Vol.236 05年3月12日 週刊あんばい一本勝負 No.232


「小雪のISO取得日記」が本になります

 今は子育てのため一時休業中の元社員・島田真紀子のISO取得奮闘記が本になります。『小雪のISO取得うるうる日記』(仮題・定価1680円)という題名で4月下旬の刊行予定です。本の位置としては東京・神保町にある地方小出版物専門の本屋さんの書店員が書いた『神保町「書肆アクセス」半畳日記』、世田谷の一人出版社『ひとり出版社「岩田書院」の舞台裏』、活字狂いの編集者『ナンダロウアヤシゲな日々』につづく「本の舞台裏シリーズ」第4弾目、ということになります。
 内容は無明舎ISO取得10ヶ月間の舞台裏記録ですが、なんの知識も経験もない若い女性が、未知のもの(ISO)に立ち向かいながら、海外旅行に行き、カヌーにおぼれ、結婚して、子供が出来て…という個人的な人生ストーリーを交えながら物語が進行します。零細地方出版の内情も、若い女性の情熱と悩みも、ISO取得のためのガイダンスを文章の柱にしながら、同時進行で展開するのがミソです。ISOに興味のない方も、「無明舎の舞台裏本」として読めるないようですので、どうぞ手にとってください。
(あ)

打ち合わせ中の島田

東京の雪と片岡知恵蔵

 3月12日の朝、この文章を書いているのですが事務所の窓から雪は見えません。道路や屋根、木々からも雪は消えてしまいました(ちゃんとみれば木陰に残ってはいます)。1週間前、東京の事務所から見た朝の雪景色は「きれいだなあ」という印象があったのに、秋田の豪雪は「ただただひたすら鬱陶しい」としか感じません。雪が生活と結びつくとそれは邪魔以外の何物でもなくなるからでしょう。ですから雪解けの時期というのは雪国の人間にしかわからない「感動」があります。感動ついでにこじつけると東京・新橋のガード下で片岡知恵蔵の懐かしい映画ポスターと出会いシャッターを押してしまいました。実はこの映画のことは細部まではっきり覚えていて、ふるさとの映画館の固いシートの感触が蘇るほど子供心にも印象に残っている映画でした。印象的というのは映画のできに感動したとかいうことではなく、当時の少ない子供の娯楽のなかではハラハラドキドキ度ナンバーワン、といった意味です。ですから「今、一番見たい映画は?」ときかれると、この片岡知恵蔵の探偵ものと森繁の「社長シリーズ」をすぐ揚げてしまうのは、あのころの時代にタイムスリップする一番の近道が映画だからなのかもしれません。いやぁ懐かしい。
(あ)
東京の雪とポスター

No.232

言葉の常備薬(双葉社)
呉智英

 「朝夕食後に一章 言葉の病気を防ぎます」という帯文のコピーはうまいのか、へたなのか。この帯裏には「インチキの伝統論を笑え! 言葉の広がりと深さは知れ!」とある。こちらのほうがまだ内容の核心をもう少し言い当てているような気もするが、それでも不完全。帯文よりも本文の内容のほうが圧倒的に面白い。日々の新聞記事やテレビなどのさりげない言い回しや誤用からテーマを拾い、それをひろげて一般論に持ち込みながらわかりやすく日本語の成り立ちを解読し、じわじわと著者の博覧強記がバクハツする。日常の言い回しに関して、面白おかしくちゃちゃを入れるケースが多いので、笑いながら読み飛ばしてしまうが、民俗学的考察や典拠のバックグラウンドはさすが、と思わせる正確さをもっている。個人的におもしろかったのは「デベソの秘密」で、これには笑ったが、その論旨をノートに書き写したくなるほど見事な推論でもある。本書を読むと新聞記事やテレビの日本語がいかにでたらめかがよくわかるが、例えば、外国人に数の数え方を教える際、「1本(いっぽん)、2本(にほん)、3本(さんぼん)」まではいいが、さて「4本」はなんと読むか。著者は「よんほん」ではなくむしろ「しほん」が正しいという。その例証をあげながら論考を進めていくのだが例証そのものがまたおもしろいのだ。

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