Vol.238 05年3月26日 週刊あんばい一本勝負 No.234


彼岸の中日と四十九日

 3月20日は彼岸の中日で義父のお墓参り。義母の「物忘れ」がほぼ病気の域に達したので、送り迎えから物品の用意まで、すべてこちら側がイニシアティブをとって進行しなければならないため、けっこうなにかと大変なのだ。この日は快晴だったが、いざ、秋田市営の墓地に行くと、日曜日の午前中なので1時間の駐車場空き待ち。さらに目指す墓地についても雪が深くてスコップで掘り出さなければ墓がみえず、やむなく断念。車に乗り込んだらすぐ横からカモシカがひょっこり顔を出した。雪が降り積もって静かだった山間に突然人間が雪崩のように押しかけてきたので、驚いて奥から見学にきたのかも。前日まで実は『カモシカの民俗誌』という6月刊行予定の本の編集をしていたので、この偶然にちょっぴり驚く。翌21日は父の四十九日。これは親族だけなので気楽なものだが、なんとはなしに49日でようやくひとつのケリをつけた安堵感。実家にすえつけられた大きな新品の仏壇をみて、大きな肩の荷がひとつ下りたような気持ちだ。それにしても、これからはこうした仏事が『めあたらしい出来事』ではなく『日常の行事』になるのだろう。
(あ)
秋田市の市営墓地と突然現れたカモシカ

年度末、恒例のあわただしさ

 例年通り、年度末(3月)までに終えてしまわなければならない細かな仕事が山積みで、アルバイトや外からの助っ人(盛岡や米沢からも)がきて舎内は賑わい、不夜城状態です。昔と違って大掛かりな仕事はほとんどないのですが、細切れの、それでいてけっこう時間のかかる仕事がたくさんあり、仕事があるだけありがたいとばかりに数をこなしている台所事情です。が、ここにきて本業の出版点数もうなぎのぼりで猫の手も借りたいのですが、こちらは小生以外誰もかまってくれません。
 これはすぐに金になる仕事を、そうでない仕事に優先順位を付けているわけで、一種の差別ですが、経営者としては、売れない本より金になる仕事を優先、が本音です。今年は外で古老たちのインタビューをする仕事があり、そのインタビューを活字おこしするために毎日2,3名の人が2階で夜遅くまで作業をしています。写真は26日土曜日の画像。土日も全員、お仕事をしているのです。
(あ)

2階で作業中の若者と老人

No.234

自分の人生がある場所へ(翔泳社)
リチャード・ボード

 著者はアメリカ生まれ。新聞記者や編集者のあと世界屈指の広告会社に勤務。仕事や社会への疑問から将来の地位も富も家庭も投げ捨て、フリーランスの物書きになり、今はサンフランシスコの浜辺の村にひとりで住む……こうした経歴を持つ著者のエッセイだから、おもしろくないはずがない。くわえて「全米ベストセラー作家の最新作」というオビ文にもそそられる。しかし読み終わるまで「版元」が少々気になったのは、私の職業柄だろうか。偏見があるわけではないが、これだけの作家の本を、なぜ早川や新潮が出版権をとらなかったのか(また、タイトルのこの安易さも気になる)、どうしてもうがった見方をしてしまう。案の定、読み進めるうちに文章の無意味な重複や、バランスを欠く短文が目立つ。よく考えればこの本がベストセラーになったわけでなく(ベストセラ―はまだ翻訳本の出ていない「最初は小さな舟を漕げ」)、この本は単なる第2エッセイ集で、ほんの身辺雑記帖なのだ。たぶんあまり売れなかったので版権が取得しやすかったのだろう、と想像が働く。だって最初のベストセラーがまだどこからも出ていないのだから。本書にもところどころ珠玉の言葉がちりばめられてはいるが、早川も新潮もこの程度の本には高い版権料を払わないだろうな、というのが正直な印象である。

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