Vol.405 08年6月21日 週刊あんばい一本勝負 No.401


揚げそばがき・余震・絶版本

先週は外に出る機会が多かった。そのため外食が多く、こうなるとてき面に食べ過ぎが問題です。県内に限れば「その地域でいちばん美味しいところ」はだいたい知っているのですが、最近はそういったお店よりも、県内各地に雨後のタケノコのごとくできつつある蕎麦屋に入ることが多くなりました。蕎麦屋なら長居しないし、食べ過ぎの心配もありません。つい先日、秋田市内の蕎麦屋で、「揚げそばがき」なるものを食べました。昔から蕎麦屋の裏メニューにはあったものらしいのですが、そばがきを天ぷらにして汁にいれてもの。はじめて食べたが芋天に似た舌触りで酒のツマミによくあいました。注文したわけでなく、店のオヤジが勝手に出してくれたものですが、蕎麦はやっぱり奥が深い。

何人かの方々から地震のお見舞いいただきました。恐縮です。被害はほとんどなかったのですが、あんな激しい揺れは初めてです。日本海中部沖地震のときは震源地の近くを車で走っていて、車が上下に飛び跳ねたので、てっきりパンクだろうと、路肩に車を止めたことを思い出しました。
山歩きはしばらくゴブサタです。6月7日に高松岳に登り(体調がよくなかった)、今週(21日)に予定していた焼石岳も余震が続いているため危険と判断して中止になりました。18日に西馬音内の街道を歩くイベントがあったのですが、これはこちらの仕事の都合でキャンセル。ですからしばらく汗をかいていません。身体がむずむずしてきますが、6月に入ってから散歩の後に入念なストレッチをしていて、これが功を奏しているのか体調は良好です。28日には岩手山山小屋泊まり登山があるので、その日まで体調管理に精出すつもりです。

HPの「絶版本放出コーナー」はすごいアクセスです。誰も見ていないだろうと、ささやかに公開するつもりでした。「今日の出来事」でコーナーを設ける予定、と書いたとたん電話やメールで問い合わせが続出。コーナーに載せる前に売切れたものもあります。今回の放出は倉庫の老朽化で保存本の痛みがひどく、とっておいても腐らせてしまうだけ、と判断したための措置です。
たとえば『バス時刻までの海』という写文集は、作家の椎名誠さんが「自分の好きな本ベストテン」に選んでくれたせいもあり、初版があっという間になくなった「幻の本」です。それを今回は4冊放出しましたが、案の定1日で売り切れ。同じ本の2冊買い禁止、を明記するのを忘れました。まだまだ絶版本はたくさんあります。現在HPに出ている本が売切れ次第、新しい放出本に更新していく予定。お早めにどうぞ。
(あ)

No.401

田村はまだか(光文社)
朝倉かすみ

 タイトルがいいし、カバーの挿画もいい。小説を読む前に本文の中で重要な役割を果たす「バーのマスター」の人物像を具体的に描いてしまって、差しさわりはないのか、と思わないでもないが、本書を読めば、ま、こんな感じの人だろうな、という平均的なイメージなので、問題はないのかもしれない。私自身は、もう少しイケメン・タイプの中年男をイメージしたのだが。それにしても不思議な味わいのある小説だ。深夜のバーで、40歳になる男女5人が、大雪で列車が遅れクラス会に間に合わなかった「田村」をまつ。たわいない会話が延々と繰り返され、最後は誰からともなく、「田村はまだか」という決定的せりふが飛び出すしかけだ。この設定がすごい。旧世代のオジサン(私のこと)たちは100パーセント、この設定にサミュエル・ベケットの名作戯曲『ゴドーを待ちながら』を重複させ、自然にその展開に息を呑むことになる。そのへんは作者も十分意識しているのだろう。軽いフットワークで、ゴドー的な重苦しい虚無感を、迂回しながら通り過ぎ、こちらの期待に肩透かしを食らわせる。この辺が新鮮で読みどころだ。タイトルの勝利のような気もするが、深夜の札幌のバーから舞台が動かない、というあたりもいかにも演劇的で、にくい構成だ。

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