Vol.253 05年7月9日 週刊あんばい一本勝負 No.249


2005年最新版「道の駅」ガイド、できました

 恒例の、というまではまだいきませんが、『「道の駅」とうほくガイド』(定価1260円)ができました。05年現在、東北地方にある115駅をすべて網羅した決定版ガイドブックです。この本は改訂を続け4回目の版になるのですが、万単位でよく売れます。しかし、そのまま増刷できれば出版社として利益のあるいい仕事なのですが、そうはいきません。「道の駅」は毎年増え続けます。ですから、それを付け加えなければならないため、版はそのたびに全面作り変えになるのです。けっきょく一から編集をやり直すのとほぼ同じ状態なのです。さらに取材や写真撮影、データ確認作業、編集とすべての作業を舎内でやってしまう仕事なので、単行本とは桁違いの労力と費用がかかります。今の2倍売れて、2度は増刷し、数年間は改訂しない、という状態が経済的には理想なのですが、そううまくはいきません。東北地方は全国でもトップの「道の駅」隆盛ブロックで毎年道の駅は増殖を続けています。今回こそは数年間、このガイド一冊で充分、といきたいのですが……。
(あ)
表紙と組み見本

No.249

さわの文具店(小学館)
沢野ひろし

 文房具の思い出というのはエッセイにまとめるのに格好の「素材」で、悪く言えば誰にでも書けるテーマといっていいかもしれない。これまで文房具の思い出について書かれた本は何冊も読んだし、雑誌に載っている著名人のエッセイにいたっては数限りないほど目を通しているはずだ。そのどれもが「ふむふむ」と感心したり、反発したり、共感で笑い出したりしたのが、なぜか、それが1冊の本になると「ウンザリ感」のほうが強くなり、途中で投げ出してしまうケースが多かった。それがこの本は違うのである。1篇を読むと間違いなく次の文章も読みたくなってしまう不思議な魅力に満ちた丹精でいてスリリングな文章なのである。著者が画家であり、家庭のなかでけっして立派な父親でないこと、この2点が前面に出ていて、他の文具物エッセイと一線を画しているのが、おもしろさの理由だろうか。高価な万年筆や銅版画機プレスが引き起こす家庭騒動、小物文具をめぐる子供とのいさかい、いやみになりがちな外国旅行も文具が主役だとイキイキと街の情景の細部まで立ち上がってくるから摩訶不思議。本の造りも見事だ。本文活字のセンス、イラストの線のきれいさ、版型(18センチ×15センチ)も「これ以外はない」ほど編集的には洗練されている。蛇足ながら、小生はこの画家の書く家庭崩壊ギリギリ小説がものすごく好き。最近書いているのだろうか。

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