Vol.343 07年4月7日 週刊あんばい一本勝負 No.339


入試問題・引越し・小阪写真館

春の声を聞いてから、もう2度雪が降りました。もちろん想定内です。
それでもさすが入学シーズンですね、突然、春を感じさせるニュースが2つ飛び込んできました。山形県の公立高校の入試・国語の問題に小舎刊『少年』(歩青至著)を使わせてもたらったとの事後連絡。もうひとつは小学教師向けの学習指導本(明治図書)にこれまた小舎刊『秋田こども農業白書』のデータを使用させて欲しいとの連絡。著者たちにはうれしいニュースに違いありませんが、版元としてはいささか複雑です。いくら入試という事情があるにせよ、事後承諾や著作権使用という点に関しては、納得いかない点も感じます。「教科書だからといって勝手に自分の作品を使うな」という訴えを以前に起こした有名な詩人や作家たちがいたことを思い出してしまいました。教科書や入試に使われる作品の多くが事後承諾や著作権使用料が払われていないケースがあることを、ご存知でしたか。

引越しシーズンですね。事務所の前の「焼肉家族」(七輪を囲んで路上で肉を焼く兄弟とその母親)は1年ほどの滞在で引っ越しました。これは慶事で、万歳したくなりましたが、いい事は続かないのか、3軒となりのHさんまで引っ越してしまいました。Hさんは小生の昔からのエアロビ仲間で、これにはガックリきました。Hさんのダンナさんは秋大医学部の医師でしたが中央の病院にヘッドハンティングされ、10年前に立てたばかりの新居を売り払い、突然東京へ引っ越すことになったものです。嫌なやつがいなくなれば、いい人もいなくなります。人生はまあこんなもんかもしれません。

4月からの予定が少し遅れていますが、HPのトップが大きく変わります。
「日刊・小阪満夫写真館」が目玉として登場します。毎日、トップページの写真が変わります。これらの写真のうち、気に入ったものがあればキャビネ版に焼き、額装して頒布します。小阪満夫さんは岡山生まれ、鳥取大学卒業後、秋田に移住、現在、秋田市で小阪写真事務所を設立。30年前から小舎の写真を一手に引き受けくれている、小舎がもっとも信頼しているカメラマンです。その昔、作家の椎名誠さんが、自分がこれまでに読んだ本のベストテンにあげた『バス時刻までの海』(無明舎刊・残念ながら絶版)の写真を撮った人で、最近では『秋田の桜』の写真を撮ってもらいました。昭和60年代、秋田の農村の四季をモノクロームで撮った作品の数々が日替わりで登場します。乞ご期待。
(あ)
小阪さんの写真が載っている著書
これが入試問題
売りに出されたHさんの家。誰か買いませんか

No.339

失われゆく鮨をもとめて(新潮社)
一志治夫

 サッカーのノンフィクションで高名な著者(「いつし」と読む)なのに唐突にグルメ本、という感じだったが、奥付を見ると数年前に豆腐の本を書いている。サッカー本を一冊も読んでいないのにグルメ本に手を出したのは、こういう異種業作家が書くグルメ本は多分面白い、という確信があったから。鮨に限らずグルメ本はイヤになるほど出ているが、大家でもなく、ベストセラー作家でもなく、時流に乗っているわけでもない若い作家が書くものはなんとなく期待(信用)できる。著者は東京・目黒で出遭った「寿司屋さん」に導かれるように食をめぐる冒険の旅に出る。鮨のタネになる良質の食材を求め、あるときは寿司屋の親方と同行、あるときは一人で漁場や流通現場を取材する食紀行ノンフィクションである。料理関係者ではない人のルポとしてはきわめて正攻法の取材方法といっていい。読み進めていくうちに「原点」になったその目黒の店に行きたい、という思いが募るが、そこは著者のポリシーなのだろう、所在地や店名を露骨に連呼するような品のないマネはしない。この目黒の店、本を読んだ人が押しかければ、たちまちその雰囲気や味の骨格を粉々にされてしまいそうなデリケートでアットホームな店のようだ。著者の危惧がよくわかる。

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