Vol.278 06年1月6日 週刊あんばい一本勝負 No.274


白魔との闘いが続いています

 新しい年の幕開けは「雪」の話題一本になってしまいました。年が明け3が日は穏やかな日々。大雪と縁のない秋田市の冬に慣れてしまい「もう大丈夫だな」と気持ちが緩んでいました。5日の仕事始め、昼近くになって誰も出舎してこないあたりから、これはえらいことになる、という危機感が芽生えました。年末に実家のある湯沢市に寄ったときは、そのきれいな除雪道に「さすが雪国は違うなあ」と他人事のように感心していたのですが、いざ自分の問題になると除雪ブルの技術が地域によってこうも違うのか、愕然とし、怒りがこみ上げてきました。除雪ブルが来ると田んぼの造成地に建っている事務所はグラグラ揺れます。去年までは雪が降ってもブルは来ないで欲しいとすら思っていましたが、いまは一日千秋の思いで除雪のヘタなブルに横恋慕しています。雪かきは日課ですが、それが雪下ろし、雪掘り、雪上げへと替わっていく予感におびえています。事務所の2階からみえる向かいの家の屋根には2メートルをこす雪が積もっています。屋根に積もった雪がこれからの緊急課題になりそうです。子供のころ屋根の雪下ろしは子供の定番仕事でしたが、秋田市で屋根の雪下ろしをするのは生まれて初めての経験になります。ここでかなりのけが人が出るのは必至です。さらに屋根の雪下ろしをしたとしても雪を捨てるところがありません。秋田市ではそうした事態を想定して都市設計をしていないからです。各家々が一斉に雪下ろしをはじめたとき大豪雪騒動はピークを向かえることになるでしょう。予想もつかないトラブルが続出するはずです。それにしても、毎日仕事だけに打ち込んで右往左往していることが、どれだけ幸福で贅沢なことか、それを実感する日々です。
(あ)
事務所の2階からみた近所の雪景色

新庄駅前

  車で秋田市と山形市を往復するには三つのコースがあります。@秋田自動車道〜国道13号〜山形中央道で行くコース、A日本海側の国道7号〜山形自動車道で行くコース、B秋田自動車道〜東北自動車道〜山形自動車道で行くオール高速道コースで、走行時間は3時間から3時間半とそんなに変わりはありません。一番の安上がりはAですが、国道7号がほとんど追い越し禁止だし、車も多いためかなり疲れます。一番楽なのはBですが、高速料金が高いのでまず使わないため、@がオーソドックコースでしょう。最近は山形中央道が上山から新庄の手前の東根まで延びましたし、真室川町の主寝坂トンネルも共用されたのでかなり楽になりました。先日、この@コースを使って山形から秋田に戻る途中、新庄市立図書館に立ち寄りましたが、ついでに新庄駅前周辺をちょっと歩いてみました。以前は新庄市内に時々立ち寄ったのですが、最近は夜間に通ることが多いためほとんど素通りしていました。
 新庄市内は1メートル以上の積雪でしたが、もともと豪雪地帯の町のためか除雪も上手で、そんなに渋滞はしていません。駅前の一角には「駅前市場」があります。店舗の数は10軒程度と大きくはありませんが、このあたりの食習慣を垣間見ることが出来ます。店頭には野菜、果物、漬物などが並んでいますが、目を引くのは豆類の多さです。ほとんどの店頭には数種類の大豆を初め、小豆、花豆、インゲン、ササゲなどのおなじみから、レンズ豆、ひよこ豆などの珍しいものまで、10〜20種類並んでいて、この地方で豆づくりが盛んなことを教えてくれます。

店内には納豆に使用している豆も展示されている

さまざまな種類の納豆
 そういえば江戸時代、最上川の舟運で運ばれたもののなかに、米や紅花と並んで大豆も多かったことを思い出しました。市場の近くには「丸亀八百清商店」という納豆専門店があります。納豆をつくり始めてから80年以上になる老舗で、昭和の初期から使っている「石室」で発酵させる納豆はかなりの味で、同じ新庄市内にある「最上納豆」とともに、東北を代表する極上納豆の生産地を支えています。八百清さんでは山形新幹線が新庄駅まで延伸したのを機に納豆の種類を増やし、今では13〜14種類の納豆と「納豆汁」をつくっています。また納豆にあわせて豆の種類を変えるため、使用する豆の種類は10種類を越えているそうです。このことからも新庄周辺では豆づくりが盛んなことを教えてくれます。私は食べ比べてみようと思い店頭にあった全種類を買いました。道路を挟んだ向いには「特急食堂」といういかにも駅前らしい名前の食堂があり、最近、新庄・最上地方の人気メニューになりつつある「とりもつラーメン」の幟が立っていました。小腹がすいていたので暖簾をくぐりその「とりもつラーメン」を注文。あっさり味の醤油ラーメンで、とりもつの出汁が良く出ていていました。新庄駅舎内には映画館や最上地方の自然を教えてくれるミニ自然博物館などもあり、こじんまりした駅前周辺ですが、半日は充分楽しませてくれます。
(鐙)

駅から歩いて1分の急行食堂

とりもつラーメン。この地方では30〜40年ほど前から食べられていたそうだ

No.274

東京タワー(扶桑社)
リリー・フランキー

 ブラウン管にしばしば登場し、そっちの世界(テレビ)に強いせいなのか、それとも版元の営業販促がすごいのか、タレントやTV番組のパブリシティが活発で、その宣伝効果は活字の書評など問題にならない。だからベストセラーになっているのではないだろうが、こんなとき活字人間は逆に要警戒モードに入り、その本を読まない、という人も小生の周りには多い。小生はけっこうミーハーなので「そんな話題になっているなら」とまずは著者の既刊文庫本を数冊読み、下見とウオーミングアップを済ませてから、おもむろにアマゾンのユーズド(1100円)で本を買った。ベストセラーになる本は週間後にはユーズドに出る。そんな流れで「感動の嵐」大絶賛のこの小説を読みはじめたのだが、そうかなあ、これで泣くのかなあ、というのが正直な印象。たとえばあさのあつこ著「バッテリー」はたしかに泣いてしまうが、しばらく経つと「何であんな劇画チックな絵空事に泣いたんだろう」とけっこう自己嫌悪に陥る。本書はおもしろいし読み応えもあるが、オイオイ泣く本なのだろうか。泣ける本がかならずしもいい本ではないし、泣かなくても心に残る本はたくさんある。この本がもし文春や新潮から出ていれば、たぶん、ずいぶん違った読者のリアクションがあったのではないだろうか。文芸もののプロの編集者の手にかかると「感動」の質が見事にグレードアップする。何十回も書き直しさせられるけど。

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