Vol.43 6月23日号 週刊あんばい一本勝負 No.40


青木さんの本

 フリーのライターで小舎の本を多く手がけてもらっている青木さんの本が出ました。『五能線みちくさ紀行』です。ふだんは実名で本を書くことはほとんどなく、あの福永法源から元ヤクザ、有名政治家まで広くゴーストライターとして数百冊の本を書いてきた人です。30年前には東京で出版社を経営した経験もあります。その出版社は人に譲り、今も健在ですが、あの時代を生きてきた人なら東大全共闘の山本義隆議長や所美智子さんの本を出した版元といえばお分りになると思います。 青木さんは現在弘前市で地元のタウン誌編集長を務める奥さんと暮らしています。年に数回打ち合わせと秋田の酒を飲みに事務所を訪ねてくれます。今月もある単行本のつめの作業を手伝いに来てくれました。青木さんがくると昼はお寿司、夜は居酒屋と決まっていて、とにかくお酒が好き、陽気な酔っ払いです。私たちが付き合っている関係者の中で青木さんは一番の年長者で、この人といると『人生生き急ぐことはない。ゆっくり行こうぜ』という気分にさせてくれる人生の先輩です。
(あ)

この人が青木さん

「カメラがとらえた20世紀の地球」展はいい!

 横手市にある「秋田県立近代美術館」で6月14日から7月14日までの1ヶ月間、「カメラがとらえた20世紀の地球」展が開かれているのでいってきました。これらの写真は第2次世界大戦中に創刊されたスイスの文芸グラフ誌『ドゥ(du)』に掲載された写真を24の主題に分類して展示しているものです。この写真展を見ると20世紀というのはのべつ幕なしに人間が殺し合いを繰り返していた「戦争の世紀」であることがよくわかります。個人的にはヨーロッパの芸術家の肖像やアジア人カメラマンの作品に興味引かれたのですが、アンリ・カルティェ・ブロッソンの作品が量質とも圧倒的な存在感を示していたように感じたのは小生の贔屓目でしょうか。とにかく高速道路に乗って観に出かける価値のある写真展でした。難癖をつけるならタイトルの「地球」というのはちょっとへんで、やはり平凡ですが「世界」という言葉がぴったりでしょう。
(あ)

パンフレット

「北前船」2次取材に出発

 6月16日未明、編集長の鐙啓記とライターの加藤貞仁さんの2人が「北前船」の取材のため車で北海道に向けて旅立ちました。今回の取材期間は約2週間の予定です。つい先日、長い関西方面の取材を終えて帰ったばかりなのですが、梅雨の期間をむだなく使うために梅雨のない北海道取材をこの時期に済ませ、7月にはいってから残りの関西、北陸、新潟、山形の取材をする戦略です。この本は無明舎の30周年記念出版でもあり、異例づくめの取材体制を敷いているのですが新聞や雑誌社から原稿依頼や取材申し込みがポツリポツリと入り始めています。編集長が春から夏にかけての数ヶ月間不在になるというのは舎にとって大きな痛手なのですが、こうした小さな痛みに耐えなければ大きな仕事は出来ないと考え、あえて踏み切ったものです。パソコンのモバイルのおかげで連絡態勢に大きな齟齬は生じていませんが、やはり留守部隊の不安は隠せないようです。2次取材のレポートもHP上で公開します。ぜひお読みください。
(あ)

神戸で取材中の鐙啓記

アイスクリームづくりに挑戦

 先日のドリナビ取材で出かけた矢島町の花立牧場でアイスクリームづくりを体験してきました。作り方は簡単で牧場でとれた新鮮なジャージー牛乳と砂糖、水飴、脱脂粉乳、卵黄を混ぜるだけです。砂糖がとけるまでよく混ぜたら、アイスクリームフリーザーという機械に入れて冷やすと、やわらかいクリーム状になります。これをカップに入れて冷凍庫で固めればアイスクリームの出来上がりです。カップに入れる前の状態で味見すると、ソフトクリームとも違うフワッとした滑らかな舌触りで甘みもそれほど強くなく、とてもおいしかったです。あいにく雨模様の肌寒い日だったので1つしか食べませんでしたが、暑い夏だったらいくつでも食べられたかもしれません。
(富)

フリーザーからクリームが出てくる

No.40

糸井重里(講談社)
ほぼ日刊イトイ新聞の本

  この本は面白いゾ。夜を徹して読んでしまった。「スプーン」もそうなのだが絶対に面白い本は「買って買って」とあちらから身を投げ出し秋波を送ってくる。糸井さんのHPは最近みたばかりで1日でなぜ35万ものアクセスがあるのかは中身をみてもよくわからない。本書は高名なコピーライターがかなり真剣に(深刻)自分の恥部をさらけ出して書いたガチンコのHP貧乏奮戦記でドキュメンタリーとしても一級の読み物である。お金持ちのように思われているのにほとんど金がないこと、木村拓哉や堺屋太一と言った有名人と東大立花ゼミの学生たちが対等に扱われていること、メディアや広告産業への激しい批判があること、うぶなほどインターネットの未来を信じ切っていること、素直な心情吐露で好感がもてる。iモードの開発者の本をはじめパソコンものはほとんどが例外なく面白くない。この本だけ頭抜けて読ませるのは文章力や構成力だけでなく、読者と自分の距離をはっきりと掴んでいる強みだろう。オススメである。

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