなってしまったが、彼がスピーチの時はざわついていた会場がシーンとなったほどである。2次会はいつもの「本の学校」実行委員会メンバーの飲み会になったが、柴田さんと弓立社の宮下さんに誘われて3次会にもつきあった。弓立社は今度、吉本隆明の全講演CD(150タイトル)をだす予定で、その販売の相談を受けた。すごいことをやるもんだなあ。とにかくBK1の安藤君に相談してから部数決定をした方がいいですよ、とアドバイスする。いろんな人と会い話ができて刺激的な一夜でした。
(あ)

新聞書評ラッシュのなかで

 出版人たちの集まる会で「無明舎さんはマスコミ用になんか特別な餌をまいてるんじゃないの?」という指弾を受けてしまった。もちろんこれは仲間内の冗談なのだが、去年の暮れからこの1ヶ月間、自分たちも信じられないほど全国紙で無明舎の本が取り上げられている。読売の「編集手帳」や毎日の「余録」、朝日の「青鉛筆」や「文化欄」で『秋田のことば』が取り上げられ、『ケセン語』は朝日の「今年の3冊」で池内さんが取り上げてくれた。『昭和東北大凶作』は毎日の牧太郎さんがコラムで出してくれたし、サライは『田んぼの隣で本つくり』といった具合で、これに秋田や東北、共同や時事配信の地方紙まで入れると、大げさではなく毎日どこかのメディアにうちの本が出ている計算になる。
 たぶんこんなことは滅多にないことだろうから記念に記事をリーフレットにして宣伝用に使おうかな。
(あ)

サライに載っていた記事

ドイツの一番美しい本

 大阪・創元社の矢部さんから、京都の「関西ドイツ文化センター」でドイツの本を展示してるから行ってみたら、といわれ、京都に寄ったついでに行って来た。ドイツの本に関しては何の予備知識もなかったのだが、さすがドイツ、その堅牢でモダンな本文の組の美しさに圧倒されてしまった。展示されている本の数はそんなに多くはないのだが、丁寧に1冊ずつ見ていると1日いても飽きないほど濃密な空間だった。同じく京都では1点だけだが大好きなクレーの絵を偶然にも見ることができたし、その帰りの東京ではアクセスの向かいにある「檜画廊」で吉永直子さんという若いイラストレーターのなかなかいい絵と遭遇し、安かったので2点買ってしまった。今年は絵との相性が良さそう。
(あ)
ドイツの本 吉永直子さんの絵

今年の「一筆啓上賞」はアマゾンの堤さん

 福井県丸岡町の「日本一短い手紙コンクール」で今年の「一筆啓上賞」に選ばれたのが、なんと現在HPで「アマゾン便り」を連載中の堤剛太さん。12万通の中から選ばれたそうです。丸岡町もふっとっぱらで往復の旅費をだしてくれるらしいので4月の授賞式にはアマゾンから来日予定とのこと。おめでとう堤さん。しかし秋田の「恋文コンクール」は応募数の水増し問題で一挙に人気下降中らしい。どうでもいいけど。
(あ)

伊能忠敬シンポジウムで

星座石
 近年、伊能忠敬への関心が高く、各地で彼に関するイベントが開かれ、足跡を調査する研究活動が盛んで、小舎でも盛岡市在住の伊能忠敬研究家、渡部健三さんの『伊能測量隊、東日本を行く』という本を今作っています。他にも伊能忠敬に関する本を制作する計画があり、取材をかねて岩手県釜石市で開かれたシンポジウムに行ってきました。同行者はカメラマンの小阪満夫さんとライターの藤原優太郎さん。当日の基調講演は『四千万歩の男』を書いた井上ひさしさんでした。釜石は井上さんが20歳のころ2年間仕事をしたこところで、お兄さんも建設会社を経営していて、故郷に帰ったようなリラックスした雰囲気で講演していました。  他にも「星座石」という忠敬の測量の偉業を記念した江戸時代の石碑の撮影をしたり、資料館や図書館で資料を探してきました。帰りには魚市場でお土産に三陸の魚を買い、秋田に帰ってきました。
(鐙)

No.20

三上寛(彩流社)
三上寛怨歌に生きる

 アナクロなカバーのつくりや、ほとんど工夫もセンスも感じられないそんままの題名。しかし、この本をネット書店で見かけたとき、これは面白そうだ、と直感がはしった。私の好きな悪書の匂いがした。案の定、おもしろかった。どこが面白いのか。著者自らが走り抜けた60年代、70年代の、他人の言葉で語られつづけた青春が、自分の言葉でいきいきと描かれていた。ひとつの時代感覚を自分の言葉で語れるのは、よほど特異な体験を持つものにしか与えられていない特権である。この著者は、その適任者だった。個人的に知り合いなので、なぜ彼が創価学会に走り、そして信仰をやめたのか。2番目の奥さんはどんな人なのか、そんな下世話な興味にもちゃんと答える内容になっている。田原総一郎がまだテレビディレクターだった時代、彼はリリーやカルメンマキといった都会派の個性と三上氏を組み合わせて番組をつくっている。こんなことにも時代を感じさせる。都市の前衛アーティストたちと交わりながら「青森出身というのは当時の東京ではニューヨークだ、というのと同じインパクトがあった」と語るフォーク歌手とその時代にかんぱい!

このページの初めに戻る↑


backnumber
●vol.19 12月30日号  ●vol.20 1月10日号  ●vol.21 1月20日号  ●vol.22 1月27日号 

Topへ