Vol.427 08年11月22日 週刊あんばい一本勝負 No.423


音楽とお茶

 冬のDM発送も終わり、なんとなく気の抜けた1週間。
 どこへも出かけずジッと机の前に垂れ込めている。事務所の大型テレビはつけっぱなし。
 テレビは、静かなドキュメンタリーの多いBShIを観ることが多い。BS日テレ「イタリア 小さな村の物語」がお気に入り。この番組で最初と最後に流れるカンツォーネが、いい。ネットで検索してCDを買った。歌っているのはオルネラ・ヴァノーニという女性で「L`APPUNTMENTO」(ラ・プンタメント)というCDに入っている。
 テレビを観てないときは、CDやFMラジオを流しっぱなしにしている。静かだと仕事ができないタイプである。でも集中力がそがれる日本語の歌や落語はご法度、もっぱらクラッシック音楽である。これなら右から左へすんなり抜けていく。小沢征爾とボストン交響楽団のマーラーの交響曲を繰り返し聴いているのだが、ちゃんと聴きたいときにはボリュームをあげ、BGMの時は低く流している。
 日本の歌を聴くのは車の中だ。車でクラッシクを聴くと眠くなってしまうので、耳に引っかかる日本語の歌のほうがいいようだ。カーステレオ(今のは便利でCDを1回聴くと自動的に録音、以後CDは必要ない)でよく聴くのは「UA」。最近はUAとよく似ている「エゴ・ラッピン」という男女のグループの歌がおもしろい。旅先にはIpod。これには「桂枝雀全集」や「立川志の輔」などの落語が入っている。旅先の慣れない枕で眠りにつく前に聴いている。電車の中でもよく聴く。
 こうしてみると、音楽は暮らしの中でかなり重要な位置を占めているのを感じる。そのくせ家の書斎ではほとんど、最近は音楽を聴かないのはどうしてだろう。

 音楽と同じように、毎日いやになるほどお茶を飲んでいる。これもここ最近の傾向だ。750mlの登山用のテルモス(魔法瓶)に熱いお茶をつめて午前中に飲みきる。午後からはそのテルモスに白湯をいれ、チビチビ。毎日テルモス2本分の水分をとっているわけだが、このせいだろうかおしっこはいつも透明、夜中に一度おしっこに起きるようになった。こちらはいささかシンドイ。
(あ)

No.423

シューカツ(文藝春秋)
石田衣良

 たとえば最近の若者たちは、どんなことを考え、どんな規範で生きているのだろうか。それを知りたければ、若者たちのいそうな場所に出かけ、直接話をきくのがてっとりばやい。でも残念ながら、我が郷土にはそうした機会や場所はほとんどない、といっていい(大学構内ぐらいか)。そこで「時代を反映した小説」を読んで、その穴を埋める。これまでそうした方法で新しい風俗や流行の音楽、嗜好のあれこれを「勉強」してきた。べつだん知ったところで何の利益 にもならないのだが、同じ年代の息子がいる親としては、子どもを理解する一助にはなっている。 
 本書は早稲田大学らしき学生7人の、就職活動の顛末を6章立て短編連作で描いている。若者の就職事情など、もとより知りようもないのだが、知らないことを知ることは読書の醍醐味のひとつ。主人公の水越千晴が平凡な女子大生、という設定が最後まで効いている。ちょっとしたスパイスになているのはエピローグで、優秀な主人公キャラクターに描かれている「圭」の就職先が……読者はここで少し驚くことになる。頭脳明晰で希望は報道記者、本来であれば本書の主人公にふさわしい人物が選んだ職業は……。ケータイ電話が必需品、パソコンが職業検索アイテムとしてあたりまえになってしまった大学生たちの就活動の今が、恋愛感や家族像を伏線としながら鮮やかに描かれている。

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