Vol.271 05年11月19日 週刊あんばい一本勝負 No.267


かわいらしい道標発見

 先週の土曜日、人に会う用事があって福島県いわき市まで行ってきました。ちょうど前日、仙台、桑折、福島と打ち合わせがあったので、そのまま足を延ばしたのですが、いい機会だったので、まだ通ったことがなかった御斎所街道をたどって行くことにしました。この街道は奥州街道沿いの宿場だった須賀川から分かれ石川、古殿、いわきと続くもので、途中から鮫川渓谷沿いを行く難所が続く道だったようです。奥州街道がある内陸部(中通り)と、太平洋に沿っていた浜街道(浜通り)をつないでいて、海岸からは塩や生魚、干し魚、乾物類、内陸部からは米やたばこなどを運んでいました。江戸時代ここを通った幕府巡見使の古川古松軒は『東遊雑記』に、佐賀藩士の牟田文之助は諸国剣術修行の旅日記『諸国廻歴日録』に、この道を歩くことの難渋さを書いています。
 この日は郡山に住むKさんが同行してくれることになりましたが、街道沿線にあるさまざまな史跡を見る時間は無いので、道標探しだけをすることにしました。道標とは昔の道しるべで、形を整えた石碑や手を加えない自然石に、「右 ○○○ 左 ○○○」などと彫り、道行く人に行き先を教えるものです。街道前半の須賀川〜石川間は後日に譲ることにして、今回は石川〜いわき間に集中。地図を見ることになれているKさんが、街道の調査報告書とマップを手にして、「はい、次を右。そこの先を左」という風に、助手席から的確に指示を出してくれます。昔は街道筋にあった石碑も、今ではほとんどが道路改良工事の際に脇に寄せられたり、一箇所に集められたりして元の場所にそのままあるケースは稀です。そんな状況で探し出すのは簡単ではないため、見つけたときの喜び、さらに彫られた文字を何とか読み解き、地図で方角を確認できたときの嬉しさはひとしおです。御斎所街道沿いには15基の道標が確認されていますが、今回見つけたのはそのうちの4基。いわき市に入る時間が迫ってきたため中断しましたが、残りは今後の楽しみに取っておきましょう。
(鐙)
歯ブラシで土や苔をかき落としたら、方角を示すかわいい手の彫り模様と石の正面に「たかぬき(竹貫) い己き平(いわき平) ひら可た(平潟)」、「い志川(石川) 志ら川(白川) す可川(須賀川)」、石の右側に「た奈くら(棚倉) 者なハ(塙) い者らき(茨城)」とありました。当て字の多い道標ですね

毎日DVD映画を観ながら・・・

 ほとんどどこにも出かけず事務所で1週間過ごしてしまった。出版パーティや出張、来客の予定もあったのだが、何となく不精を決め込み事務所にい続け、年内にやらなければならない仕事に追われているうち、1週間はまたたくまに過ぎてしまう。夜の散歩も今週は雨のため中止になることが多く、アマゾンのユーズドで買ったウディ・アレンの中古DVDを深夜の事務所の2階で毎日1本ずつ観てやり過ごした。ウディ・アレンの映画はほとんどすべてを観ているのだが、アマゾンでこうもたやすく(1000円前後の値段で)手に入ると、うれしくなってドンドン買ってしまう。ベット・ミドラーの『結婚記念日』なんて何回観たかわからない好きな映画だが、これも新品が1500円以下で買えるようになった。映画館で見たとき、自宅の小さなテレビで見たとき、42インチの大型テレビで見たとき、アレンの映画の印象はまったく違う。これには自分でも驚のだが、いい作品、好きな作品というのは観るたびに新しい発見があり見飽きないもののようだ。新作DVDが出たばかりの『さよなら、さよならハリウッド』もおもしろかった。
 それにしても映画を観たかったら、本同様アマゾン頼み、というのもしゃくだなあ。便利で安くて早いのだから他はどこも太刀打ちできないのだから、しょうがない。そのうち本やDVDだけでなく家電製品から贈り物、薬品からお酒まで、いながらにしてアマゾン1本で用が足りる、という時代になるのだろう。田舎に住む出不精には〈ばら色の未来〉に思えるときもあるが、なんとなく怖さのほうが先にたつ、初老の秋の夕暮れである。それにしても1円で買える文庫本があたりまえで、それでも利益が出るビジネスを、数年前に予想した人がいるだろうか。いやはやすごい時代になったものだ。
(あ)

買い集めたウディ・アレンの映画DVD

No.267

しみったれ家族(ミリオン出版)
き人研究学会

 毎晩散歩をする国道沿いにはファミレスやファースフード店、大手デスカウントショップが乱立している。秋田市のその手の店の半分はここに集中しているのではないか、とおもえるほど。夜の9時前後もこの手の店は満杯で、店にいるのは若者ばかり、最近は家族連れが多い。この本を読んで得心がいったのだが、その連中こそ「平成貧乏人」といわれるものの正体だったのだ。この本を書店で手に取ったとき、よくあるブログ系のゴミを集めただけの本かもしれない、という危惧はあったが、読み出すと杞憂だった。のっけからこの貧困なる精神的の持ち主たちの誕生を歴史分析している記述の確かさにひと安心、あとはすべるように読み進むことができた。新世紀の平成大不況にとつぜん登場した新人類である「しみったれ」。その定義から誕生秘話、分類、食生活、服装風俗にいたるまで克明にレポートされている。傑作である。うまく取材や言及できないところは小説で補うという、サービスのよさだ。とにかく記述(内容)にオフザケがないのがいい。ネット上で面白いものでも本になるといまひとつ精彩に欠く、というケースは多々ある。ようするに読後感が荒いのが常なのだ。この本はその逆、面白く読み終わったのに、読後に真剣に考えさせられる「裏」を持っているのだ。

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