Vol.266 05年10月15日 週刊あんばい一本勝負 No.262


ICレコーダーが手放せない

 ソニーの手にすっぽりとなじむ丸型のICレコーダーが発売されたのは10年も前になるだろうか。確か値段は3万円近くして、それでも全然高いと思わなかった。「こんなものがあれば欲しいなあ」と思っていた商品だったからだろう。この丸型は自分で4台ほど買い替え、そのほか舎員にも1台ずつ経費で買った覚えがある(けっきょく私以外は誰も使っていない)。

左から古いもの順に
 政治家のインタビューなどで最近は新聞記者の定番になった感のある、ひょろ長いようかん型の機種が出たのは5,6年前で、このときもいの一番に飛びついた。録音時間もPCとの連動性も飛躍的に向上した。が、小生は丸型のほうがいまでも使いやすい。用途は夜の散歩のときの企画アイデアや仕事の要件のメモ、備忘録としての手帳代わりで、取材テープや長時間録音などに使うことがまったくないせいだろう。右から3番目は最新鋭のソニーの機器で値段は1万円を切り、軽くて機能も逆にシンプルになっている。これは小生と同じような目的のメモ用に使う人が多いからだろう。右端だけがビクター製のもので、これはソニーのものを旅先で忘れ、やむなく中古品屋さんで5千円で買い求めた応急措置用で、機種は何でもよかった。鞄や書斎、事務所の机にはかならずICレコーダーが入っている。外出のとき、忘れでもしたら不安でしょうがない。りっぱなICRフリークである。昔は外出中、この機器の前でぼそぼそアイデアを吹き込んでいると「変質者」のような目で見られたものだが、携帯電話の普及で今は誰も振り向かない。おかげで手帳を持ち歩く習慣がなくなった。
(あ)

No.262

『金の卵』転職流浪記(ポプラ社)
大宮知信

 ずっと「集団就職」の本を出したいと思い続けている。私自身、中学の同級生たちが集団就職列車に乗って都会に出ていくのをリアルタイムで見送った世代である。いまも彼らの何人かとは接触をもち、東京や横浜、地元の湯沢で取材を続けている。しかし「金の卵」を主題にしたノンフィクションはむずかしい。経験者が書けば単なる個別記録にとどまるし、学者が書けば数字だけが並ぶ社会派論考で終わり。職安の職員の手記や、受け入れ企業の寮舎監の金の卵の思い出話も読んだが、どれもいまいちピンとくるものはなかった。それがこの本の登場である。版元はいまを盛りの絶好調ポプラ、担当編集者はベテランHさん、書いた人もアマチュアではなく『デカセーギ――逆流する日系ブラジル人』の著者である(この本も出したかったので、ヤラレタッと思った)。おもしろくないわけがない。おまけに著者自身、関東の町から集団就職で東京にやって来た「当事者」なのだから、これ以上の舞台設定はない。仕事そっちのけで読み始めた。前半100ページまでは思ったとおりの本で満足したものの、後半一挙に著者は「金の卵」を卒業しノンフィクションライターとして自立していく話に移行、このへんからつまらなくなってしまった。「金の卵」時代のことだけを微にいり細に入り(仲間たちも取材して)書いてくれたら、この本は後世に残るノンフィクションになったのに、残念!

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