Vol.257 05年8月13日 週刊あんばい一本勝負 No.253


高校生S君のこと

 市内のM高校のS君が夏休みの「職業インタビュー」という課題のため、取材に来舎した。中学生の地域総合学習や職場訪問といった学校企画が盛んで、うちのような所にも毎年「おうかがい」が何件も学校側からあるが、最近はほぼ断っている。若い人に出版に興味を持ってもらいたい、という思いはあるのだが、なにかと気を使うことが多く、仕事に支障が出るので、やむを得ずない措置である。が、今回のM君は例外である。なぜかというと、M君が中学生の時から私たちの方が、実はM君のファンだったからである。このM君、中学時代から自らのHPで「秋田の中世史研究」をしているという、かなり変わった少年で、その筋の人には知れ渡った存在なのだ。彼のHPをはじめて見たとき、「本当にこれが中学生が書いた文章なのか?」と論議になったほどレベルの高い論考で、なかなか信じられなかった。
 自らのルーツをキーワードに県内は自転車で、県外は休みや学割を利用して歴史調査をし、膨大な資料を読み込み、長い論考を楽しそうにHPに発表し続けている「不思議な中学生」だったのである。このM君から突然、興味を持っている無明舎の取材をしたい、とメールをいただいたのだから、逆にこっちが舞い上がってしまった。実際に会ったS君の印象は想像通りの若者で、これを機会に小舎のHPに彼の「ルーツ探し」の連載をしてもらおうかと企画中である。
(あ)

S君は想像通りの聡明で思慮深い高校生だった

東京娘の田舎初体験

 夏の東北の風物詩になった感がある「ねぶた」と「竿灯」見物に、長女の友達2人が秋田に遊びに来ました。一人は慶応大学、もう1人は明治大学に通っている女子大生で、ともに生まれも育ちも東京という都会っ子です。初日は3人で青森のねぶた見物。翌日は自然の多いところに行きたいというので、開校したばかりの「山の學校」に送り込んで、一日勝手に遊ばせておきました。ブルーベリーをどっさり摘んだり、掘ったばかりの新ジャガをふかして食べたりして大いに楽しんだようで、温泉にも入り大満足で帰ってきました。その夜は竿灯見物に行き、竿灯にも挑戦したそうです。「見るだけのねぶたより、竿灯の方が面白かった」という感想を述べていました。3日目は私が鳥海山に写真撮影に行くといったら付いてきて、その雄大な自然にびっくり。元滝見物、道の駅・象潟での生牡蠣に初チャレンジ、4日目は私が男鹿に「徐福塚除幕式」に行こうとしたらまたまた付いてきて一緒に参加。その足で男鹿を回り男鹿水族館GAO、なまはげ館に行きなまはげと記念撮影をし、隣の男鹿真山伝承館でなまはげの実演に腰を抜かして、最後は男鹿の海岸で服がぬれるまで遊んできました。このほか書き切れないほどの田舎体験をして、人気の駅弁・比内地鶏の「鶏めし」を手にして、楽しかった秋田に後ろ髪惹かれる思いで帰って行きました。
 あとからお礼の電話が来ていましたが、今回の夏休みは楽しさと、驚きの連続だったようです。こんな風に自然に触れたのも初めての経験だったそうで、また来年秋田に来たいと本心から思ったようです。ここまで感動してもらえると、案内した私も嬉しくなってしまいます。秋田の人にとっては特に新鮮味のないコースでしたが、東京娘にとっては違ったようです。彼女たちの喜びを見ていると、秋田も捨てたもんじゃないなと思い、ちょっと気分を良くした数日間でした。
(鐙)

男鹿にある魚屋食堂「すごえもん屋」でお昼を楽しむ。これで3人前とは多すぎます。

鳥海山からの水が湧き出した元滝。

No.253

ぱちもん(小学館文庫)
山本甲士

 もうこのコーナーに何回登場したろうか。『かび』『あかん』『とげ』…と平仮名タイトルのこの著者の本はすべて面白く、病み付きになる。ほとんどが連作短編集なので、Aという作品では脇役だった人物がBという作品で主役になり延々と物語が続いていく。その構成もたまらない魅力だ。どんな脇役やチョイ役でも油断できないのは、彼らは次の舞台で主役を張る準備をしている「チョイ役」だからだ。舞台は大阪、主人公はすべて「悪者」というかチンピラで、このチンピラが憎めないキャラクターなのだ。用意周到悪事をたくらむのだが、チンピラは基本的にドジで間抜けで頭が悪い。必ず失敗しては痛い目にあう。そのプロセスがハラハラドキドキ、抱腹絶倒、あきれた行状の連続で大阪弁の速射砲攻撃にもくらくらする。大阪弁がこれだけ効果的に使われている小説も少ないのではないか。本書は「探偵」が主人公になる連作ものだが、はなっから探偵がチンピラである。調査費水増しや調査捏造が当たり前という「ぱちもん探偵」だから胡散臭くトホホな結末が最初から見えている。「巻き込まれ系小説」とか「ブラック系連作短編集」とレッテルを貼られている作家だが、一度読むと病み付きになることうけあい。

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