Vol.430 08年12月13日 週刊あんばい一本勝負 No.426


スタバのないところなんてイヤっ!

2年に一回の恒例行事になっているのだが年末、書庫に溜まった本(読了本や資料本)を放出(ゴミ出し)する。今年は自分の書斎の読了本も一緒に処分したので1000冊以上の放出になった。最初に小説類の好きな友人のSさんに段ボール箱2個分の本を仕分けし、舎員それぞれが好きな本を家に持ち帰り、来舎した人たちに好きな本を選んでもらう。それでもなかなか「完売」とまではいかないので、あとは産廃として清掃会社に引き取ってもらうことになる。今年は運のいいことに近くの高校生が「読書の未来」というテーマで取材に来舎する予定なので、彼(女)らに好きなものを自由に持ち帰ってもらっおう。
本と同時に舎内の不要な書類、棚類の大幅リストラも敢行。原稿や備品をストックするために必要だった棚が、時間と共に増え続け仕事場が「ものであふれかえった」状態だったのだが、これですっきりした。とくにロッカーや棚の上に物が積み上がっていたものを取り除くと、みごとに空間から圧迫感が消えた。事務所に余白ができると、事務所を建てた初期のころのことが思い出され、気持ちに余裕というか、爽快感すらあった。捨てた備品類というのも、もとをただせばこの10年のデジタル化の波で使用頻度の落ちてしまった文具類がほとんど。
夜は雨が多いので、仕事の合い間を縫って日中に散歩。駅まで歩いて戻ってくるだけなのだが、駅前のスターバックスでコーヒーを飲んでくることが多い。30万都市といってもスターバックスは市内に2,3軒しかない。ドットールも似たようなもの。週末に東北のいろんな街に出かける機会が多いのだが、フシギなことに仙台にも盛岡にも弘前にも八戸にも酒田にも、スタバは圧倒的に少ない。ドットールはけっこう見かけるのだが、東北にスタバが少ないのはなにか理由があるのだろうか。そのスタバだが、わが近所の秋田大学病院中オープンがきまった。2,3軒しかないもののうちの1軒が近所にできるのである。これはうれしいニュースだが、はたして高齢者の多い外来患者や入院患者たちはスタバを必要としているのだろうか。病院という立地条件で採算ラインに乗るものなのだろうか……なんて、考えていたのですが、関係者に話を聞いて納得。別に外来患者がスタバを必要としているわけでなく「研修医確保」のための特別措置なのだそうです。「スタバもないところに行きたくない」という研修医が多く、医師不足に悩む病院側は彼らの引き止め策として「やむなく」スタバをオープンした、のだそうで、いやはや驚きました。
(あ)

No.426

将軍たちの金庫番
(新潮文庫)
佐藤雅美

 これは面白い本だった。ためになった、といったほうがいいかな。知らなかったエピソード満載、これまで疑問に思っていたいろんなことが溶解した。江戸時代の経済事情が、幕府の台所を軸にわかりやすくまとめられている。前半は徳川の各将軍の金銭感覚や経済官僚たちの知恵比べ。田沼意次や松平定信ら「時代のエポック」になった経済政策を紹介する。この本を読むと当時の参勤交代がいかに殿様たちを苦しめたか、よくわかる。と同時に商人から借金をして、それを当たり前のように踏み倒す江戸や大坂詰めの武士の「仕事」もスゴイの一言。武士に金を貸すことで倒産に追い込まれた商人も少なくないのだが、ま、このへんのアウンの関係が、大商人たちを生み出してきた(たとえば独占販売とか)土壌でもあるのだろう。本書のもともとの書名は『江戸の税と通貨』、その後、『江戸の経済官僚』とタイトルを変えて徳間文庫に入り、さらに本書のタイトルになって再再度、蘇った。本書の書名が一番うまい。それにしても本書後半では、通商条約を結ぶために来日したハリスと江戸の経済官僚たちとの「一分銀」をめぐるやり取りに、その紙枚のほとんどが費やされている。この後半がスリリングで迫力があって読み応えがある。

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