Vol.318 06年10月14日 週刊あんばい一本勝負 No.314


静かな秋の海辺で

 あまり東京に行かなくなったせいもあるが、県内各地にヒョコヒョコと出かけている。これは車にカーナビとETCをつけたせい。車が苦手だったのは方向音痴が一番の理由で、高速道路の支払いもハイウエイカードの時代はまだしも現金の受け渡しが面倒でしょうがなかった。どちらも解消され、まあ金銭負担は大きくなったが、ラクチンこのうえない。道に迷うことがなくなり、高速を気軽に利用できるようになると、普段行かないようなところにいきたくなる。先日は由利本荘市で仕事があり、そのまえに1時間ほど余裕ができたので(これもカーナビのおかげ)岩城町で海岸線を散歩してから会場に向かうことができた。こんなに海のそばに暮らしているのに、ふだんの生活の中に海がほとんど存在していない、というのもかなり異常なことだなあ、なんてことを思いながら、誰もいない秋の静かな海を満喫した。秋田の海岸線を車で走るたびにギョッとするのは、風力発電のプロペラ。あまりに巨大、近代的、唐突、未来都市風で、自然の景観を壊しているようにも感じられる。まあ慣れればどうってこともないのかもしれないが。午前中に由利本荘市の仕事を終え、午後からは高速で大潟村の先にある県北部の八竜町へ。ここにある県内一の売り上げを誇る農産物直売所ドラゴンフィレッシュを取材。お店の前にある巨大な龍のモニュメントは、昔から7号線の名物で、見ていてあまりいい感じは持っていなかったのだが、いまはこの直売所のシンボルで、その印象はすっかりよく変わってしまった。ここからさらに夕方にかけて男鹿半島にある農家民宿ならぬ漁家民宿を取材する予定だったが、相手先の都合でキャンセル。1日で県内の南から北まで何ヶ所も行き来できるなんて、ちょっぴり夢のよう。20年前なら確実に1泊して2日間の仕事が半日で済むようになったのだからたいしたものだ。
(あ)
まな板持持参で食事する人
一基はまだいいのだが
どこにでもありそなん直売所だが

No.314

ケインとアベル (新潮文庫)
ジェフリー・アーチャー

 上下巻の本を読むのは時間的にかなり余裕のあるときでないと無理だ。たいていはむちゃくちゃ面白いものと相場が決まっているので、仕事より読書を優先してしまう傾向がある。9月初旬の週末、忙しくなる前のちょっとした静けさ(空白)に背中を押され、ネット古書店で「1円+340円(手数料)」で買った本書を読みだしてしまった。冒頭の主人公2人の誕生シーンで、ポーランドの難解な人名が頻出、一度は放り投げそうになったが、そこを通り過ぎると、もうダメ。食事をする時間も惜しくなるほどのめりこんでしまった。わかっていたのに。週末だったので弘前、青森に電車で旅をしたのだが、車中は窓の景色を一度も見なかったし、普通列車の遅さもちっとも気にもならなかった。夜は友人と食事をしたのだが早くホテルに帰って続きが読みたいと言う欲求を抑えるのに一苦労。アメリカの歴史に興味はないのだが、この壮大なロマン活劇を読んでいると20世紀のアメリカ現代史を理解できたような気分になるから不思議だ。著者のアーチャーは処女作の「百万ドルをとり返せ!」を、破産したためミルク代を稼ぐために書いた、というし、この三作目も崇高な理念や使命感から書かれたものではなくベストセラー狙いの金目当て、でも面白ければすべてOK。

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