Vol.470 09年9月19日 週刊あんばい一本勝負 No.465


遠くに行きたい

「大人の休日倶楽部」の期間限定パス(3日間新幹線乗り放題1万2千円)が利用できる期間と重なった。そのため、けっこういろんなところに出かけた。1回目は長野まで行き、友人と一献、大道芸フェステイバルでにぎわう長野の街を歩いてきた。2回目は八戸、函館まで足を延ばし、市電に乗って広い函館の街を隅から隅まで歩いてきた。いずれも金曜日から週末を利用しての小旅行。そのなかに週末ではない平日の2日間、「遊び予定」が入ってしまった。「しまった」などというと不意のようなイメージを与えるが、もちろん、自主的に申込んでの結果である。

その平日の「遊び」というのは、1日目が「丁岳登山」、2日目が「羽州街道探訪会」。どちらも平日にわざわざ出かけても損のないイベント、と判断しての参加。丁岳は高い山ではないが、鳥海山の弟分に当たる小さな山で、とにかく急峻の連続で、ほとんど登りだけ、といっていいきつい山だった。参加者9名のうち2名がバテたほどで、ヘロヘロになったが、その分達成感も深い。羽州街道のほうは、その起点である福島・桑折の小坂峠と金山峠の一部を歩いてきた。前から行きたかったところで、桑折も初めて訪れた。ここは伊達政宗の出身地として有名で、なにせ江戸から来る奥州街道と、東北への入り口である羽州街道の出発点の追分である。街道歩きの好きな人たちには「聖地」のような場所といってもいい。桑折で見かけるポスターやパンフ、説明看板など、どこかで見たことのあるデザインが多いなあ、と思っていたら、よく見るとうちで作ったものだった。そうか街道の仕事でよく「桑折」を取り上げていたもんなあ。

遊んでばかりだが、この間、実は新刊2冊ができてきた。山尾三省・春美著『森の時間 海の時間』と、弘前劇場の長谷川孝治著『さまよえる演劇人』の2冊である。舎としてはかなりの力を入れてつくった本で、これから本格的な書店営業や新聞広告宣伝、もろもろの販促活動に入る予定。乞うご期待。
(あ)

No.465

植物図鑑
(角川書店)
有川浩

 もう人気作家であるが、男なのか女なのかわからない、と言う人もいるのでは。女性である。名前は「ひろ」と読む。大ブレークした『図書館戦争』は実は読んでいないのだが、『阪急電車』は面白い小説だった。物語のアイデアが抜群だ。本書もその物語の根っこにある発想に驚いてしまった。物語自体は「1Q84」の村上春樹、「ばかもの」の糸山秋子と同じ「純愛路線」。純愛って今ブームなの。それはともかく書名通り、本書の内容は植物――野草をテーマにした物語である。偶然に出会った男と女が2人が暮らし始めて、ご近所を散歩、そこで見つけた野草が物語の柱になっていく。さらに、そのとった野草を男が料理するのも物語のもう一本の核なっている。文中何度も「料る」という動詞が出てくる。この言葉がけっこう新鮮だ。ふだんの会話で「料る」なんてあまり言わないもんね。憎いのは本の見返しにアート紙が使われていて、巻頭巻末ともきれいな野草のカラー写真がいっぱい載っていること。山に登るようになって家の周りに生えている雑草(という名前の草はない、というのは昭和天皇の名言)が「オオイヌノフグリ」と「ヒメオドリコソウ」であることを知ったばかりだが、本書を読んで「ヘクソカズラ」と「アカツメクサ」を完全に覚えた。うれしい。

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