Vol.267 05年10月22日 週刊あんばい一本勝負 No.263


東京で生ハムを

 秋田に生ハムをメーンにしたスペイン料理の店・グランビアがあります。その支店が8月に東京赤坂にオープンしましたが、今週始めに東京出張があったので、これ幸いと顔を出してきました。マスターのKさんに電話をするとオープン前でしたが、早めに店を開けて下さると言うので、しとしとと雨が降る夕方、TBSの近くにある地下のお店に下りて行きました。背の高いカウンターイスに座って店内を見渡すと、天井からは生ハムが100本ほどぶら下がり、壁にはスペインから輸入したタイルが貼られ、なかなか良い雰囲気をかもし出しています。同行者2名と生ハムやピンチョスと呼ぶスペイン風つまみやワインなどを次々と出してもらい堪能しました。ピンチョスはスミイカをイカスミで煮たものや、エビとニンニクをオリーブオイルで煮込んだ小エビのピルピル、ドライトマトのオリーブオイル炒め、スペインのヤギの乳でつくったブルーチーズ、羊のチーズなどなど。
 マスターが近所で開催された赤坂祭に、一度に150人前ほど作れる大鍋で作ったパエリヤを出したら大いに受けたという話しをしたら、同行者がそれを日本橋のお祭でもやってくれないかと言い出し、その場で参加が決定。お客の入りも良いようだし、近所の人たちとはパエリヤをきっかけに仲良くなるなど、東京でのスタートは悪くないようです。グランビアの生ハム工房は秋田にありますので、秋田店、赤坂店、生ハム工房と順調にまわってくれることを願っています。
(鐙)

行ったことはないけれど、白い壁に青いドアがスペインらしい

天井からぶら下げられている生ハム(ハモンセラーノ)

平野恵理子ワールドへようこそ

 作家から本が送られてくることは珍しくないのだが今回ばかりは驚いた。なんと1週間の間に同じ著者の本が、それぞれ違う3社の出版社から3冊送られてきた。著者はイラストレーターやエッセイストとして活躍している平野恵理子さん。彼女は着物、諸国雑貨、料理に映画と守備範囲が広い。何をやってもさまになるうえ本の完成度も高い。

これが平野さんの最新刊3冊
 平野さんは旅に出て、そこで出会ったモノたちと語りながら愛情を込めてイラストにし文章を書く。東京か大阪か、南か北か、といった地域的偏見がないのは、たぶん彼女が静岡生まれということと関係があるのかもしれない。『おいしいおみやげずかん』(KKベストセラーズ)は旅で見つけたうまいものを楽しいエピソードでくるんだ食べ物本。『わたしの和道具帖』(清流出版)は〈懐かしいけど現役だい!〉というサブタイトルがある。昔からあるさりげない身の回りのものにたっぷりの愛情を注いだ道具本。『ハピネス気分で山歩き』(山と渓谷社)は一味違う山の本。オビのコピーがなかなかうまい。「街にはないハッピーが、山にはたくさん転がっているのだよ。ヘッコロ登山歴25年、女子部代表ヒラノエリコのごきげん山行記」これはうまいなあ。もしかして本人が考えたのかな、って思わせるコピーが一番おもしろい。
(あ)

出張が多い今年の秋

 最近は出張の連続で、土日に秋田にいたことがありません。これは8月後半から始まったことですが、福島県での仕事がいくつか重なったことと、街道に関係した行事が多いためです。福島県の仕事とは奥州街道と羽州街道を紹介する冊子やパネルを作ったり、町(昔の宿場)に賑わいを取り戻すための取り組みを調査して、その報告書を作成したりする仕事が中心です。特に10月に入ってからは忙しさが顕著で、2週続けて4〜5日間の連続出張でした。先週を振り返ってみると、木曜日はその冊子の納品と、福島県の内陸部にある小野町で街道をテーマにした講演会。翌日は東京に行ってあちこちで打ち合わせ。土曜日は福島県に戻って桑折という町で街道のフォーラム。日曜日は取材や学生アルバイトを使ってのアンケート調査など。さらに月曜日はまた東京に行き、講演会を依頼する高名な作曲家を訪ねての打ち合わせと、国交省に行っての話し合い、という具合でした。普段は車で移動するのがほとんどですが、今回は新幹線や在来線を乗り継いでの移動がほとんど。体は楽ですが、その分、時間の制約も多く意外と気を使います。
 今年は夏から休みが取れなかったので、趣味のシーカヤックに男鹿半島と、三陸海岸での2度しか乗れなかったのが一番の悔やみです。この調子では今年はもう乗る機会もなさそうなので、シーカヤックを小屋に仕舞いたいのですが、その時間もありません。とは言っても、忙しいとはいえ好きでやっている仕事だし、いろいろな人と会うのも楽しいし、夜、旅先で酒を酌み交わすのも嫌いではないし。というわけで忙しいのに、ストレスは意外とありません。これで本がどんどん売れ、売り上げが伸びれば申し分ないのですが。こんな風に過ぎてゆく今年の秋でした。
(鐙)

今回作成した『奥州・羽州街道紀行』。福島県北部の両街道を紹介する冊子

福島県桑折町で開催した街道フォーラムのパネル展

今週の花

 今週の花は、カーネーション、スプレー菊、かすみ草、デルフィニウムのベラドンナ。この「ベラドンナ」は一重咲きのこと。 デルフィニウムの由来はギリシャ語の「イルカ=デルフィ(delphis)」。つぼみの形がイルカに似ていることからきているそうです。他にもギリシャ神話のアポロンの町デルフォイにちなむという説もありました。
 日本では「大飛燕草(おおひえんそう)」と言います。ギリシャ人はイルカ、日本人はツバメに見えたのでしょう。この花は一日の疲れをとる作用があるので、ベットルームに飾ると安眠できるそうです。
(富)

No.263

業界の濃い人(角川文庫)
いしかわじゅん

 トーハンの「新刊ニュース」に連載されていたもの。人気作家や漫画家、タレントに評論家などが俎上に上げられ、独特のひねりのある批評眼で斬りまくる。特にのっけから登場する山田詠美と再三顔を出す北方謙三の項は「スカッ」とするほど切れ味がいい。著者は最近よくテレビのコメンテーターで見かけるのだが、見ていて一番安心できる「危険な発言者」で、嫌いではない。マンガを見ないので漫画家としての力量などは知らないが、「身体を張っている」本なのので面白くないわけがない。この文庫本が特別なのは「オマケ」がついていることだ。「編集会議」に書かれた「校歌でゆんゆん宗左近」という文章が連載ものとは別に巻末に追加されていて、この文章が抱腹絶倒。ベッドがきしむほど笑い転げた、という経験も久しぶりだ。インターネットで宗左近が作詞した校歌をネットサーフィンして、その校歌の荒唐無稽な文章をイジる話なのだが、これが無類におもしろい。極上のエッセイであり、ギャグマンガである。この一文を読むためにだけお金を払っても惜しくないほどだ。さらにこの文庫の解説は、斬られた本人である北方謙三が「お返しの解説」を書いているのも見どころだ。さすが小説家だけあって、著者に負けないジャブやカウンターを繰り出しているのだが、こればっかしは先に言ったほう勝ち。

このページの初めに戻る↑


backnumber
●vol.263 9月24日号  ●vol.264 10月1日号  ●vol.265 10月8日号  ●vol.266 10月15日号 
上記以前の号はアドレス欄のURLの数字部分を直接ご変更下さい。

Topへ