Vol.277 05年12月31日 週刊あんばい一本勝負 No.273


明けまして、おめでとうございます

 明けましておめでとうございます。旧年中はありがとうございました
 今年もあいかわらずのごひいき、よろしくお願い申し上げます。
 もう10年以上も年賀状は欠礼しております。毎年いただくばかりで、お礼もできず心苦しいのですが、一度決めたことですので、お許しください。
 さて、昨年度はここ数十年では一番本を多く出した年になりました。いろんな意味での危機感から、後先考えずに本を出しまくった、というのが真相です。
 今年は少し冷静に、5年後の無明舎出版を念頭においた本作りや経営計画をしたいものだと思っています。
 陳腐な言い方ですが「こんな出版不況だからこそチャンスがある」というスタンスに変わりはありません。同じメンバーで高齢化していくばかりの、若者にはこびない「ロートル&ローカル出版社」ですが、日ごろの健康管理よろしく、体力はまだまだ大丈夫です。今年もヨタヨタながら大地にしっかり足をつけて、つんのめるように前にすすむつもりでいます。
 暮からの大雪はまだ続いています。車庫から車を出せず、出てもわだちになった路上でスリップする始末で、除雪技術の未熟な秋田市には抗議の電話がなり続いているそうです。さすが雪国・湯沢市生まれの筆者も、この雪と除雪技術の未熟さには驚きましたが、こんな大雪をほとんど経験したことがない(88年ぶりだそうです)海沿いの街ですのでやむをえないのかもしれません。
 それにしても毎日、雪寄せが仕事になりましたが、寄せた雪を捨てるところがないのが悩みです。なんとなく大掃除しないで迎えた元旦のような気分でしたが、大晦日の31日、2台のブルがさっそうと登場し、きれいに雪をかっさらってくれました。ブルのオペレーターが神々しく見えてしまうほど感動してしまいました。
 そんなわけで除雪も終わり、清々しい気分で新年を迎えることができました。筆者の家では子どもたちが誰も帰ってこず、私たち夫婦と義母の3人だけのお正月です。暮の30日には早々と実家の母に会ってきて、かわいい甥や姪っ子にお年玉も上げてきました。
 これで例年通り、たぶんどこにも出かけず、カミさんの機嫌を損ねないように家事を手伝い、それ以外は事務所でやり残した仕事をし、夜は本を読んでいるだけの静かな正月です。これがストレスをためない唯一のリラクゼーションです。今年も、懲りずにお付き合いのほど、重ねてお願い申し上げます。
2006年 元旦
無明舎出版
代表取締役 安倍 甲

昨年はお世話になりました

 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
 12月としては記憶にない(88年ぶりだそうです)大雪のまま、お正月を迎えました。大晦日の昨日は、朝から軒先の雪を落としたり、家の周りの雪を片付けたりしているうちに暗くなってしまいました。明けて元旦の今日は、青空が時々顔を出す穏やかな天気です。
 昨年の後半は出張が多く、東北中を走り回っていました。1年前まで出版以外ではほとんど付き合いがなかった“街道”という存在が大きく現れ、さまざまな場に顔を出しました。そのため仕事でもプライベートでも人間関係が大きく広がり、大変貴重な経験が出来ました。仕事も今までやったことがないタイプのものが多かったため、良い経験を積んだ、という意識が残っています。ここ1年で「羽州街道交流会」「とうほく街道会議」「ふくしまけん街道交流会」と、三つの街道グループをつくったり、その立ち上がりを手伝ったりし、さらにNPOで「奥州街道協議会」(仮称)をつくるための準備も始めました。また、江戸時代の紀行家・菅江真澄を秋田の観光資源として活用するための仕事もさまざまあり、充実した年でした。今年はその方面の仕事や付き合いがさらに多くなり、より忙しい一年になりそうです。今年の東北は“街道”の当たり年でしたが、その勢いは今年も継続しそうで、私にとって“街道”は“北前船”にならぶ存在としてクローズアップされてきています。
 今年のお正月は仕事漬けです。企画書づくり、原稿書き、報告書作成などいくらやっても終らないほど作業はあります。会社は4日まで休みなのでその間に何本終らせることが出来るか、より効率良く進むよう作戦を練っているところです。6日にはまた盛岡に行かなければなりませんが、これが今年の出張始まりです。いい企画を考え、やりたい仕事のコンペを取り、売れる本をつくる、これが理想ですが、自らの力をスキルアップしないと実現しません。何とか満足の行く年になるよう、今年も走り続けます。
(鐙)

No.273

悪役レスラーは笑う(岩波新書)
森達也

 サブタイトルは〈「卑劣なジャップ」グレート東郷〉。小生ら団塊の世代にはおなじみの悪役プロレスラーの生涯を追うノンフィクションだが、意外なことに熱狂的なプロレスファンである著者はリアル・タイムでは東郷を観ていない。ルポは『下山事件』と同じく事件そのものより取材プロセスをレポートするいつもの手法の同時代ルポ。過去の人を描きあげるには「いま」を取り上げるのがもっともリアルであることを知り抜いている映像作家である著者の真骨頂といってもいい。取材プロセスがそのまま作品になっているので、あらすじをここに書くのはタブーだが、最終章の大きな「山」であるグレート草津のインタビューまで、だれることなく読者をテンポよく引き込んでいく。その力量はもうすっかり活字ノンフィクション世界でもトップランナーを走る自信さえうかがえ、ヒットメーカーの風格さえ漂う。力道山、大山倍達、はては和田アキ子まで「在日」がキーワードになる内容なのだが、そこにとどまらない視点が本を成立させている。グレート東郷の取材のためにグレート草津に会うため新幹線に乗るとグレート小鹿がいた、という「偶然」も披露されているが、ホント、こういうことってあるんだよね。レベルの高い衝撃的なNHKドキュメンタリーを見たような読後感に浸れる。サイドストーリーとしての「日本プロレス興亡小史」としても読めるすぐれたノンフィクションである。

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