Vol.346 07年4月28日 週刊あんばい一本勝負 No.342


桜と事務所の改修工事

 今週いっぱいが秋田の桜の見ごろです。例年ですと桜の開花時期がいつかなんて、気にかけたこともないのですが、今年はどうしたことか桜が気になります。3月早々に鎌倉の鶴岡八幡宮で桜を見て以来、いろんなところで見かけた(といっても近所ですが)桜をパチパチ写真に撮ったりしています。何でこんなに季節感に敏感になったのかしら、とつらつら考えるに、ここ数年、目の前の石井さんの田んぼが住宅地に変わり、そのへんから季節感にすっかり無頓着になっていました。田んぼが目の前にあるといやおうなく「季節感」が現実のものになりますが、なったら元の木阿弥、季節感のない日々に慣れきっていました。それが今年に入って、3年ぶりにスポーツクラブに通うようになり頭よりもはやく身体のほうが季節に敏感に反応するようになりました。雑念が消えた感じとでもいいましょうか。同時に登山も始めたのでいっそう季節が気になります。東京に行く機会もめっきり減り、暇があればウォーキングするようになったのも影響を与えているようです。昔のように夜の散歩でなく昼時に街に繰り出します。引きこもりから一転、積極的に昼の街に出ているのです。そうなると風や雨、木々の緑や軒先の花々に自然に目が行くようになります。ま、そんなわけで、精神的にはきわめてニュートラルで穏やかな日々ではあります。
 桜と時期を同じくして事務所の改修工事がはじまりました。25年前に建てたものですので、窓枠から雨や雪が染み込んで内部を腐食させるのが心配なためです。5,6年前、突然シロアリが出現し、前面の壁をすべて引っ剥がしたことがありましたが、これも窓枠から染み込んだ雨水によってシロアリの絶好の住環境を作ったのが原因です。いまさら築25年の事務所に高額な修理費をかけて、と思われるかもしれませんが、小舎編集長は元内装業、建物は壁面や屋根からだめになっていくことをよく知っています。いっけん地味な作業ですがこれらのケアをちゃんとやることが建物を長持ちさせる秘訣です。せっかく足場を組んだので屋根の錆落としと塗り替えもやってしまうことにしました。事務所の内部は、これはずっと昔から禁煙だったので、ほとんど痛みはありません。タバコのヤニというのは建物を徹底的に老朽化させます。
 そんなわけで桜の季節に、事務所からはトンカチ、ドンガン、職人さんたちの作業音が鳴り響いています。
(あ)
千秋公園の桜
近所の見事な桜の木
壁面に足場を組む
デスクの窓にいつも人

No.342

恋って苦しいんだよね(リトルモア)
永沢光雄

 去年の11月に亡くなった永沢さんの本(遺稿)はどんな版元から、どのような形で出るのか、編集者として一ファンとして興味深かったが、そうかリトルモアでしたか。つい最近の木村伊兵衛賞の梅佳代「うめめ」もリトルモアが版元だし、若い漫才師が書いた自伝本もベストセラー、勢いがある出版社はさすが違いますね。本書は初めての短編小説集で26の私小説風の作品で構成されている。コアマガジンという雑誌に「そこにあるだけの話」というテーマで連載されたもので、「小説」であるという表記はどこにもない。でも無理やり分類すればエッセイではなくやはり小説だろう。ちなみに永沢さんは仙台出身、年が明けてから仙台の大きな書店を回ってみたが、1軒として「永沢追悼フェアー」をやっている書店がなかった。これは意外というか、仙台らしいというか。生前、「仙台と相性が悪いんですよ」と永沢さんが言っていた意味がちょっぴりわかった気分。本書にははさみ込みが入っていて、この3月にもう一冊『愛は死ぬ』という短編小説集の本書の続編が刊行される予定だそうだ。早くそっちも読んでみたい。永沢さんは病気で声を失ったとき、「これは神様が早く小説を書け、と与えてくれたきっかけだ」というようなことを書いていた。これからが楽しみな作家を失ってしまった。

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