Vol.326 06年12月9日 週刊あんばい一本勝負 No.322


盛岡と仙台に行ってきました。

 週末に盛岡、仙台に行ってきました。本命は仙台でのある著者の受賞パーティに出席するのが目的だったのですが、ついでに盛岡に途中下車、昔の友人と久しぶりに旧交を温めてきました。友人は同年代で古本屋さん。彼が起業するとき先輩ぶって(古物商の免許を持っているので)いろいろアドバイスした経緯があります。ネット販売もやらず、外商も止め、年老いた母親の介護をしながら店を続けていると聞いていたので、励ましに行ったのですが、元気で一安心。本は売れない、郷土史の需要は高齢化で冷え込み、大型古書店は進出するわで、いいことはないのだが、まあ、どうにかここまでやってこられたから満足だ、と終始笑顔でした。夜は仙台の受賞パーティに出席。その会の目玉として民俗研究家・結城登美雄さんの講演がありました。この講演を聴くのも目的のひとつだったのですが、会が終わると当の結城さんと二人抜け出し深夜まで語り明かしてしまいました。あるホテルの最上階のバーでウィスキーを飲みながら、静かでゆったりと流れる時間に身を任せ、久しぶりに二日酔いです。なるほど繁華街の人気のある居酒屋で大声を出しながら飲むのも楽しいですが、ホテルのバーというのも小生の年齢からすれば「アリ」ですよね。このホテルのバーは結城さんが広告代理店をやっていたころ「食堂」がわりに使っていて、深夜、仕事が終わると社員たちと毎晩のようにここで酒を飲み、食事を取っていたそうで、「バブルって恐ろしいね」と大笑い。結城さんは繰り返し繰り返し、柳田国男と宮本常一の本ばかり読んでいるそうで、「柳田はすごい、大変な人だ」を連発、夜は静かに過ぎていきました。
(あ)
結城さんの講演

No.322

もやしもん(講談社)
石川雅之

 「イブニング」という漫画雑誌(読んだことないし知らない)に連載されている漫画の単行本1巻目。現在4巻まで出ている。「もやしもん」とは種麹のこと、発酵食品を作るときのカビである。主人公はこの種麹屋の息子で、東京の農業大学に入学するところから物語ははじまる。主人公には空中に浮遊している麹が見える、というすごい能力が備わっているのだが、本人自身そのことをまったくありがたいことだと思っていない、という設定である。冒頭の東京農大と思しき大学案内から興味ひかれ、いやぁ面白い、1巻目で物語に一挙に引き込まれてしまった。何より秀逸なのは「こうじ」をテーマにして物語(しかも最もストーリー性が重要視される漫画の世界で)をつくったという着眼点の意外さ。漫画にも若者にも現代にもまったくそぐわないようでいて、実はそうではない。2年ほど前、宮本輝がやはり発酵をテーマにした長編小説を書いたが、この漫画に較べたら赤ちゃんのような本だった。もしかして今、漫画はあの程度の大家の小説など問題にもしないくらい深化をし続けているのかも。そうであれば何百万部売れるのも当然で、こちらの身勝手な嫉妬(漫画ごときが、という)も反省すべきときに来ているのかも。

このページの初めに戻る↑


backnumber
●vol.322 11月11日号  ●vol.323 11月18日号  ●vol.324 11月25日号  ●vol.325 12月2日号 
上記以前の号はアドレス欄のURLの数字部分を直接ご変更下さい。

Topへ