Vol.29 3月17日号 週刊あんばい一本勝負 No.26


大都市の青空の下で

 東京に7日間ほど滞在した。いつもの出張に比べて2倍以上の長さだが、大都会は毎日が青空で、そのことだけでもずいぶん気持ちがリフレッシュした。雪国で半世紀も生きていると冬の抜けるような青空というのは片手で数えるほどしかお目にかかれない。青空というだけで気分がいい、という気持ちを太平洋側の方々はなかなか理解してくれない。滞在は「秋田のことば」のCDRM化の打ち合わせや、義妹の1周忌などもあったのだが、今月から八王子で一人暮らしをはじめることになった息子の「自立」準備を整えてやることにかなりの時間をとられてしまった。八王子というのは東京都下なのに実に不便なところで家電や生活用品、デパートといった大型店が身近にひょいとあるわけではない。秋田市のような地方の中堅都市の便利さに比べると格段に不便で、電車1本でもっと大きな都市へ移動できるから生活衣住食の空間が完結していないせいだろう。そんなハンディはあるが雪のない都市でこの時期に青空を見ながら引っ越ししたりするのは、けっこう浮き立つような気分である。秋冬は東京で仕事をし、春夏は秋田に帰ってくるという生活サイクルもいいだろうなあ。
(あ)

映画「EUREKA」は面白い

 東京滞在中、ぽっかり1日休みの日ができたので新宿テアトルで話題の映画「ユリイカ」をみた。すぐそばの映画館では北野武の「ブラザー」がかかっていて、もし「ユリイカ」が面白くなければこっちに鞍替えしようと決めていた。というのも「ユリイカ」はなんと上映時間が4時間近い大作で、これが面白くなければ目も当てられない。そこで保険をかけておいたのだが、あにはからんや、これぞ映画というぐらい満足感を味わった。4時間があっと言うまで一度もあくびをかみ殺したり気を抜くような遊びがなく、見終わっても疲れの残らない不思議な感動的秀作である。北野武の映画も作品によってかなりの好き嫌いもあるがなかなかいいものが多い。しかし、この青山真治監督の作品を見ると「武もまあまあだな」と言った感じになってしまう。たいして映画を見ているわけではないが、私には青山真治というのは衝撃的ですごい才能がきらめいているように思えた。これなら世界に通用するのではないだろうか。
(あ)

映画「EUREKA」より

事務所の明度が増した!

 何年ぶりかでシルバー人材センターのおばちゃん2名を頼み、事務所と自宅のガラスみがきをしてもらった。最初は外から見える事務所の壁面のガラスがあまりに汚れているために頼んだのだが、ベテランのおばさんはものの数時間で事務所の窓ガラスすべてをかたずけ、あまった時間で隣の自宅の方もきっちりと磨いていってくれたのである。ガラスみがきなんて地味な仕事は(そこに住んでいる)本人だけが気持ちよくなるだけと思っていたが、いやいやそんなものではない。汚れが落ちた窓から見える景色は透明感がまし景色がきれいになったように感じるし、それをみるこちらも気分がいい、ということを発見した。カミさんも過剰に反応していた。かえってくるなり「なに、このきれいさ!」と一発で部屋の明度の違いに気づいてくれた。やった甲斐がありますね、自分が磨いたわけじゃないけど。
(あ)

荒れ模様の空が恨めしい

 2月からなのか1月からなのか、よく覚えていないが、雪、くもり、雨が連日のように続いている。青空は10日に1日の割という印象で、仕事に大変な支障が出て困っている。それは撮影が思うように進まないことで、それは4月に刊行する何冊かの本の表紙や本文の重要な写真だったり、来年のための撮影だったりで、毎日の天気予報に耳をそばだてている。その肝心の天気予報がここのところほとんど当たらないのがまたしゃくにさわる。昨日もカメラマンの小阪さんとモデルの女性を連れ、秋田駅前での撮影があった。天気予報は朝から晴れだったが、半日待っても真っ黒な空で撮影は中止。今日も広報誌の撮影で秋田市外にモデルを2人連れて行ったが、一日中雨で来週再撮影となった。こんな悪天候の年は記憶にないと、小阪さんと二人で空を見上げながら恨み言を言っている。
 でもいくら雪が多く天気が悪い毎日も、4月になれば一転して好転の日々が多くなり、雪もあっという間に消えるはず。3月はあともう何日で終わると指折り数え、4月からの大掛かりな連続取材の準備を始めている。
(鐙)

ドリナビの取材

 先日、あきたタウン情報「ドリナビ」の取材に行ってきました。今回の舞台は岩城町で、秋田市の南隣りにある日本海沿岸の城下町です。
 午前中は天鷺村内で、ぜんまい織りの実演や亀田歴史館で撮影しました。ぜんまい織りとは、ぜんまいの綿を横糸に使って織るという珍しいもので、素朴な風合いに温かみを感じました。
 お昼は道の駅いわきのレストランで海を眺めながらの撮影です。この日は雨で、波が荒れていたのが残念でしたが、晴れた日や夕陽の時間帯はきっと気持ちいいだろうと思える店内でした。今度機会があったら晴れた日に行きたいと思います。
 岩城町の特産品にはプラム製品が多くあり、道の駅の横にある売店のプラムソフトクリームは、薄いピンク色で爽やかな香りとさっぱりした甘さで、この日一番のお気に入りとなりました。
(富)

道の駅のレストランで撮影中。

No.26

麻野涼(文藝春秋)
天皇の船

 ブラジル移民たちの間にほんの20数年前まで「勝ち組」「負け組」抗争というのがあったのをご存じだろうか。終戦後、日本の情報が乏しいブラジル国内で「日本は戦争に負けていない」という日本人と「いや日本は負けた」という日本人が殺しあいをつづけた事件で、実は今も日本人移民社会にはそのしこりが根強くのこっている。日本が戦争に負けていないなどと言うこと自体、いまの日本人には信じられないことだろうが、ことはそう単純ではない。認識派と呼ばれた「負け組」のなかには「勝ち組」の無知につけ込んで莫大な財をなした人間が少なからずいたため、彼らに対する怨念が複雑な抗争地図を形作っているのである。この辺のことは複雑さゆえノンフィクッションではなかなか描けないのだが、著者は小説という形を借りて、これまでだれもなしえなかった抗争の核心へ迫ることに成功している。なるほど小説の強みというのはこれだな、とうなった力作である。

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