Vol.248 05年6月4日 週刊あんばい一本勝負 No.244


「和賀山塊」と「ブラックバス」

 かなりの時間をかけて、この夏の出版の目玉として編集作業をすすめてきた『秘境・和賀山塊』と『オオクチバス駆除報告』の2冊の編集作業がようやく終了し、6月中に刊行されます。どちらの本も何年も前から原稿依頼し、著者の都合でノビノビになっていたものですが、ようやく日の目を見ることになりました。『和賀山塊』は秋田と岩手の県境に広がる巨大なブナ原生林山岳地帯ですが、白神山地の世界自然遺産指定で陰に隠れていました。しかも登山道が少なく、その全貌が誰にもよくつかめなかったため、「秘境」と冠されてきました。
 『オオクチバス』のほうは、著者の魚類研究者・杉山さんのメーンテーマです。秋田県は彼の存在もあり、そのモデル駆除ケースになっているのですが、その実践記録といっていい内容です。オオクチバスを「魔魚」にするな、という釣り人側からの本はすでに出版されているようですが、それに真っ向から反論する初の「駆除本」ですので話題になること間違いなし、です。科学的データや実践記録、失敗や成功例、駆除のためのガイドブックとしての中身は豊富です。
(あ)
オオクチバスと和賀山塊の有名な日本一のブナ

No.244

あわわのあはは(西日本出版社)
住友達也

 徳島でタウン誌を興し、成功させてM&A、いまは何をしているかわからないけど(プランナーと奥付には書いている)、ともかくもそのタウン誌と自分の23年間の奮闘記である。いわば私たちと同業者のような人と仕事と風土の物語なので、書かれていることはよくわかる。でもタウン誌と地方出版社がまるで違うのは相手にする読者の数。あちらは数万、こちらは1千単位。これじゃはなっから勝負にならない。あちらは広告産業で、こちらは貧乏個人商店、と色分けすれば、そう腹もたたないが、地方の出版話といっても従業員が100人、何億も稼ぐ世界のことで、しょせん比較は無理なのだ。でも広告を取るということは難しい問題をいろいろと抱え込むことと同義なので、こちらの知らない苦労も多くあるに違いない。本書の白眉は後半、地元紙の徳島新聞との確執のシーンだが、まあこれもよくあること。地方では地元紙は「帝国」であり、文化を牛耳る支配人のような役割を持っているのは徳島だけでなく全国共通である。小さくても同じメディアとしてはその距離のとり方が問題なのだ。近づきすぎれば取り込まれるし、離れれば(反抗)つぶしにこられる。でも地方紙の記者たちも定年退職するころには、手をすりあわせながらタウン誌に再就職を依頼してくる、なんて話も聞いたことがある。タウン誌物語に吉野川をめぐる住民投票の話をクロスさせたことで、この本は成功、自慢話とは一線を画す読み応えのある本になっている。

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