Vol.252 05年7月2日 週刊あんばい一本勝負 No.248


夏の新刊案内ができました

 夏の新刊案内ができました。愛読者へのDMや新刊の出るペース、新聞広告の頻度、広告予算の使い方などが今年も後半になってようやく安定してきたという感じがします。ということはこれまでは行き当たりバッタリか、といわれそうですが、その通り、でした。零細出版社にとってはお金になる仕事が何よりも優先してしまいます。そのため定期的な仕事もその辺の事情でノビノビに遅れるのが常だったのです。新刊が月に3本ずつコンスタントに出ていれば、それに伴い新聞広告もDMも新刊案内も「定期的」に出せるのですが、なかなかそうはいかなかったというのが実情です。その原因をもっぱら印刷所のせいにしていたのですが、今年前半から仕事の洗い直しをした結果、その要因のほとんどはこちらの気紛れ、せっかちな入稿態勢にあることがわかりました。

これが今年の夏の新刊案内です。
色はワインレッド
 あいかわらず本は売れないのですが、定期的に本が出るようになり、販促の時間が出来ると、1冊1冊にかけられる時間が格段に多くなりました。この時間で、売れなくなった本の流れにストップをかけようと試みているところです。 新刊案内を希望の方は、送料無料でお送りします。
(あ)

山の學校の開校式

 無明舎出版などでフリーライターとして仕事をしている藤原優太郎さんが、「山の學校」をつくりました。場所は秋田市河辺岩見三内。市町村合併したため秋田市になっていますが、去年までは河辺町だったところで、無明舎から車でゆっくり走っても30分ほどで行く、太平山の山麓です。かつては県営岩見ダムの工事事務所だった建物を改造して、「河辺少年自然の家」として子供たちの合宿などに利用していた所を、藤原さんが河辺町から買い取ったものです。はたしてこの學校では何をするのか? 興味を持って開校式に行ってきました。開校式を兼ねた説明会には20数人が出席。くどくどと話をする前にまず外を歩こうと、学校と岩見川を挟んだ対岸にある財の神山(さいのかみやま)に登山。山菜のミズを採りながらの楽しい登山でした、と書けば嘘になります。実は私は1週間前からギックリ腰になっていてとても山歩きは無理。そのため料理スタッフと一緒に「ミズとサバ缶鍋」づくりを手伝って待っていました。
 昼食に二つの大鍋を平らげた後、学校の説明会が始まりました。2年間で1万円の会費制、月1回程度の山歩きやハイキング、施設の優先利用などが開校時のメニューですが、徐々に自然素材の手づくり教室、環境学習会、街道探訪会などが加わって行くようです。スタッフは和賀山塊を始めとした秋田の山を知り尽くした山男たちや、山の幸を使った料理の名人、街道に詳しい人など多彩です。夏にはキャンプや音楽会なども予定しているようです。私は早速会員登録をしましたが、まだかなりの会員を受け付ける余地はあるそうです。緩やかなシステムなので、会員からの希望が生かされて勉強メニューがどんどん増えて行きそうな、今まで秋田にはなかったタイプの学校のようです。どのように進化して、どんなフレッシュな学校になって行くのか、期待を持って見て行こうと思っています。
(鐙)

山の學校の玄関

講堂のように大きな部屋もありますが、6畳の部屋が15部屋あり宿泊できます

すぐ横を流れる岩見川。山と川のある学校です

No.248

現実入門(光文社)
穂村弘

 あるときはNHK出版の本ばかりとりあげたり、ある時期はぽぷら社の本が続いたり、偶然に講談社α文庫ばかり買ったりするのは、たいてい自分の読書傾向の似た編集者がその会社に移籍したり、ヘッドハンテイングされて企画内容がその人のものに染まるということがけっこう多いようだ。編集者は移籍するとき、自分の手がけた作家たちまでも一緒に移る傾向があるのだ。最近、光文社の本を読む機会が一挙に増えたが、その理由はよくわからない。たぶん、こちらと波長の合う編集者がいるか、時代を読むのに敏なる若手が育っているのかも。それはともかく、本書は41歳の新進気鋭の歌人のテーマエッセイ集(私の造語)である。40歳をこして、いまだ現実を恐れ、未婚で14歳程度の人生経験しかない「現実逃避男」が美しい編集者からそそのかされて、献血や合コン、部屋探し、相撲見学から占いまで経験し、その初体験レポートを書くという試みである。この著者の独特のユーモラスな文体もあるが、読み進むうちに「これはかなり精巧なフィクションではないか」と疑いたくなるところが著者の物書きとしての真骨頂で、現実と夢想の境目がふいにぴょんと消えてしまうのである。それは本書の最後のほうには顕著になり、初体験テーマエッセイがいつのまにか自分自身の「結婚レポート」になっている。これはまさか編集者の意図ではないだろうから、読者は面食らいつつも、この著者の迷宮に喜びながらついていく羽目になる。

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