Vol.429 08年12月6日 週刊あんばい一本勝負 No.425


汗を流すのは気持ちがいい

 毎日のように雨。事務所に閉じこもっていると、気持ちはドンドン落ち込んでいくばかり。思い切って近所のスポーツクラブに出かけ、汗を流してきた。それがきっかけで2年ぶりくらいにジム通いが復活した。
 なにもしないで、グダグダといらぬことを考えるより、身体をいじめて汗を噴出させるのがいい、というのは長年の経験で実証済み。それが最近は週末の山歩きで、とてもエアロビクスまで手を出す余裕はなかったのだが、このところ山は雪、いきたくともいけない状態が続いていた。
 エアロビクスも山登りも、汗を流すことに変わりはない。汗を流している時間が長い分だけ、山のほうに達成感があるような気がするが、終わった後の達成感はそう違いはない。汗を流す楽しさはエアロも山も変わらない。
 汗をかき終わって、汗まみれの用具(ウエアー)を洗濯籠に放り入れ、次回のための新しい用具を準備する。この時間がえもいわれぬ快感である。
 山歩きも同じで、一仕事おえ靴やレインウエアーの手入れをするときがたまらない爽快感がある。運動で汗をかく行為そのものより、その後の用具の手入れがとんでもなく楽しいのだ。この感覚は私だけなのだろうか。
 エアロビクスは靴とウエアーがすべてだが、もう10年以上使い込んでいるものたちだ。登山用具にしても何十回となく労苦を共にした「同志」である。用具への熱い思いはスポーツの場合、特に強く心に刻まれるものなのかもしれない。
 大館市の「北鹿新聞」に、毎週1回、もう2年近く「メタボ・オヤジどすこい奮戦記」というコラムを連載している。最初はスポーツジム通いと自分の健康をおもしろおかしくルポしていたのだが次第に山歩きに夢中になり、そっちの記述が多くなった。いわば本筋から外れてしまったのである。連載は100回まで続くのだが現在は77回あたり。本題のスポーツクラブに早く戻りたかったのだが、これでようやく本筋に戻ってこられた。
 スポーツクラブといっても、元気な女性陣を別にすれば、男たちのほとんどは定年退職で暇になったオヤジたちだ。中高年の「憩いの場所」である。ロッカーでタバコを吸い、カップ酒を飲み、雑談に興じる。ひがなプールを歩いているだけの肥満男、ランニングマシンに乗っかって何時間もテレビを見ているおっさん、ただひたすら新聞を読んでるだけの老人もいる。
 本当はこうした人間模様を面白いコラムにできる才覚があればいいのだが、自分のレッスン(持ち時間)をこなすのが精一杯で、彼らにまで関心が向かないのがつらいところだ。
(あ)

No.425

アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない
(文藝春秋)
町山智浩

 書名で半分勝ったような本だ。うまいタイトルだなあ。現在カリフォルニア州バークレーに住んでいるコラムニストが著者だ。毎日、現地で観たり読んだりする新聞やテレビといった身近なところから話題を拾い、大きな世界の問題をあぶりだす視点に好感が持てる。他国の出来事という距離感を感じさせない身辺雑記エッセイにみせているのがいい。日常的な暮らしの中から抽出した、出色のアメリカ論といってもいい。「暴走する宗教」「デタラメな戦争」「バブル経済と格差社会」「腐った政治」「ウソだらけのメディア」「アメリカを救うのは誰か」といった具合で、見出しを拾うだけでも近所のゴシップを読むような親近感がある。アメリカに対して興味がなくても「読みたい」という気を起こさせる。それにしても、聖書以外の本を読まない多くのアメリカ人は「成人の2割が、太陽が地球の周りを回っていると信じている」とか。本当なの。「日本に原爆を投下した事実を知っているアメリカ人は49パーセント」「サンタクロースは、オランダ移民によってアメリカに輸入され、コカコーラが赤と白のシンボルカラーで作り出したもの」といった仰天エピソードが満載。オバマが勝利する前に刊行された本だが、ブッシュのようなヘボが、なぜ大統領になることができたのか、懇切丁寧に解説している。

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