Vol.30 3月24日号 週刊あんばい一本勝負 No.27


蕎麦屋さんの「人間工房」

 秋田市近郊の「一会寮」はちょっと変わった蕎麦屋である。温かい蕎麦はないし、天ぷらや具のようなものがいっさいない。ひたすらせいろを食べるしかないのだが、これがまた抜群にうまい。ここのご主人が定期的に茅葺きの民家でひらいている「人間工房」という有志の集まりで話をさせてもらってきた。囲炉裏端で天然のイワナを魚に酒を飲み語り合うという会なのだが、ランプの光の中でまきストーブの温かさが心地よく、調子に乗って5時間以上もそこで過ごしてしまった。参加者は10数名だったがロケーションがいいため、小生の話よりもっぱらその昔の農家の雰囲気を楽しみにしている常連の方が多いようであった。参加者の中に、これから転職して焼鳥屋を開くという中年のご夫婦がいて、その2人に話題は集中した。うまくて、はやる店って何だろう、ということに関して、そでぞれ一家言持っていてる人たちで侃々諤々の議論になったが、小生も最近の興味は食べることばっかりなので(それも反グルメというか、もうどうでもよくなったのだ)かなり厳しいアドバイスをしてしまった。ごめんなさい。でも久しぶりに楽しい会だったなあ。
(あ)

これぞ本物の炭火焼き

みんな真剣で……

机まわりは荒れ放題

 最近気づいたのだが、小生の机のまわりは荒れ放題である。家の部屋でも机もかなり散らかっているし、2階の社長室に至っては忙しさもあって(他の人が忙しい)、もう2ヶ月近く足を踏み入れていない。ノートパソコン一台で仕事のほとんどが片づくようになって、それ以外のものはとりやすいところに散らばっていた方が仕事しやすいという環境の変化もあるが、どちらかというときれい好きで整理整頓タイプだったので、この変化は何だろうと自分自身が少しとまどっている。「暗記力のいい人や身の回りを整頓する人というのはクリエイティブな能力のない人だ」という人がいたが、そのとおりだとはおもう。思うけれども自分が(整頓を)不得手になったから創造性が増したわけではない、というところが辛い。ただ単に、老いてめんどくさがりになっただけなのだ。
(あ)

外目にはきれいに見えるのだが……

金子義償さんの個展

 聾のハンディキャップを持つ画家の金子さんの個展が3月末日まで秋田市内の「ギャラリーあい」で開催されている。
 金子さんとはもう長い付き合いで、秋田の絵描きにまったく友達のいない(作らない)私には珍しいのだが、事務所には4点も彼の作品が飾ってある。久しぶりの個展なので、前回からこれまでどんな作品を描きためていたのか期待に胸はずませて観にいったが、残念ながら作品の9割は過去の作品だった。友人であるという身びいきを引いても彼の絵は高く評価しているのだが今回の収穫はなかった。金子さんと同じように友人の陶芸家倉田鉄也さんの作品もこまめに観て定期的に買っているのだが、買った年代順に作品を並べると芸術家がいかに苦闘、寄り道、迷いながら前進、進歩しているかが良くわかる。だから長く見ている作家の作品の良し悪しはちゃんと冷静に判断できるようになる。ひとりの作家を長く観つづけるというのも大切なことである。
(あ)

作品の前で金子さん

加藤貞仁さん久々の来舎

 『戊辰戦争とうほく紀行』の著者で千葉県の大原町に住むライター加藤さんが、打ち合わせのため秋田にきました。加藤さんの住む大原町は房総半島の先端近くにあるため非常に暖かく、そのため加藤さんは防寒服の類を持っていない。秋田に来るということで、娘さんの高校時代のオーバーを借りて着てきたのには笑ってしまいました。事前に秋田ももう暖かくなって雪はないと伝えておいたので、さすがに雪靴ははいてきませんでしたが、予想外に暖かい秋田に驚いていました。
 加藤さんは現在制作中の『東北おもしろ博物館』の出張校正や、これから手がける「北前船」の本の打ち合わせに来たのですが、いつもどおり秋田のうまい酒と料理に舌鼓を打って、無事千葉に戻りました。
(鐙)

パソコンを設定する

 今週1週間、新しく購入したパソコンと、故障で修理中のパソコン2台のLANの設定にほとんどかかりきりでした。いろいろとパソコン関連の指導をしてもらっている柏市の安倍知さんの指導を受けて、私は電話で指示されたとおりに作業するだけでしたが、私自身がよくわかっていないため、状況を相手にうまく説明することができず、なかなかスムーズには進みません。プリンタにも接続できないため、しばらくの間、不自由な状態でしたが、今日、やっとプリンタの設定も終了しました。
 今までは、最初から環境が整っている状況でしかパソコンを使用してこなかったので、当たり前と思っていた状態が、実は大変な作業を経て出来ていることに、今更ながら驚いています。
(富)

No.27

荒川洋治(五柳書院)
世間入門

 荒川さんの詩は読んだことがないがエッセイは好きである。どこが面白いかと言われると困ってしまうのだが、するすると読めて心にぐさりと刺さるような言葉を極力使うまいと努力しているけなげさが、なんかいい。絶対にふつうで行くぞ、とふつうに力んでいるところが好きだ。「世界より世間を語りたい」というこの本はその荒川ワールドの集大成のようなものだ。彼の早朝のラジオ番組はかなり人気があるようで(秋田ではやっていないじゃないかな)去年、番組でうちの「ケセン語大辞典」をほめまくってくれたときは全国のリスナーからかなりの反響があった。三万八千円の本なのでほめてもすぐに買えるものではないのだが、「荒川さんの放送を聞いて」買ってくれた人が10人ほどいたのではなかったろうか。これはすごい数字である。この本を読んでいると、彼が勧めるものなら自分も、と思わせるオーラを持っている詩人であることがよくわかる。難しい言葉を使わない詩人というのはかっこいい。

このページの初めに戻る↑


backnumber
●vol.26 2月24日号  ●vol.27 3月3日号  ●vol.28 3月10日号  ●vol.29 3月17日号 

Topへ