Vol.459 09年7月4日 週刊あんばい一本勝負 No.454


後半戦の仕事はじめは出版でなく……

6月も穏やかではあったのですが、あれよあれよという間に過ぎてしまいました。仕事のほうもどうやら前半戦の仕掛りものも終了、ちょっとしたエアポケットのような状態の中にいます。いい機会なので月初めに仙台、東京2泊3日の急ぎ旅をしてきました。
山歩きをするようになってから、まったく東京という都市に魅力を感じなくなってしまいました。それはもう見事なくらい興味が薄れ、われながらその極端さにあきれているところです。今回も3日間とは言いながら、実質的な滞在時間はごくわずかでした。

今回の出張では仙台に2泊、そこから東京に通うという「へんなこと」を考えました。これが案外いい感じで、同じ都市といっても仙台くらいだとそう「いや」で面倒な感じを持たなくてすみます。秋田からの距離感も影響してるのでしょうが、やろうと思えば仕事もあるし、会いたい人もたくさんいるし、好きな居酒屋もあります。秋田からちょっと遠出する感覚で滞在することができます。いっぽう東京はと言えば、とにかくホテルをとるだけで一苦労、選んだホテルの場所で移動や仕事に重要な制約も出てしまいます。都心に泊まらないと、いろんな問題が生じてきて、けっこう不便な街、という印象が強いのです。こまったものです。

それはともかく、いよいよ後半戦に突入です。前半の仕掛りがなくなったので、真っ白な状態で後半戦を戦うことになります。すでに、「出版」ではありませんが、国の予算を使ってやるある「事業」が2つ決定、小生以外の人員はほとんどが夏から秋にかけて、この2つの事業にかかりきりになりそうです。事業といってもレポート作成や聞書き、シンポジュームやイベントの開催……といった企画立案の仕事で、小舎が事務局の役割を果たす事業です。これからはこうした形の仕事が増えてきそうな予感もするのですが、本業の出版のほうも、かなりリキのはいった企画が目白押しです。ご期待ください。
(あ)

No.454

マジョガリガリ
(TOKYOFM出版)
森達也

 「下山事件」を読んで以来、売れっ子作家になってしまった著者の本を読んでいない。著者が考えていること、あるいはその文体になじめば、あとは書くテーマだけが読者(自分)側の関心事になる。森達也の舌鋒鋭い言説は好みだ。だからあとは何の問題を論じてくれるのか、だけだ。本書は、変なタイトルだが(糸井重里さんがつけたらしい)、要するにメディアで横行する「魔女狩り」に疑問を呈したもの。これは読みたい。と買ったのだが、そのドハデな装丁をみて、あれっ? 「魔女狩り狩り」といってもガチなメディア論ではなく、著者が出演するラジオ対談番組を活字で再現したもの。ゲストに迎えた人々との対談を活字に置き換えただけのものだった。ゲストの顔触れはさすがだが、いかんせんおしゃべりを活字にしても、良い本になるはずはない。森達也たるもの、こんな安直本をつくれば、せっかくの森ファンも去ってしまう。と考えたのかどうか、各対談の分量とほぼ同じ分量の書き下ろし文章を付記している。この文章のほうが本体より圧倒的に面白い。さすが森達也。やっぱりラジオトークを単純に本にするには無理がある。おしゃべりの限界と、活字の持つ役割の境界線がよくわかる。

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