Vol.327 06年12月16日 週刊あんばい一本勝負 No.323


仕事と時間と蕎麦屋さん

 それにしても1週間が早い。そう感じる自分の時間感覚がいつもとどこか違うのだろうが、理由は「年齢」ぐらいしか思いつかない。『大人になると、なぜ1年は短くなるのか?』(宝島社)という本が出たようなので、読んでみようかな。昔のように忙しくない、というのも関係あるかも。本は年々売れなくなり、ある程度予想していたことなので焦燥や不安に苛まれるというほどでもないが、仕事や資金繰りに追いかけられているころは、けっこう1週間は長かった記憶がある。それと朝日新聞県版に週1回、連載エッセイを書いている影響もあるかも。もう2年以上続いていて来年5月まで続く。さらに来年3月からは大館市の北鹿新報という地方紙に週1回「ムラの出来事」というエッセイを書く予定だ。毎週の締め切りに追いかけられる生活も目に見えぬプレッシャーになって、あれよあれよというまに時間が過ぎていくのかもしれない。
 この週間ニュースにしたって前の号を2,3日前に書いたような……いったい自分はこの1週間どんなことをして過ごしたのか、振り返っても漠とした煙のような日常の断片が思い起こされるのみだ。ちょっぴりヤバい気分にもなる。このところ毎日ちゃんと昼食をとり、それをデジカメで記録している。そのこと自体には何の意味もないのだが、外食は意識的に外に出るため(引きこもらないため)。デジカメはHPの素材にしようと思ったため。そのデジカメの昼食画像記録を見ていたら毎日のように違う店で蕎麦を食べている。秋田はものすごい勢いで手打ち蕎麦屋さんができている。5年前までほとんど手打ち蕎麦の店などなかったから、ま一種の遅いブームである。その目新しさもあって、外食するなら蕎麦屋と決めている。ひどくまずい店もないが、毎日でも通いたい、という店もまだ、ない。しばらく蕎麦屋通いが続きそうな日々です。
(あ)
近所にある食堂の350円の
手打ち(阿仁)そば
横手の老舗旅館の月木だけの蕎麦定食
秋田市内の普通の手打ち蕎麦屋さんの
セットメニュー
由利本荘市の小高い丘の上の
蕎麦屋さんの天ぷらそば

No.323

平成「経済格差社会」(講談社)
江上剛

 朝日新聞連載の単行本化という惹句に魅せられて本を買った。注意深く新聞を読んでいるつもりなのに、この連載のことはまったく知らなかった。それもそのはず夕刊の連載だった。秋田に夕刊はアリマセン。連載時のタイトルは「街かど経済散歩」、まさにこの題名どおりの内容である。表題はちょっと大げさのような気がしないでもない。文章は折り目正しく、正論が淡々とつづられているいる。さすが元銀行員、と半畳も入れたくなるが新聞連載という土俵上での勝負なので作家の書けることはおのずから限られてくる。身近な場所で起きている話題や事件、暮らしの現場を「経済」という視点で考えたコラムなのだが、無頼で個性派の多い作家にあっては週末もノーネクタイではあるが、ちゃんとスーツをきているような、丹精で礼儀正しい文章群である。奥付の略歴を見ると、この人が高杉良「金融腐食列島」の主人公のモデルなのだそうだ。高杉の小説を読んではいないのだが。02年に作家としてデビューし翌年銀行を退社している。「非情銀行」や「不当買収」といった銀行をテーマにした小説をたくさん書いている。近いうちどれかを読んでみよう、という気持ちになったのは、優等生のように折り目正しい作者のなかに、別の燃えるような情熱も感じたからだ。もしかして、こういう人がフィクションを書くと、情け容赦なく本丸に真っ向から攻め込むものを書いたりするんだよなあ。

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