Vol.335 07年2月10日 週刊あんばい一本勝負 No.331


エアロビ再開、風向きが変わってきた…かもね

 潮目というのだろうか、ちょっと精神的な風向きが変わってきた。迷信を信じるほうではないが、父親の三回忌を終えたら、なんだか本当にヘンな憑き物がスロンと落ちた。カスミがかったようにボケていた目の前に晴れ間が見えるようになった。不思議なものだ。2月の初め、これまでにないような不安が押し寄せてきて、その唐突さにたじろいだ。精神的動揺は数日間続いた。このままでは病気になってしまう、思い切ったことを新しく始めなければ。「そうだスポーツクラブで身体をもう一度鍛えなおそう!」……極度のスランプに陥ったとき実体のない頭(精神)よりも身体を鍛えるほうが効果的なことは体験上知っている。もう2年以上スポーツクラブはご無沙汰だ。ウォーキングで毎日1万歩以上歩いているし、もう過度に疲れることは年齢的にマイナスなだけ、とエアロビクスはあきらめていたのだが、思い切って再開することにした。あれこれ考えず翌日SC(スポーツクラブ)に飛び込んだ。雰囲気が2年前とまるで変わっていた。中高年というか老人が増え、ボーっとしていると突き飛ばされてしまうほど混雑している。さらに驚いたのは、常連の女性陣(昔のエアロビ仲間)がそろって健在、「アレッ安倍さん、ひさしぶりっ」とみんな駆け寄ってきて声をかけてくれた。インストラクターたちにも笑顔で迎えてもらい、一挙に気分が晴れやかになった。初日は見学だけと考えていたのだが、ジムのいろんなマシーンをためし、施設を歩き回り、それだけで汗が出た。こんな汗をかいたのは2年間ほとんどなかった。翌日は調子に乗って「入門エアロ」(30分)のレッスン。どうにかついていけたが、翌朝は身体の節々が悲鳴をあげていた。これからはまたSC中心の暮らしが始まるのだろうか。多分そうはならないだろう。この2年でそのへんはずいぶん「大人」になったから。でも夢中になれるものがあるって、いいよなやっぱり。
(あ)
元社員のM子さんの子ども
毎日こんな天気で、不安
散歩の途中にこんな空き地が

No.331

仮釈放(新潮文庫)
吉村昭

 参ったなあ。いやぁすごい。このところ新進作家やエンターテイメント系の小説しか読んでいないこともあるが、ドスンドスン、と強烈なボディーブローを決められた気分。濃密で、余計なものをそぎ落とし、深くて骨太な本を読んだのは久しぶり。とにかく事件が起きない、というのがすごい。犯罪者の内面をひたすら追いかける著者の執念はすさまじい。じわじわと読者を息苦しく(興奮の極地)させ、胸ざわつかせながら、まるでノンフィクション作品のように主人公の内面の襞を克明に描き、読者を一行たりとも飽きさせず、引っ張りに引っ張り続ける。そして待っているのは大どんでん返し。本の分量のわずか二百分の1くらいの最後の最後で大逆転の事件が起き、それもさらりと何事もなかったような筆致でふれ、、深追いせず、過剰な意味づけもなく、余韻を残したまま物語はあっけなく終わる。この見事な構成、始まりと終わりの計算尽くされたスノプシスには脱帽。「人生とは何か、人間とは何か?」と読者に問いかけながら、その一方で一級のエンターテイメントでもある作品を書いてしまう作家の力量にただただ、読後にため息をつくことしかできないのだが、どう考えてもこの作品を書くために費やした取材執筆の労力は常人の想像つかない膨大なものであったのは確かだろう。

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