Vol.31 3月31日号 週刊あんばい一本勝負 No.28


下野新聞の出版研修生
下野新聞の斎藤晴彦君
 3月の26日から3日間、栃木県の下野新聞の出版部斎藤晴彦さんが研修にきていました。まだ30歳になったばかりで、まじめな熱意を持った若者でした。教えるようなことは何もないのですが、逆に、彼の質問に答えながら、「あっ、そうかこれが無明舎の長所だったのか」とか「この問題は偉そうなこといっちゃたけど、まだ未解決なんだよな」と気づかされること多々あり、自分を鏡のように見つめることができて勉強になりました。大看板を背負った地方紙の出版部と、吹けば飛ぶよな地方の版元は同じ出版といっても何から何まで違うのですが、「一冊の本を世の中に送り出す」という原点にかわりはありません。そのへんのことに焦点をあわせてレクチャーしたのですが、まあ、あとは受け取る側の感性です。新聞と出版は似ているようで実は水と油のように正反対のところも多くあるので、難しい問題もありますが、一日も早く「出版で有名な下野新聞」といわれるようになってください。
(あ)

打上げ・送別・就職祝い
「蜻蛉」の店内で
 共同通信の井上君が徳島に転勤が決まったので送別会を市内の「蜻蛉」という居酒屋でやったのだが、この店は井上君の指定によるもの。年のせいか初めての店に行くのは億劫で腰が重いのだが、この店は若者風の居酒屋にかかわらず料理もうまく店員もしっかりした大人で(最近の若いアルバイト店員でいつも不愉快な思いをしているから)いごこちがよかった。最初は井上君の送別会だけの予定だったが、この日ちょうど下野新聞の斎藤晴彦さんの研修最終日、かつアルバイトの斎藤亮子さんが県立図書館に就職(臨時)を決めた日でもあり、それぞれの打上げ、就職祝いもやってしまうことにした。飲み屋の雰囲気がよかったせいもあるだろうが、若い人たちと一緒に飲んでいるとどうしてもペースが上がってしまい、結局2次会の「グランビア」まで付き合い、翌日は二日酔い。外に飲みに出かけるのは月に1,2回のものだし、二日酔いということになると年に2,3回なのだが、最近このどちらの回数も増えているのが気になる。
(あ)

イルカの肉を食べる
これがイルカのザル肉
 湯沢市の実家に帰ると近所の魚屋さんに「イルカ・ザル入荷」と大書きされた張り紙があった。イルカの肉を湯沢や横手の周辺地域で食するということは知っていたが、実際に飲食店で食べたことはない(ある酒蔵で杜氏の方々が食べるご相伴に預かったことはある)。弟に頼んで連れて行ってもらって食べたのがこの写真。ザルというのは骨付き肉のことで、その形が笊に似ていたためらしい。味噌に生姜、砂糖でこってりと煮付けたザルは、昔から食べなれている人には冬になくてはならない料理らしいが、初めて食べる人にはかなりの抵抗がある。肉質としてはウサギや鯨に近いのだが鍋もなかなかいける(らしい)。実はなぜこの地域の人たちだけがイルカを食べるのか調査中である。面白い資料がいろいろと出てきているので長い文章が書けそうな気がしているのだが、三陸の漁場からイルカが山を越えて運ばれた歴史はなんと享保時代にまでさかのぼるのである。グリンピースは眼をむくかもしれないが人間の食の伝統にはそれなりの理由と意味があるはずである。
(あ)

神田古書街を歩く
アクセスで働く畠中さんと新人の幾志さん
 1月に引き続き神田の神保町、早稲田の古本屋街を資料探しに行ってきました。広範囲に探すため、いつもより長く4日間の日程です。東京はちょうど桜が咲き始めの時期で、両手に多くの本を持って歩く古本屋めぐりにはうってつけの天気で、ダンボール箱2箱の成果がありました。秋田藩主であった佐竹氏に関する資料や、天明・天保の南部藩における飢饉の様子を記録した資料など、なかなか面白いものも見つけました。
 今回まわってみて、「1月に廻ったときとあまり本が動いてないな」という印象が残りました。本が売れないのは新刊だけでなく古本も同じ状況のようです。とにかく古本価格が高すぎます。それが大店といわれる古くからの古書店や、靖国通り面したメインストリートの店に顕著です。家賃が高いためにしょうがないと言っていますが、インターネットで日本各地の古書店の在庫や価格を検索できる時代に、この価格設定がどこまで通用するか考えものです。
 古書店めぐりを終えた夜はホームページの「んだんだ劇場」に『神保町「書肆アクセス」半畳日記』の連載を開始した畠中さんや、以前秋田支局にいた新聞各社の記者達と飲み歩いて、情報交換の毎日でした。
(鐙)

女性パート、驚異の荷さばき
手際よく作業をするパート軍団
 国土交通省秋田工事事務所など関係5機関で組織する「秋田県道路広報連絡会議」が発刊する「ラルート」(季刊誌・20ページ)の制作部数は2万5000冊。この冊数を5000ヶ所にも及ぶ関係団体や事業所、個人などに送付する作業は約10人の女性パート陣プラス舎員一同が丸一日かかる大作業である。
 朝8時半にトラックから「ラルート」を下ろし、事務所2階にあげて発送作業はスタートするのだが、回を重ねるごとに作業は速くなり、今回は午後2時にはあらかた終了してしまった。毎回、作業終了後、2階事務所はホコリや小さなゴミクズで掃除が大変だったが、最近は作業開始前よりもきれいに片づけられて気持ちがいい。
(富)

No.28

出久根達郎(講談社文庫)
逢わばや見ばや

 装丁がいい。南伸坊はいまや日本を代表するブックデザイナーである。実に味のある装丁(装画)で、このカバーだけで本を買ってしまった。もちろん著者も好きな作家の一人である。中卒集団就職の少年が東京は月島の古本屋の小僧になり、月日がたって売れっ子の直木賞作家になるといえば、ものすごいサクセスストーリーができあがってしまうが抑制の利いた著者の文章からはそんなおごりがみじんも感じられない。この自伝小説(エッセイ)を読めば著者はなるべくして文学者になったのであることがよくわかる。昭和30年代の少年時代だけしか書かれていないが「室内」でも同名の連載は続いているらしいから続編が楽しみである。この人の文章には昔の人が使った言い回しがさりげなく現代風に使われている。今は使われなくなった日本語なのだが辞書を引くとちゃんと載っている。「うらら」とか「言い条」とか「鶏肋」といった言葉を覚えた。ありがたい作家である。

このページの初めに戻る↑


backnumber
●vol.27 3月3日号  ●vol.28 3月10日号  ●vol.29 3月17日号  ●vol.30 3月24日号 

Topへ