Vol.324 06年11月25日 週刊あんばい一本勝負 No.320


頭痛と紅葉

 いつも滅入るような希望のない話ばかりを書いているので、少しはパーッと明るくなるような話題を……とは思うのだが、これが慣れないせいかなかなか見つからない。それどころか最近は頭痛がひどく、集中力が続かない。身体に異変があると原因を徹底的に追究するのが「趣味」なので(この数週間何を食べてきたか、特別なことをしなかったか等を分析する)、最近服み始めた栄養剤が悪いのでは、と思い服用を中止。でも一向に頭痛はやまない。散歩をしているときや朝目覚めたとき頭痛は治まっている。……これはもしかして大型テレビで夜毎DVDを観ている影響で、視神経から来る頭痛では、と最近のDVD中毒に行き着いた。2日間ほど大型テレビのスイッチを入れずにすごしたら、あら不思議、頭痛はずいぶん楽になった。あれっ、またいつもの暗い話題にドンドンはまり込んでいるなあ。
 こちらはすっかり冬支度ができました。週末は東京で友人(後輩編集者)の結婚式があり3日間ほど不在になりますが、その間、事務所の床クリーニングと樹木の剪定で業者さんが入っています。来週からは12月。冬のDMの準備が始まり、それを終えると来春に出す本の企画や準備をして、今年の仕事は終わりです。とにかくいろんなことが3,4年分いっぺんにやってきたような、あわただしい年でした。マラソンランナーが30キロ地点で急に失速するような、そんな波乱万丈の1年でもありました。それとは裏腹に生涯でこれほど「紅葉が美しい」と毎日のように感じ続けた秋もなかったようにおもいます。本当に紅葉がきれいだったのか、それとも自分の心境の変化がそのように思わせたのか、よくわかりません。単に年をとって自然の移ろいに敏感になっただけなのかもしれませんね。下り坂の日日です。
(あ)
この秋一番の紅葉は近所の小公園
剪定作業はじまる
関係ないけどソウルのモダンアート

No.320

知的ストレッチ入門 (大和書房)
日垣隆

 このごろライターやジャーナリスト、作家になった人たちを「同情的な目」で見ることが多くなった。少年のころ作家やジャーナリストは憧れの存在だったが、今は「大変な職業を選んで……」といったニュアンスが強い。出版業界にいるとよくわかるのだが現在、作家やライターといわれる人たちで普通に家庭を持ち、公務員程度の給与や休日があり、将来の心配もない、などという人はほとんどいない。たぶん9割以上の人たちが「食えない」ばかりか、希望も持てず途方にくれてたたずんでいるのが現実だろう。著者は残りの1割に属する「食える」書き手だが、その位置をキープするため、すさまじい努力をしているのが本書を読めばよくわかる。物書きとして生きるのが困難な時代に、「書くことの意味や職業としても厳しさを知るためにはいいテキストだ。井上ひさしの本は10年前まで初版が15万部だったのに、いまは10分の一。新聞ビジネスの異常さは購読者の名簿を持っていないこと。宅配網を新しいビジネスモデルに活用していないこと。直截読者から集金や課金ができないこと……著者のメデア批判はストレートで気持ちがいい。時代の最先端の現実と、自らの能力をを秤にかけて、適正なテーマを選ぶ能力がなければ作家として生きていくのは難しい。

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