Vol.240 05年4月9日 週刊あんばい一本勝負 No.236


東京の桜は5分咲きでした

 のっぴきならない用事で東京に行ってきました。みるつもりでいったわけではないのですが、たまたま通りかかった上野公園、靖国神社、皇居に北の丸公園でお花見をしてきました。秋田は4月下旬から5月にかけてが見ごろなので、ちょっぴり得した気分。桜はまだ5分咲きでしたが、どこの公園でもブルーシート宴会がたけなわ。まあ学生が昼から地べたに座って酒を飲んでいても、それはそれでかわいい光景ですが、大人たちが桜の木の下で宴会をやっている姿というのは外国人から見たら異様でしょうねぇ。上野公園には花見見物する日本人を見物する外国人がものすごく多くいました。それにしても秋田の花見と決定的に違うのは、宴席に1升ビンがあまり見当たらないこと。
 秋田の花見はほとんど1升ビンの隙間に人間が隠れていて酒ビンの数に負けないように人間が雄叫びを挙げている、というのが定番花見スタイルなのですが、東京は驚くほど静かで、お茶のペットボトルが異常に多いのが特徴です。趣味がよくないのですが小生はベンチに座ってこうした宴席をじっと観察しているのが大好きです。が、秋田ではそんなことをしている(酔っ払わず騒がずにいる)と泥棒か変質者に間違えられるので、これは東京でしかできないつかの間の贅沢なのです。
(あ)

靖国神社の桜

こんな装丁家がいたんだ

 東京ステーションギャラリーで4月2日から5月15日まで「佐野繁次郎展」が開かれています。佐野は「銀座百点」の装丁などでも知られた画家ですが、マティスとバスキアが交じったような色使いや構成が特徴でパリで活躍した人です。
 電車の中吊り広告でみて、見たことのある画風だなあ、とおもったのですが、実際に展覧会にいってみて、彼の絵はこれまで何度も目にしていることに気が付きました。新橋駅前ビルの壁画などでも有名なのですが、案外知られていないのは横光利一をはじめ舟橋聖一や田村泰次郎といった作家の本の装丁家としての一面です。今回はじめてその全貌を知ることができました。題字も著者名もすべて手書きの本なのですが、今見てもちっとも古くないのですからセンスというのは恐ろしい。色や構成が自分好みのせいもあるでしょうが、近いうちに東京に行ったらもう1回見てみたいとおもっているほど気に入った画家です。皆様も機会があったらどうぞ。
(あ)

チラシ

No.236

売文生活(ちくま新書)
日垣隆

 夏目漱石から平成のフリーライター、人気作家まで、業界ではタブー視される「原稿料」の話。同じ業界の末席を汚すものとして、これは何をさておいても読まなければ。でも興味はあるが「参考にはならない」。こちらは秋田で零細な出版の真似事をしている身分、とても全国レベルの出版社と同じ基準で原稿料や印税を払えるわけはないし、そんなことを考えたこともない。原稿料や印税に関しては、それぞれの版元の事情で「自分たちの基準」をもうけていれば何の問題もない、というのが地方の版元としての認識である。本書でもっとも興味深いのは立花隆と筒井康隆、それに80年代に何冊か本を書いていたフリーライターのM野さんという人物に言及した部分。特に立花さんには個人的な「なにか一言」があるようで、頂点に登りつめた「知の巨人」で物書きの神様のような存在を「経営感覚の欠如した作家」と断じている。この本ではじめて知ったのだが立花さんはすでに離婚し、有名な仕事場の猫ビルも売却、印税原稿料だけで生活が成り立たない実情を暴露されている。確かにフランスにシャトーを持っている、なんて聞くとオイオイと思ったものだ。佐々木ナントカさんの「立花秘書日記」でかなりの部分まで台所事情は明らかにされているが、あれと同じくらい本書はインパクトがある。

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