Vol.288 06年3月18日 週刊あんばい一本勝負 No.284


東京タワーと佐竹のふるさと

 3月は公官庁の年度末、そうした関係の仕事もしているわが舎も何かとあわただしい。さらに今年は編集長の検査入院や、製作を請け負っている季刊雑誌の締め切りが重なり、個人的にも何やかやと問題が乱れ飛び、落ち着かない日々だ。出張に出かけてもとんぼ返りがほとんどで、2日間留守にすると事務所に難問が山積みになってしまう。まあ3月はこんなもん、とはなっからあきらめてはいるのだが、得がたい体験もあった。東京出張の合間に念願だった東京タワーに上ったのだ。機会があったら、と虎視眈々狙っていたのだが、だいたい港区というのはほとんど縁がない。そのためこれまで東京タワーの近くに行く機会すらなかったのだが、近くで用事ができたので思い切って上ってみることにしたのである。ただエレベータで上るだけで800円も取られるのに驚いたが、まあこんなもんか。展望台のガラス張りの床から見る地上も足がすくむほどではなかった。日曜日には秋田藩の佐竹家の出身地である茨城県常陸太田市にも出かけた。これもいつか機会があったら、と狙ってたものだ。上野から常磐線でトコトコ常陸太田まで。想像していたよりも小さな町だった。市立図書館で3時間ほど資料を調べて、水戸経由で帰ってきただけだが、何となく胸のつかえがおりた感じ。普段やれそうでやれないことを、よし行ってみようかと決断させるのは「忙しさ」である。そのことに気がついた1週間だった。
(あ)
増上寺から見える東京タワー

常陸太田の駅

今週の花

 今週の花は、アルストロメリア、フリージア、チューリップ、菜の花。
 数年前の海外旅行の際、オランダの空港でチューリップの球根を買ってきたことがあります。珍しくて、見たことのないチューリップの写真がパッケージに使われているものを選んだはずなのに、翌年の春に咲いたのは色も形も普通のチューリップでした。花びらの縁がフリルになっているものや、バラのような八重咲きが咲くのを心待ちにしていたので、普通のチューリップが咲いたのを見て激しく落胆しました。
 その次の春には、芽が出てきませんでした。ネズミかモグラに球根を食べられてしまったからです。結局、オランダのチューリップを見られたのは一度きり。もっとじっくり、あの時のチューリップを見ておけばよかったと思っています。
(富)

No.284

アッコちゃんの時代(新潮社)
林真理子

 当時はホリエモンにも負けない「バブルの帝王」としてマスコミの寵児だった最上興産の早坂太吉がひっそりと亡くなったらしい。そのニュースの横に、その伝説の愛人の生き方を書いた本があることも書き添えられていた。早坂から巨額の金をむしりとったという銀座のマダムの話は知っていたが、六本木の遊び人としても有名だった若いプレーガール(古ッ)も彼の愛人で、彼女を主人公にした小説も複数出ているというのだ。知らなかった。「バブルの時代」を知るにはヘンな社会的考察よりもこうしたひとりのシンボリックな人物を主人公にした物語がわかりやすい。馳星周にも同じようにこの女性が出てくる小説があるそうだが、「バブル時代の伝説の女性」というキャッチフレーズんひかれ、本を手に取った。小説はいささかこの女性のエクスキューズのほうに身を寄せて書かれている嫌いがないではない。そのぶん小説としての完成度は高い。興味深かったのは、この小説でアッコの友人として描かれている若い女性である。この女性も六本木をブイブイ言わせたプレーガールのようだが、これがあの尾崎豊という若者のカリスマ歌手の妻なのである。アッコちゃんは最後に風吹ジュンの元亭主とでき、子どもまで作るのだが、この男の側の「バブル時代」を象徴するようなヤク中毒男とのやりとりも、おもしろい。

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