Vol.323 06年11月18日 週刊あんばい一本勝負 No.319


身近で病に倒れる人がふえました。

 今年も残すところわずかです。笑われるかもしれませんが、今年を早々と振り返ってみると、「病に倒れる人の多い」多難な年でした。春先にA編集長が倒れ、入院、手術で舎内は大混乱、アルバイトを大量導入して約3ヶ月間をなんとかしのぎました。非常時に備えておくのが代表者の危機管理なのに、まったく予想もできずにあたふたしただけで、いま考えても冷や汗モノです。
 夏まではつつがなく時間は経過しましたが、秋になると仕事をいっぱいしてもらっている長い付き合いのフリーライターFさんが突然倒れ、やはり入院、手術。手術は無事成功したのですが、これにも肝をつぶしました。Fさんはもう仕事に復帰しているのですが、体力には絶対の自信があったFさんの入院は、こたえました。そして今度は自宅で校正を担当してくれているM君が倒れました。担当といっても正社員の時代から数える20年以上、うちの仕事にかかわっている人物で、彼の仕事が停まるとライフラインが断ち切られるのと同じ、ダメージがあり、ショックを受けました。幸いなことにM君も12月からはほぼ普通通り復帰できることになって一安心しているのですが、「今度は自分の番かも」という不安はぬぐえません。倒れたものたちは昔からの仲間ですから、年齢も50を超えています。この年になるまで大きな病を得なかったことを幸運に思うべきでしょう。病を得て初めて健康の大切さ、日ごろの節制に目覚めていては話になりません。
 正直なところ、もう3年先や5年先を見据えた大きな仕事に取り組むのは難しい年齢になってしまったような気がします。仕事を成就するまえに自分の身体が、だめになる可能性のほうが高くなってしまったからです。いやはや、なんとも、わけのわからない地平まで歩いてきてしまったものです。写真はパッと明るく行きましょう。
(あ)
雨の上がった秋田大学構内
秋の名残りが
最近高齢者マンションのラッシュです

No.319

ワイルド・ソウル (幻冬舎)
垣根涼介

 一緒にソウルに行った友人から「アマゾンに移民した日本人を主人公にしたすごい小説を読んだ?」と訊かれた。アマゾン移民の本なら99パーセント見逃すはずはないのだが小説は読んだことはない。帰ってさっそくネットで本書を取り寄せてみると、テーマは本当に私自身が20年近く興味を持ち続け取材を続けているアマゾンの日本人移民を主人公にしたハードボイルド。こうしたテーマは船戸与一の独壇場で、彼をマークしていればいいと思っていたが、いやはや意外。真に迫った臨場感があり、夜を徹して読んでしまった。戦前にアマゾンに移民した日本人は、戦火で生産ができなくなったアジアのピメンタ(胡椒)をアマゾンで代替栽培することに成功、「金持ちアマゾン移民村」として話題になった。そのせいもあり戦後はこのアマゾン移住がブームになった経過がある。しかし斡旋事業主や国(外務省)はろくに現地調査もせず、アマゾンの不毛の原始林に日本人を放り込んだ。主人公はこの不毛の地に裸で放り込まれた移民の末裔たちで、日本に来て外務省と痛快な戦術を駆使して戦う物語である。復讐計画に巻き込まれたテレビ局の女と、ラストシーンで主人公がアマゾン・トメアス移住地の1本道で再会するシーンは泣かせる。こちらに土地鑑があるために臨場感が増すのかもしれない。

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