Vol.276 05年12月24日 | ![]() |
六十里越街道 @ | |
山形県は“これからは農業と観光で生きる”と10数年前に決意したそうですが、確かに果物や米は山形の顔だし、ましてや観光にかける意気込みはただならないものがあり、小学校から副読本を使った観光授業があるそうです。山形ではどこの観光地に行っても気持ち良く楽しめますし、また来たいという気を起こさせるサービスのつぼも心得ています。山形県民の相当数が、観光や特産品開発のことを常に考えていて、ちょっとした冗談話やアイデアを当たり前のように実現させる、ということがごく普通にあります。山形県民はなぜ観光サービス精神が旺盛なんだろうか、と時々話題になりますが、私は出羽三山講にそのルーツがあると思っています。三山信仰の講は江戸時代以前から東日本全域に広がっていて、大祭だった丑年(うしどし)の享保18年(1732)には、年間15万7千人が三山に参ったという記録が残っています。15万人以上が参拝したということは、その人数が各地から出羽三山目指して街道を歩き、途中の旅籠や宿坊(神社の近くにある講専門の旅館)に泊まったことになります。宿坊では、また次回も私どものところを利用してくださいと、出来る限りのサービスをし、春になると今年もまた来て泊ってくださいと、仙台、福島や北陸方面の三山講に営業活動に行ったそうです。そのリピーターになってもらうための“もてなしの心”が、山形県民の体にDNAのように浸透したのではないでしょうか。 三山信仰の参拝者が一番多く利用した街道が「六十里越街道」です。山形市で羽州街道から別れ、出羽三山の山麓を通って鶴岡市まで行っていた街道で、核心部が西川町と旧朝日村になります。この2町村の人たちが六十里越街道を保存し、これからの観光振興に役立てようと活動していますが、その人たちとの意見交換会があり朝日村を訪ねてきました。 (鐙) | |
六十里越街道が通る田麦俣の多層民家 | 田麦俣の七ツ滝 |
六十里越街道 A | |
人が住んでいる場所としては世界一雪が積もるといわれているのがこの辺り。通常で5メートル、多い年は7〜8メートルの積雪になる所です。そんな朝日村の山中を訪れたのはちょうど大雪が降り始めた先週の土曜日で、宿泊先の湯殿山ホテルに着いた時、積雪はすでに2メートル。役場が用意してくれたマイクロバスで、本道寺の口之宮湯殿山神社や、田麦俣の多層民家、注連寺などを見学してから湯殿山ホテルに戻り、20人ほどで六十里越街道に関する意見交換会を行いました。山形県では出羽三山を中心に、六十里越街道、慈恩寺、山寺の宗教山域を世界遺産にしようと懸命です。いまや世界遺産こそ最新鋭の観光極致とも言えますが、その日集ったメンバーは観光目的だけで世界遺産を目指しているわけではありません。純粋に六十里越街道を愛し、調査、整備保存して次代につなげようとしている「アルゴディア研究会」の人たちです。アルゴディアとは山形弁の“歩ごう(歩こう)”とアルカディア(牧歌的な楽園)を併せた造語だそうです。六十里越街道は歴史や宗教的価値、自然の豊かさなど一級の存在感を持った街道で、数年後には東北はおろか、国内有数の魅力的な街道として大化けすると私は見ています。意見交換会後の懇親会でも持ち寄った地酒を飲みながら、この街道をどのようにしようかという話し合いが熱く続きました。お膳には地元の料理が並んでいますが、メーンデッシュは熊肉の煮込みです。先週食べた熊肉ラーメン、やはりこのホテルで1ヶ月前に食べた熊鍋と、私はここのところ“熊肉”づいているようです。朝起きてみるとまだ雪は降り続いていて、車の屋根には新雪が70センチくらい積もっていました。このホテルでは「雪やこんこん 降れ降れコース」というのをやっていて、1晩のうちに雪が10センチ積もるごとに千円割引としています。これで行くと我々は7千円の割引となりますが、残念ながら幹事さんはこの割引コースを頼んでいませんでした。帰りがけにホテルの人から「去年は8メートル以上積もったけど、今年は雪が多そうだから10メートルくらい積もるかな。今度は大雪を見に来てください」と言われ、あきれながら湯殿山を後にしました。 (鐙) | |
本道寺の口之宮湯殿山神社の仁王像。明治元年の廃仏毀釈で手放され、その後仙台ホテルに売り渡されていたのが、今年の10月、130年ぶりに戻ったそうです | とろとろになるまで煮込まれた熊肉 |
雪国の車の必需品 | |
駐車場から車を出すだけで大騒動しなければならない季節になりました。クリスマスを88年ぶりの大雪の中で迎えました。例年より早く、大寒波のせいで雪との格闘の日々が始まっています。雪かきは「いい運動になる」と割り切れば、それなりに楽しいものでエアロビと似たような爽快感もあります。ところが今年は、事務所前の田んぼがアパートで埋まったため、雪寄せした雪を捨てる場所がありません。雪を捨てる場所を新たに確保しなければならなくなったのです。そんな場所は住宅密集地ありませんから、このぶんでは雪運搬専門業者を頼むしか方法はないかもしれません。 自動車の運転も悩みのタネです。タイヤが雪に埋まり出られなくなるトラブルは、経験したことのある人でないとわからない「恐怖」です。交通量の多いところでスリップすると大渋滞になり、他の車の迷惑になり、脱出には数人の人の手を煩わせることになります。この他人の手を借りる、という行為が心苦しいのです。他人の車が埋まってスリップしている横を知らん振りして通り過ぎた経験が何度かあるので、自分のときだけ「助けてください」と頼むのは勇気が要ります。1日に同じ場所で3回出られなくなった経験もあります。車は4WDでもないし、タイヤもかなり磨り減っている中古です。いままでは何とかごまかしてこれましたが今年の大雪は観念しなければならないようです。義母やカミさんのアッシー役もあり、今冬からトランクに「脱出機」を積み込むことにしました。これはゴム製ですがかなりの重量があります。本来は鉄製ですが、タイヤの下に敷いて脱出します。4WDに乗っている人は不要なので、その人から借り受けたものです。東京でなんの意味もなく4WDなんか乗ってる人を見ると「バ〜カ」とつぶやきながら雪かきに精出す日々です。 (あ) | |
これが噂の脱出機。本当の名前は知らない | これが88年ぶりの秋田市の雪 |
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