Vol.371 07年10月20日 週刊あんばい一本勝負 No.367


羽州街道、小さな旅

 山に行くたびに雨なので、最近は山仲間から「お祓いをしてもらったら」とまで貶められている。つらい。それでも14日(日)の白神山地・田代岳は快晴で、雨のない登山がこんなに気持ちいいのを知る。
 17日、18日の両日は「羽州街道小さな旅」で、山形・宮城にまたがる佐竹氏の参勤交代の道(跡)を訪ねてきた。これも運良く晴天に恵まれ、この調子が続けば、「雨男」の汚名をそそぐことが出来そうだ。よしよし。
 羽州街道の旅1日目は、朝の7時にJR秋田駅をマイクロバスで出発。山形・舟形町の猿羽根峠を越え(ここは新庄藩との領境)、村山市の居合神社を見学したあと、東根市の与次郎稲荷神社。ここは佐竹義宣のお抱え飛脚、那珂與次郎を祀ったところ。與次郎は秋田から江戸まで6日間で往復した伝説を持つ飛脚。ということは1日200キロを走ったわけで、これはホントかなあ。昼は六田の有名な麩懐石料理。ご主人の文四郎さんの「麩」の解説が面白い。前から興味があった麩の作り方も工場見学でよく理解できた。麩と言ってもあのラーメンにはいっているインスタントとは別物で、水に戻して煮て絞って、味付けしてようやく食べられる。
 午後からは上山市の城下町を歩き、宿舎の長谷屋旅館へ。『東講商人鑑』の原本があった場所なので、無明舎との関係も深い宿だ。また上山市は小舎の創業時から世話になっているF印刷がある場所でもある。うちの担当のKさんが山形市内の病院に入院中なので、F印刷のS部長に迎えに来てもらい、一緒に山形までお見舞いに抜け出させてもらう。
 2日目は上山郊外にある楢下宿を歩いて探訪。昼は有名な「こんにゃく番所」で食事。午後からは金山峠から宮城県側に越え、羽州街道から米沢、最上の追分を見て、七ヶ宿の宿場町を訪ねた。盛りだくさんな内容の濃い旅である。4時には全工程を終了。帰路は白石ICから高速道をひた走り、夜の7時に秋田に戻ってきた。
 旅が終わって、その地の関連資料文献をひもとくのも、歴史旅の楽しみなのだが、今回の旅では数多くの街道筋の本陣(大名が泊まった家)を見たのに、風呂場の有無を確認し忘れてしまった。風呂といっても「湯浴み」が主だが、どこにもそんな場所がなかったような…。大名行列には殿様用の風呂を携帯していったという記録もあるから、殿様はもっぱら「携帯風呂」だったのだろうか。
(あ)
東根市の与次郎稲荷神社
六田の麩の工場

上山市に残る東北では珍しい
眼鏡橋

No.367

そろそろくる(集英社)
中島たい子

 大好きな平安寿子のような作家に出会いたくて新人作家の小説にもけっこうこまめに手を出している。でも、なかなかショッキングな出会いなんて、そうあるものではない。20代から30代の独身女性の失恋やストレス、普通の暮らしを淡々と描く……という惹句にひきつけられて本書をひもといたのだが、う〜ん、オヤジはお呼びじゃない内容で困惑した。「そろそろくる」というのは女性の生理のことである。若い女性の生理と、そこから派生する女の精神状態を、連作物語の形で書き綴られた珍しい作品集である。男が読んでもおもしろいのは確かだが、正直なところ中身は少し理解できた、といった程度か。男だけの3人兄弟で育った私にとって、女性の生理やそこから発生する精神的な現象はまるで縁のない世界。本を読んで、へぇ、こんな複雑なんだ、というのが正直な印象だった。こんなことも知らずに生きてこれたのだからノーテンギといえばノーテンギ。これからもPMS(月経前症候群)をテーマにした小説を読むなんていう機会はないだろうから、希少価値的意味で記憶に残る本になりそうだ。主人公である彼女の職業がフリーのイラストレーターで、クライアントとの関係や描きたい絵のこと、仕事と芸術の狭間で悩む彼女の苦悩は、よく理解できる。

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