Vol.296 06年5月13日 週刊あんばい一本勝負 No.292


昼食は「常連」の食堂で

 最近昼食をいつも決まった定食屋で食べている。一ヶ月同じ店に通い続けるのは初めての経験だ。さぞかしおいしいのだろうと思われるかもしれないが……。もちろんまずいわけではない。決め手は量、とにかく多い。まだ質より量に惹かれてしまう私にはとても魅力的なのだ。近頃はそこの定食を腹いっぱい食べるために朝ごはんをぬいている。お店は私の住いのすぐそばにあり、生まれたときにはもうあったから20年以上続いている食堂だ。ほぼ毎日そのお店の前を通っていたのに、一ヶ月前同じアルバイトのHさんに誘われるまで一回も入ったことがなかった。今ではそこにいくのが日課になり、人生で初めて「常連」の気分を味わっている。他の人たちは忙しくてゆっくり外にお昼を食べにいく時間がないのか、いつも弁当を食べている。そんな姿を見ると、アルバイトの私達だけ外食しているのは気が引けるが、常連の私たちがいかなくなると定食屋のおばちゃんも心配するよね、とわけのわからないことをいって通い続けている。食べ過ぎて、午後仕事をしていると強烈な睡魔が襲ってくることもあるが、初めてできた行きつけの店、これからも通い続けたい。
(森)

今週の花

 今週の花は、ヒマワリ、スプレーバラ、ヒメユリ(姫百合)、アマドコロ(甘野老)。
 アマドコロは笹に似た葉の下にスズランのような花を咲かせます。ただ、同じユリ科の「ナルコユリ(鳴子百合。またはナルコラン)」とよく似ていて区別がつきにくいうえに、アマドコロとナルコユリを混同して売っている花屋もあって、ますます判別が難しいそうです。
 アマドコロとナルコランの区別方法がいくつか紹介されていたので、その1つ「茎に稜線があるものがアマドコロ」を手がかりに検証してみました。茎に触ると、丸ではなく六角形のような感触なので、これはアマドコロで間違いないようです。
(富)

No.292

まほろ駅前多田便利軒(文藝春秋)
三浦しをん

 すっかり「三浦しをん」にはまっている。ここ数ヶ月で5冊ほど既刊本を読んだので、どの作品を取り上げるべきか迷ったが、やはり新境地を開いた最新刊の表題作が妥当なところだろう。とにかく探偵ものもミステリーものも、よほどの評判作か社会性がないと読まないのだが、この作家のものとなれば別だ。職種は探偵ではないものの、手垢にまみれた「難問解決小説」のジャンルであることに変わりはない。しかし、この若手女流作家は期待を裏切らない。探偵ものの枠組みは借りているものの、「便利屋家業」を主人公にしたて、それに恐ろしく個性的で不可解なキャラクターの助手(行天)をかませ、最強コンビを作り上げてしまったのだ。これはたぶんシリーズものになるのだろうが、そうか「便利屋家業」という身近な手があったか。これならネタも尽きることがないし(日常的だから)、作家の豊かな引き出しから、たっぷり宝物を引き出すことができる。うまい舞台を考えたものだ。彼女の真骨頂は『妄想炸裂』に代表されるエッセイにあるとばかり思っていたが、とんでもない。作品を読む限り、奥田英朗と遜色ないし、エッセイも、林真理子の才能とノリに限りなく近い。とにかく数冊で消えていく作家でないのだけは確かだ。これからも新刊から目が離せないなあ。

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