Vol.440 09年2月21日 週刊あんばい一本勝負 No.435


このごろチョッピリ旅恐怖症

 先週の高尾山スノーハイキングは暖冬のため中止。皮肉にもその夜からものすごい雪が降り始め、今週は連日の雪。
 春のDM発送準備もようやく終了。気分転換で外に出ようと思い日帰りで弘前へ。ところが最終電車が雪で運行中止、駅前ホテルに泊まる破目に。ま、これは雪国のリスクでグチを言ってもしょうがない。問題はホテル。安くて快適なホテルが乱立しているので便利とはいうものの、やはりホテル泊は「非日常」、健康管理には気を使う。特に冬の乾燥が大敵だ。せっかく日常生活でそれなりに体調管理をしてきたのに、ホテルの1夜はそれを台無しにしてしまう。加湿器を備えたホテルが多くなったというものの、目覚めると喉の奥はいつもヒリヒリ。それに狭い部屋で何時間も過ごすのは苦痛だ。だから外に出る。そして暴飲暴食、悔恨と吐き気にのた打ち回ることになる。
 そんなわけで最近は少々ホテル恐怖症というか旅行恐怖症である。なんでもいいから夜だけは自分の寝台で寝たい、というのが還暦まじかオヤジの正直な気持ち。朝からゆっくりと自分のペースで一日を送らないと、暮らしのリズムが狂い、元のペースに戻るのに数日かかってしまうようになった。

 新幹線は大丈夫なのだが、在来線の「効きすぎる暖房」というのもネックというか、いつも頭にくる。なぜ電車内はあんなに暑いのか。私自身が暑がりなので気になるだけなのか。とにかく苦痛でイライラ、読書にも集中できない。冷静に考えると、仕事場を1階から2階の一人部屋に移したのも、他の人たちと冷暖房適温がまったく違うことから決断したものだ。クーラーやストーブが暑すぎて仕事に集中できない。家でもカミさんのいる部屋の暖房がきつくて、飯がすむとそそくさと自分の書斎に戻ってしまう。そうか、これはやっぱジブンの問題なんだ。
(あ)

No.435

二列目の人生 隠れた異才たち(晶文社)
池内紀

 ずっと前に買い、本棚に入れっぱなしにしていた本だ。とにかく池内さんの大ファンなので、彼の本はたいがいもっている。もっているだけで満足し、読んでいない本も多いのだ。特に専門のドイツ文学関係の書籍はほこりをかぶったまま。本書はたまたま読んでいなかっただけで今回、日本山岳会の生みの親といわれる高頭式のことを知ろうと思い、読み出した。読みはじめたらやめられなくなってしまった。それにしてもこの本のテーマは池内さんらしい。華やかな名声とは無縁だったが、異能を携えて個性的な生き方をした16人の「すごい人」を取り上げている。「二列目」とは一番を選ばない生き方のことだ。「もうひとりの南方熊楠」といわれる、貧窮の中で研究を続けた大上宇市なんて、実はまったく初めて知った名前だ。そうした16人の人物を挙げるだけでも大変な作業なのだが、著者はそうした人々の著作を丹念に読み、そのゆかりの地を訪ね、素顔と偉業に光を当てる。見事な「池内ワールド」である。どんな分野にも歴史に埋もれた偉人がいる。人を押しのけるのがニガ手で隠れた天才がいる。時代に背を向け、わが道を行く異才がいる。テレビもパソコンも持たず、同級会や勲章とは一線を画した生き方をする著者の真骨頂と、本書の内容はゆるやかに重なり合う。

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