Vol.261 05年9月10日 週刊あんばい一本勝負 No.257


朝もやの大内宿

 先週末、会津にある旧宿場の大内宿に泊りがけで行って来ました。ここで「ふくしまけん街道交流会」の大会があったので参加してきたのです。大内宿を「観光宿場」と表現すれば怒られそうですが、今では年間80万人もの観光客が訪れる立派な観光地で、ハイシーズンの休日には「歌舞伎町並み」、と地元の人が表現するほどすごい人ごみとなります。約40軒ある茅葺き屋根の家々はお土産屋だったり、蕎麦屋だったり、民宿だったりと何らかの形で観光に関わっていますが、いつ行っても人が多く落ち着かない雰囲気のため、用事を済ますと早々に村を後にしていました。しかし今回宿泊することにしたのは、私たちを受け入れてくださった「大内結いの会」事務局長のYさんから、「私が一番好きな夕方か、朝の大内を見てください」と言われたためです。
 大会のオプション「旧街道歩き」に参加するため早朝大内に向い、大内から会津若松に行く途中の氷玉峠(ひだまとうげ)までマイクロバスで運んでもらって、峠から大内まで旧道を歩いて下りました。ところどころ石畳が残る山道沿いには石碑などが点在し江戸時代そのもの。イギリスの女性旅行家であるイザベラ・バードが、明治の初めに歩いたのはもう一本西にある峠でしたが、彼女が馬に乗って通った往時を彷彿とさせてくれます。昼食に手打ち蕎麦をいただいてから、地域に元気を取り戻す試みにチャレンジしている4か所の集落を案内してもらい、その後の総会を終えて夜の交流会が始まりました。Yさんの蕎麦屋に40人ほど集りイワナの塩焼き、野草のテンプラ、漬物などの飾らないつまみが嬉しいもてなしでした。酒は南会津の地酒「花泉」の辛口。すっきりしているが深みのある酒で大いに満足です。朝は早めに起きて外に出てみると、観光客が1人もいない旧宿場には朝もやがかかり、まるで時代劇の映画セットのようです。しかし、籠を背負ったおばあさんが畑に向って歩いて行ったり、道端の用水路で野菜を洗っていたりと、セットとは違う生活のにおいがふんだんにしています。ようやく生活の場と美しい大内の家並みを見ることができ、「ああ、大内に泊まってよかった」と心底思った二日酔いの朝でした。
(鐙)

石畳の旧道。石が少ないのは大内の人たちが炭焼き窯に使ってしまったためだそうです

朝もやにけむる大内宿

1円本・大名行列・夏休み

 少しずつだが「ひきこもり」傾向から脱出しつつある。あまりの本の売れなさに、去年暮あたりから本格的に足元(秋田)の書店販促や書き手の掘り起こし、読者層の開拓に取り組んできたのだが、約10ヶ月の悪戦苦闘がようやく実を結んで、わずかながらも光明が見え始めた。それも気分的に大きく左右しているのかもしれない。何年ぶりかで地元湯沢の「大名行列」も見物してきたし、珍しいことに夏休みも1週間とることができた。夏休みといっても事務所のある(安あがり)東京に行って同業者たちと酒を飲んだり、2泊3日で新潟をふらふらしてきただけなのだが、去年は確かにこんな小さな余裕さえなかったもんなあ。時間的余裕ができても散歩と酒と読書しか趣味はないから、この3つで時間をつぶすしかないのだが、この夏は幸いなことに桐野夏生の本と出会い、移動中もほとんど彼女の本を読んで飽くことがなかった。最新刊の『魂萌え!』が心地よくこちらの領域に響いてきたのが始まりで、後は彼女の文庫本を片っぱしからネット書店で購入、1日1冊のペースで読んでいる(現在進行形)。それにしてもネット書店のユーズド(古本)には驚いてしまう。文庫本が1円で売られているのだ。高くても85円くらいで、これにはカラクリがあるのだが、その手口は(って犯罪みたいだけど、ちゃんとした商行為です)後でじっくり紹介する。
(あ)
湯沢市の大名行列と新潟市の街を流れる信濃川

今週の花

 今週の花は、スカシユリ、カーネーション、りんどう、日扇の実、ルスカス。
 ルスカスはフラワーアレンジでは「葉もの」とか「グリーン」と呼ばれる葉っぱだけの花です。丸葉、細葉、笹葉などがありますが、これはたぶん「笹葉ルスカス」。
 「日扇」(または「檜扇」)は「ひおうぎ」と読みます。花屋さんのメモに「日にちがたつと、はじけて黒い実が出てきます」とありました。調べてみるとその実は「ぬばたま」と呼ばれ、古文で習った枕詞「ぬばたまの…」のことなのだそう。意外なところで苦手な古文に再会してドキドキしてしまいました。
(富)

No.257

住まなきゃわからない沖縄(新潮文庫)
仲村清司

 数日前、ボーダーインクという沖縄の出版社の創立15周年記念イベントのシンポジュームに招かれて沖縄に行ってきたのだが、この何度目かの那覇行きでついに「ここだ!」というお気に入りの居酒屋を見つけた。「くーすBARカラカラ」がそれで泡盛はむろん食べ物類もみんなおいしい。2日間この酒場に入り浸ったのだが、ここではじめて沖縄料理の奥の深さや味のポイントがわかったような気になっている。この居酒屋を紹介してくれたのが本書の著者である仲村さんその人。店の経営者の一人が仲村さんの奥さんで、彼女は実はボーダーインクの社員でもある、という複雑な関係である。ま、そんなことはともかく、私のテイストにぴったりはまったこの居酒屋の出現で小生の沖縄行きの頻度がますます高まってくるのは間違いない。おっと本書について触れる紙枚が少なくなってしまったが、仲村さん自身本土からの移住者であり、本書のもともとの(文庫になる前の夏目書房版)タイトルは『爆笑 沖縄移住計画』というものだから、その内容は推して知るべし。楽園と失業率日本一の現実が交錯する沖縄のディープでポップな素顔が見える好著。

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