Vol.243 05年4月30日 週刊あんばい一本勝負 No.239


県北、電車の旅

 久々に秋田県北部(大館市と北秋田市)に日帰りで、しかも電車でいってきました。大館市は自費出版の打ち合わせ、北秋田市(鷹巣町)はカメラマン・宮野明義さんの出版パーティです。当初は車で行くつもりだったのですが、なんとなく気分的にのんびり車窓の景色でも眺めながら、という気分になり、そんな自分自身にうっとりもしたのですが、実際に行ってみると電車やバスの本数が少なく移動は大変でした。特にバスは祝日運休で、結局は細かな移動もタクシーや電車に乗ることになり、かなり疲れ無駄が多い旅でした。おまけに移動(タクシー)や特急料金をいれると自家用車で行くよりも3倍くらい経済的には割高。確かに車窓の景色はすばらしく、車でないため出版パーティーでは自家製ドブロクをたっぷりいただくこともできたのですが、金と時間がない貧乏人には少々無理のあるプランでした。余裕をかますどころか、こりゃよっぽど時間と金に余裕のある人以外は「難しい選択」であることがわかった1日でした。
(あ)
ドームが見える大館市と自家製ドブロクがおいしかった出版パーティー

田起こしがはじまったのですが……

 例年通り、事務所前の石井さんの田んぼの田起こしがはじまりました。半年間の壮大な「田んぼ劇場」の幕が斬って落とされたのですが、残念ながら画像のように、今年からはまったく何も見えなくなってしまいました。この新築されたアパート群の後ろに2枚ほど、わずかに残った田んぼがあるのですが、ご覧のように事務所からまったく何も見えなくなってしまったのです。これも「時代の流れ」と心の整理は日々しているのですが、これまで毎年毎年、目の前の風景に心癒され、仕事や生活の喜怒哀楽までともにしてきたバックグラウンドが消えてしまうようで、そう簡単に心の整理やざわざわとした胸騒ぎが収まりそうにありません。
 単なる偶然でしょうが私たちがここに引っ越してからちょうど25年になります。土地や家のローンが今月、ようやく終わりました。長いお勤めであるローンが終わったと同時に、田んぼは私たちの眼前から消えてしまいました。あの心癒してくれた田んぼの風景は、高いローンの代償だったのかもしれません。
(あ)

まったく田んぼが見えなくなりました

No.239

夜のピクニック(新潮社)
恩田陸

 第2回本屋大賞の授賞式に出た友人が翌日、「女性書店員が多いから、受賞作も女性作家が多くなる」と語っていた。その翌日に羽田空港の山下書店でこの本を見かけたら、すでに「本屋大賞受賞」の大きなオビが掛けられていた。この手回しのよさはどうしたことか。まだ2日間しかたっていないのに。それはともかく夢中で読了、ワクワクドキドキしながら楽しい時間を過ごしたが、正直なところ大きな感動はなかった。「永遠普遍の青春小説」というコピーにいつわりはないものの、川上健一の作品のような鮮烈な感動を覚えなかったのは、どうしてだろうか。たぶん読み手の感度が鈍いのだろうが、どこといって欠点のない小説なのに舞台設定であるエリート高校生に、反発と違和を感じ、感情移入できなかったのが最大の問題のようだ。高校生活最後のイベントとして夜を徹して88キロ歩く「歩行祭」が舞台で、この中に物語のエキスが詰め込まれている。この歩行祭のモデルになった高校は確か岩手県かどこかに本当にあって、NHKのテレビ・ドキュメンタリーで取り上げていたのを観たことがある。しかし、かなり偏差値の低い高校の生徒だった小生には「高校は泥臭くて、品がなくて、暴力的な場所」という、この小説で描かれる正反対の場面設定しか思い浮かばない。これでは決定的に読み方を間違ってしまう。

このページの初めに戻る↑


backnumber
●vol.239 4月2日号  ●vol.240 4月9日号  ●vol.241 4月16日号  ●vol.242 4月23日号 
上記以前の号はアドレス欄のURLの数字部分を直接ご変更下さい。

Topへ