Vol.376 07年12月1日 週刊あんばい一本勝負 No.342


DVD映画の借りかたは難しい

またぞろ夜にDVD映画を事務所で見るようになってしまった。長かった新聞連載も二つ終わり、週末の山行も冬で一段落……といった背景もあるのだが、もっと大きな理由は近所のビデオショップ屋に再び通い出したため。このビデオと本屋のフランチャイズ店は、受付カウンターが3つか4つあるに一列待機(フォーク並びとも言う)のシステムをとっていない。客が混みだすと手がすいたバイトが「はい、こちらにどうぞ」と「適当に対処」するため(恒常的に忙しくないからだろう)、横から割り込んだり、後から来た人が最初に入り込んだりが、自由なのである。でたらめで不愉快きわまりないのだが、例の「いらこいアルバイト」(いらっしゃいませ、こんにちはをオームのように繰り返す)たちの牙城なので何を言ってもムダ。それに嫌気がさして足が遠のいてしまった。以後、もっぱらライブドアの「ぽすれん」というネットDVD屋を利用しているのだが、実際にやってみるとネット上で映画を選ぶのは面倒でかつ難しい。映画タイトルは内容と乖離があり、主演スターぐらいしか判断基準がない。ビデオ屋でパッケージ裏のあらすじを読み、何枚かの場面シーンを見て、判断するのが一番外れがないことに遅まきながら気がついたのだ。

そんなわけでネット・レンタルで映画を借りるのはリスクが大きいのだが、本であればネット書店に対して何の痛痒も不便も感じない。えらそうに聞こえるかもしれないが本に対する基礎知識(版元名、定価、著者、タイトル)があるので、基礎情報だけでどの程度の本か想像がつく。逆に言えば、リアル本屋に行って本を買うのは、情報量が多すぎて疲れてしまう。なるべく書店に行かないほうが冷静に本を選べるのだからネット書店のほうが数段便利なのだ。
ようするに映画に対してはこの基礎知識がないため、実際にパッケージを見て借りるしかないというわけである。

今週の写真は先日行ってきたばかりの刈和野にあるギャラリーです。古民家を改造したもので、実際にオーナーの方が住んでいる、雰囲気のある画廊です。
(あ)
樹木に囲まれた古民家の中のギャラリーです
これはオーナーの私物かな?
囲炉裏端でけんちん汁をいただきました

No.372

走ることについて語るときに僕の語ること
(文藝春秋)
村上春樹

 何度か挑戦しているのだが、この著者の小説を最後まで楽しく読めた経験がない。よく意味のわからないフレーズや、油断すると文の装飾にまぎらわされて粗筋すら追えなくなってしまう。翻訳もの(「キャッチャー・イン・ザ・ライ」とか「グレート・ギャヅビー」など)は本当に面白いのに、肝心の小説がダメなのである。こちらの感性に大きな問題があるからだろう。若いころ名作といわれて読んだのに面白いと思わなかった外国の小説が、村上の新訳で「すごい」とわかったことも度々で、尊敬する作家なのに、小説は読んだことがないという変な読者である。彼のエッセイもダメだったが、ランニングや自分自身について語ったエッセイである本書には興味がわく。彼のエクササイズ論なら面白くないはずはないからだ。銀座のバーで飲んだくれ、高級ホテルで缶詰になり、女優と浮名を流す、といった「古くて尊大なイメージ」であった作家像を完璧に払拭してくれたのは、村上春樹の功績だろう。彼のストイックでシンプルな私生活ならぜひのぞいてみたい。私自身、最も興味を持っているジャンルである「身体をシェイプアップする」ことなので、一気呵成に読んだ。面白かった。うれしかった。なかなかうまく言葉にできない「運動の快感」を文字にしてくれて、ありがとう、という気持ちである。

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