Vol.321 06年11月4日 週刊あんばい一本勝負 No.317


美しい秋は体力勝負

 11月に入ってにわかに忙しくなってきた。ということは9月10月と閑古鳥が鳴くぐらいヒマだったともいえるのだが、ヒマより忙しいほうが気分は良い。今日は3連休の初日なのだが全員出社。このぶんだと3連休は一日も休めなくなりそうだ。明日は種苗交換会に行って、夜はある食事会。3日目は1日中、増田町の「蔵」の取材(雑誌ある)が入っている。その間に朝日新聞(週1連載)の原稿を書かなければならないし、単行本のゲラが3本くらい手元で滞っている。最近はだらだらテレビを見ないので時間はある。あるが、そのぶん映画(ビデオ)や小説を読んでしまうので何の進歩はない。昨日は『村の写真集』という日本映画を観てしまい、その日のうちにやるべき仕事を1本パス。徳島県のダムに沈む村の写真館親子の愛情を描いたもので、中国映画の傑作『山の郵便配達』とどことなく似たニュアンスの映画だ。その前日には垣根涼介著『ワイルド・ソウル』(幻冬舎)で夜を徹してしまったしなあ。でも、このまま忙しさが続くと映画や読書ともしばらくお別れになる。だから「おおめに見てね」と、自分自身に謝っている昨今です。
 まあ、あまり好きでない「忙しい」などという単語を使わざるを得ないのは、積極的に外に出ているせいもある。県内のグリーンツーリズムの現状や最近とみにに多くなった「手打ち蕎麦屋」さんの取材に東奔西走、面白そうなイベントがあると身軽に出かけるようになった。事務所に引きこもっているより外でいろんな人と接触しているほうが気分は格段に良い。そこからいろんなアイデアや興味が次々とつむぎだされ、結果的には時間がいくらあっても足らなくなってしまう。さらに、これだけ連日好天続きで、おまけに秋田は1年のうちで一番美しい季節。食べ物もおいしいし、催し物も目白押し。これだけ条件がそろっていれば「外に出なければ損」という気分になってしまう。1日中外に出ていると、翌朝は起きるのがかなりつらい。問題は体力勝負、ですなご同輩。
(あ)
この液体はドブロク
マタギ特区で買ったもの
毎日こんな快晴
柿と青空

No.317

杉浦日向子の食・道・楽 (新潮社)
杉浦日向子

 杉浦さんの本は、大好きなのだが、この本はちょっと違う。何が違うのかを説明するのは難しいが、同じ著者の本の本を何冊も読んだことのある人ならすぐにわかってくれるだろう。短いコラムやエッセイを寄せ集めたものだが、亡くなる直前に書かれたものである。こちらで「死」を意識して読んでいるわけではないのだが、文章に硬質感や譲れないギリギリの場所でものを書いている緊張感が色濃く漂っている(ような気がする)。他者への批判や譲れない立場への偏頗な思いも、なぜかかなり強い口調で自分自身に言い聞かせるような「すごさ」がある文章群なのである。杉浦さんの本に朱線を引いて読むなんていうことはないが、この本に関しては線を引いて後からノートに書き写したくなる欲求を抑えるのが難しかった。手元において、何かあるたびにペラペラとめくっていたい本である。こんな言葉が気になった。「江戸のころ、闘病という言葉はなく、平癒といった。闘病が、撲滅駆除の叩き出しで、平癒が、来訪メッセージに歩み寄る示談ではないだろうか。たて籠もった珍客は、偶然か必然か、ともあれ、自分の身体を選んで侵入し、居座った。気難しい客だけど、通じる言葉は、きっと見つかる。長年、病人をやっていると、そんな気がするのです。」

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