Vol.255 05年7月30日 週刊あんばい一本勝負 No.251


幸五郎さんの出版パーティー

 先日出版された『熱血こうごろう荒町風雲録』は、仙台の荒町商店街で文房具店を営みながら、町の世話役として東奔西走する最後の仙台人・出雲幸五郎さんの「月刊こうごろう新聞」の10年間の記録から編んだ町おこしの本です。
その出版パーティーが先日荒町の文化ホールで行われました。幸五郎さんらしい音楽コンサートで、それが終わったあとに小ホールに移動して立食のパーティーに変わります。音楽コンサートはさすがベテランで、お坊さんの雅楽の演奏から地元高校生の合唱団、仙台フィル・メンバーによる弦楽4重奏、県会議員の演歌独唱からソロのヴァイオリン演奏まで、見事な構成で飽きさせることがありませんでした。演奏の合い間に和服姿の本人がたびたび登場し、踊ったり、茶々を入れたりで場内大爆笑、雰囲気作りもプロです。こちらとしては本の売れ具合が一番気になるところですが、著者本人は「本よりコンサート」なので、会場を移した出版パーティーでも、なんと自分が司会進行で仕切り、本よりもご自身が主役になってしまいます。新聞社の書評も個性的な著者本人にスポットを当てたものが多く、けっきょくは本の売上になかなか結びつかないという悩みがあります。本人が面白い、というのも考えものですね。
(あ)
コンサートと出版パーティー

高知県のババヘラを訪ねて

 氷菓のアイスクリンの故里を訪ねて高知市まで足を伸ばしてきました。秋田名物ババヘラのルーツを探しての旅です。高知では大正10年からこのアイスクリンが普及していて、観光地や公園、路上で販売されていました。その実態をこの目で見たいと思ったのですが、「アイスクリンのメッカ」といわれる観光地の高知城には「日曜日以外は出ていない」とゼロ。坂本竜馬像のある桂浜ではかろうじて一軒だけ発見しましたが、「いまは三社6人の売り子が出ているだけで、平日は店を出さない人もいる」とのこと。やはり『道の駅』やコンビニの普及で簡単においしい氷菓菓子を手に入れるようになった時代背景もあり、このアイスクリン(路上アイス)は年々衰退していく一方のようです。これに比べると秋田のババヘラはまだまだ意気軒昂、勢いがあるんだなあ、と見直してしまいました。高知で収穫だったのははりまや橋に隣接する繁華街柳町で「夜のババヘラ」を発見した時でした。高知ではアイスクリンは秋田の漬け物ガッコのようなもので、お酒を飲んだ後に欠かせないデザートなので、飲み終わった後に買いに来る酔客が多いのだそうです。どちらかというと秋田ではお子様の食べ物ですが、高知では立派に大人の食べ物として位置付けられているのがおもしろいですね。
(あ)
夜のババヘラと、これがアイスクリン

No.251

声をなくして(晶文社)
永沢光雄

 著者の永沢さんとお会いしたのはいつごろだったろうか。たしか北島行徳『無敵のハンディキャップ』の講談社ノンフィクション賞の受賞パーティーだった気がするのだが、そのときは奥さんとご一緒で「(故里の)仙台はどうして出版文化がないんでしょうねえ」とかなり怒りながらも、和やかに会話を重ねたのを憶えている。もちろんその前から彼のことは名文家として、その出た本のすべてを愛読していたのだが、会った印象はその感動を裏切るものではなかった。とくに奥さんと仲がよさそうで、ここが彼の創作の原点かな、と思ったほどだ。確かそのとき「みちのくプロレスの取材したので、じきに本が出ます」と言っていた。出版されたプロレスルポや小説集もすべて読んだが、その後しばらく空白があり、いきなり本書である。下咽頭ガンの手術で43歳にして声を失ったのである。その一年間の闘病生活日記なのだが、さすが名作「AV女優」の著者、並みの日記ではない。それは読んでみてのお楽しみだが時折出てくる沢木耕太郎批判などは、この人の面目約如。しかし、まあよく飲む。その酒好きの本心というか理由を訊きたい気持ちになるが、有能な才能は、それと同じくらいのリスクを背負った「闇」も抱え持っているのだろう。小生も酒好きだが、もし体に異常が発見されればすぐに進んで禁酒する。声を失った著者のこれからの作品に期待したい。

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